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新本格に革新をもたらした文学賞―講談社メフィスト賞

 読書の履歴書でございます。

 今回はいわずとしれた、講談社の雑誌『メフィスト』から生まれたメフィスト賞作品にスポットを当ててみたいと思います。実は、『六枚のとんかつ』の蘇部健一先生にしようと思っていたのですが、良い意味でマニアックな作品ばかり書かれるかたなので、皆さんがご存知かというとちょっと……ってことで、受賞作品及び作家さんを浅く拾っていくことにしました。


 と、いっても、わたくし全てを読んでるわけじゃなくてですね。森博嗣先生から始まる前期といいますか。(なんと2010年受賞の『キョウカンカク』以降読んでいない)

 その中でも、気に入って続刊も購入した作家さんといえば、かなり独断と偏見で選んだもので限られているのですが、とりあえずご紹介を。



森博嗣もりひろし(第1回受賞)

『すべてがFになる』からはじまる森先生の作品は、S&Mシリーズ、Vシリーズ、Mシリーズを追って読んでます。『森博嗣のミステリ工作室』まで購入したほどのファンです。トリックがどうこう、というより、その独特な発想や感性に驚かせられることが多いです。作中に出てくる台詞には、心に響く素敵な名言が沢山あります。少しだけ上げると、

「思い出と記憶って、どこが違うか知っている?」とたずねる犀川先生に、萌絵は、

「思い出は良いことばかり、記憶は嫌なことばかりだわ」

「そんなことはないよ。嫌な思い出も美しい記憶もある」

「じゃあ、何です?」

「思い出は全部記憶しているけどね、記憶は全部は思い出せないんだ」(『すべてがFになる』より抜粋)


蘇部そぶ健一けんいち(第3回受賞)

賛否両論あり好みが別れる作家さんですが、私は大好き。

最後の一行やイラストでオチがつくスタイルが有名で、『木乃伊男』という作品では重要な部分が袋とじになっている程。何よりですね、作品自体に漂うゲス(笑)な雰囲気というか、ギャグのセンスが抜群なのです。


高田崇史たかだたかふみ(第9回受賞)

QEDシリーズは、主に歴史や慣習に隠された謎を解くシリーズ。登場人物も一風変わって魅力的ですし、何より勉強になります。

より好きなのは「千葉千波の事件日記シリーズ」で、浪人生のぴぃくんと天才高校生の千波くんを取り巻くユーモアな謎が、ときにパズル的にロジック的に解き明かされるのが痛快です。


殊能将之しゅのうまさゆき(第13回受賞)

受賞作『ハサミ男』は、あらすじを語ることさえネタバレになりそうですが、あれだけ鮮やかに気持ち良く騙された作品は初めて――というくらい衝撃的でした。

その後に続く石動戯作シリーズも鮮やかな意外性に満ちています。余談ですけど、『樒/榁』に付いてた応募券でメフィスト編集者座談会が収録された「密室本」をゲットした、という思い出があります……。


古処誠二こどころせいじ(第14回受賞)

個性の強いメフィスト賞作品群で、純然たる論理ミステリーを書くのは誰か――?といえば、私はこの作家さんを思い浮かべます。

受賞作の『UNKNOWN』は、自衛隊内部が舞台という異色作。が、ロジックの組み立て方は本格ミステリとしか言いようのない作品です。探偵役の朝霞二尉がカッコよくて魅力的。

おすすめは、閉鎖空間での限定された状況で推理が冴える『少年たちの密室』。本格ミステリベスト10にも入った作品です。



舞城王太郎まいじょうおうたろう(第19回受賞)

独特の文体とリズムで、好みが分かれる作家さんではないでしょうか。

奈津川家のシリーズと『世界は密室でできている』(この作品の読後感の悪さは異常!)を読みました。あと短編をいくつか。

受賞作『煙か土か食い物』を読んだときは、まずページが文字でビッシリ埋まっていて驚き。

なんてったって改行と句読点が極端に少ない!――でも何故か読んでいくうちにその文体の中毒になってしまうという……。



西尾維新にしおいしん(第23回受賞)

受賞作『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』――ライトノベルなのか?そうじゃないのか?

この作品の表紙を見かけたときは、「買うの止めようかな」と本気で迷ったんですけど、戯言シリーズをコンプリートするほどのファンになってしまったという不思議。(結局、いーちゃんの本名ってなんだったんだろ?)

私的には、このかたは森博嗣さんと同じカテゴリーです。トリックどうこうより、斬新な言葉の使い方、発想に驚かされます。戯言シリーズで一番印象に残ってるのは、『クビシメロマンチスト』のとある動機。あれをいつか自作品に応用して使えたら……と密かにたくらんでいます(が、ムリかな。)

『掟上今日子さん』のシリーズも追って読んでます。『物語』シリーズの勢いはちょっと異常。ま、自分も好きですけどね。羽川翼と忍野忍が可愛い。



他にお気に入りの作家さんもいるんですけど、ひとりずつクローズアップするほどではないというか。(すみません)

佐藤友哉さとうゆうやさんや、霧舎巧きりしゃたくみさん、石崎幸二いしざきこうじさんの作品はわりとお気に入りで、受賞後何作か読みました。

氷川透ひかわとおるさんは、受賞作は読んでいないけど『密室は眠れないパズル』という作品がタイトル通りのパズラー推理で秀逸。

北山猛邦きたやまたけくにさんの『クロック城殺人事件』のトリックは今でも鮮烈に覚えています。このトリックを思いついたとき、さぞ面白かっただろう嬉しかっただろう、と。

読みだせば一気にハマるだろうなと予感させるのは辻村深月つじむらみづきさん。(※お母さまになってから、母目線の作品も増えましたね)

つい、買って読んでしまうのは汀こるものさんの『パラダイスクローズ』からはじまるTHANATOSシリーズ。


こうしてあげてみると、大して読んでないですね…orz

メフィスト賞だから!と購入しても、最後まで未読のままの作品もあるし。好みが分かれる賞というか……。が、私のミステリ読書に多大なる影響を与えてくれた賞であることは間違いないし、これからも注目していきたいと思います!



2016.2.19


―――――――――――――――――――――――――――


以後、第51回『恋と禁忌の述語論理プレディケット』、第55回『閻魔堂沙羅の推理奇譚』、第58回『異セカイ系』を読みました。異セカイ系を読んで、タイトルからもわかるように、とうとうネット小説の余波がメフィストにもいったか、と感慨深くなりました。

『恋と禁忌の述語論理プレディケット』は、ドラマ化された『探偵が早すぎる』の作者・井上真偽(まぎ)の作品。受賞後第一作の『その可能性はすでに考えた』がミステリランキングを席捲するなど、とにかく才能あふれる作家さんです。

大物のような安定感とライトノベル的な新しさを併せ持つのが『閻魔堂沙羅の推理奇譚』シリーズで、作者は木元哉多きもとかなた。私はこのシリーズが好きで(ええ真夏のアンソロジーにオマージュ作品を寄稿するほどに)、講談社タイガのドラマ化第二弾が近いうちに実現するのでは、と睨んでいます。


2018.10.12

高田崇史先生の読みがなを間違えていました。大変失礼しました。親切な読者様に感謝!

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