終章 end-3 変態勇者
ツムギは村で暴れる魔物の3体目を倒したところで村から聞こえる悲鳴が途絶えたことに気付いた。自分が助けた少女のプリシラが避難していた場所へとツムギは駆け出した。
プリシラのもとに行く途中でツムギは自分と同じく魔物と戦っていたのであろう、ルティとフラン、そしてヴィルヘルムと合流をした。
ツムギを含む4人は村の人間を避難された場所へと行くとこの村の町長であろうか、少し体格の良い老人がこちらに歩いて向かって来た。
「話は聞きました。まさか魔女との決戦で急いでいる勇者候補様がわざわざ足を止めてわが村を助けて頂くとは、精悍な顔立ちといい流石は勇者候補様ですな」
そう言うと町長はヴィルヘルムの手を取り感謝の言葉を述べた。
「精悍な顔ってのは否定しないけど、勇者候補はあっちの精悍な顔じゃない方ですね」
ヴィルヘルムはそう言うとツムギを指差した。
町長は慌ててツムギの方に駆け寄ると感謝の言葉を改めて述べた。その際にフォローのつもりか町長はツムギを持ち上げて褒めた、愛嬌のある顔だ、どこにでも居そうで庶民の代表のような顔だなどとツムギはまったく褒められている気持ちにはなれなかったが。
ツムギはそんなことよりもキョロキョロ辺りを見回す、するとプリシラの無事な姿を見つけるとプリシラへと駆け寄った。
「ありがとうございます。強いと思ったら勇者候補様だったんですね、驚きました」
プリシラは笑顔でツムギに感謝の言葉を述べた。プリシラは所々服が破けていたり擦り傷が見られたが、大きな怪我など無いようでツムギは安心した。
ツムギが自分をジロジロと見るのでプリシラは恥ずかしくなり、腕で自分の服の切れているところなどを隠した。
ツムギはプリシラの行動を見ると慌てて視線を逸らしたて、フォローの言葉をかけた。
「だっ、大丈夫だよ、服は所々破けてたりするけど右の胸にあるホクロとかが見える程は露出はしてないから」
「何でそんなこと知ってるんですか!?」
ツムギの言葉を聞くとプリシラはツムギから少し後退りをした。
ツムギは自分で言った言葉に自身が一番驚いた、何故初めて会う女の子の胸にホクロがあるなど分かったのであろうかと。
「見損なったよツムギ君、助けたお礼に胸を見せろとでも言って胸を見たのかい?
流石に人としてどうかと思うよ」
ヴィルヘルムがツムギに避難の言葉を浴びせた。その言葉を聞いて村の人間がざわつき始めた。
ヴィルヘルムの言葉を聞いてフランはツムギから距離を取ると、今まで見せたことの無いようなゴミでも見るような視線でツムギを見た。
ルティはツムギの胸ぐらを掴むと勇者候補の自覚を持てだのと大声で喚き散らした。
そんな騒ぎが起き始めた中で町長の老人が大声を出して騒ぎを鎮静化させると静かに口を開く。町長が自分の誤解を解いてくれる、流石は人の上に立つ人だとツムギは町長に期待した。
「確かに当然の要求ですな、村を助けたのだから村の娘の1人くらい好きにさせろと勇者候補様は仰るのですね」
「違うよ! 言ってないし、思ってすらないから」
ツムギは町長の言葉に思わずツッコミを入れた。ツムギは必死に否定したが既に周りはツムギが村を救う代わりに女を寄越せと言う人物として認識されていた。
村を救った英雄から一転、最低の変態勇者候補とツムギは囁かれる羽目となった。




