出だしと展開の巧妙さ―伊坂幸太郎
リクエストをいただいた伊坂幸太郎先生です。
伊坂幸太郎先生です。
実は、畏れながらあまり多くは拝読していません。片手で数えられるほど。
それでも印象に残っているのは、「読む手が止まらなかった」という鮮烈な記憶のせいでしょう。
(『死神の浮力』の内容を忘れていて再読したら一晩で読み切ってしまった……。もっと大事に読みたかったのに!)
伊坂先生の凄さは、作品の引き込み力にあると思います。
たとえば、『アヒルと鴨のコインロッカー』では、主人公がこんな持ちかけをされます。
「本屋で広辞苑を盗まないか」――? って何だそりゃ!?
そりゃ続きが気になりますとも。
どんどんどんどん突飛な状況にぶち当たって、それでも最後には綺麗に余韻を残して、終わる。
(『ゴールデンスランバー』は最高傑作というか、これが顕著でした。)
計算して書く、という作風ではなさそう……。どうやったらあんな作品が書けるんだろうなあ。
日本推理作家協会賞を受けているのにも納得。
なんといっても伏線の置き方と回収が素晴らしい。
伊坂作品はミステリなのか? と迷っている方も、ぜひ読むことをオススメします。
さりげなく流れていた曲とか。伏線の置き方が自然で、特に本格ミステリを読み慣れている方は目からウロコかもしれません。
私が好きなのは、死神の千葉さんが登場する『死神の精度』と『死神の浮力』。
調査対象の人間を一週間観察して、死を見定める〈死神〉。
千葉さんは、人間に感情移入することはなく、「音楽好き」というちょっと変わった死神です。(CDショップで音楽を聴くために調査期間いっぱいを使うという)
はるか昔から死神だったので、「参勤交代は面白かった」とか普通にぶっ飛び発言をします。そんな千葉さんを、人間たちは「変だな」と感じながらも何故か受け入れてしまうのです。
『死神の精度』は短編集ですが、各話のつながりが非常に巧妙。これほど完成度の高い短編集はなかなか見当たらないと思います。
(2017.6.26)
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どの作品タイトルも意味深で素敵ですよね。作品の魅力が凝縮されていて。
恩田陸先生の『蜂蜜と遠雷』に、『音楽の神に愛されている』という表現が出てきます。
伊坂先生は、きっと、小説の神に愛されているのでしょう。
リクエストありがとうございました!
他にも、この作家(作品)について語りたいけど書きたいけど、新作投稿するのはメンドイな、という方のご寄稿をお待ちしています^_^;