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終章 end-2 初めて会うハズの名を知る少女

 ツムギはすぐに馬車の御者ぎょしゃの男に火の手の上がる村へ向かうように頼んだ。

 しかし御者の男はツムギの頼みに対して渋った、賢人会の命令で勇者候補をいち早く聖都へと送り届けることを何より優先するように言われていたからである。

 御者の男は火の手の上がった村の近くにきたが進路を変えずに通り過ぎようとした。


 ツムギは次の瞬間に馬車のドアに体当たりをし、走る馬車から無理やり外に飛び出した。馬車が走っている最中に飛び出したツムギは地面へと叩きつけられ、慣性の法則で馬車が走っていた進行方向にツムギは激しく転がった。

 女神の加護のおかげでツムギは大した痛みもなくすぐに起き上がると、村へと駆け出した。


 「いや~、元気だね、ツムギ君は」


 馬車から飛び出したツムギを見てヴィルヘルムが笑いながら誰とはなしに喋り掛けた。

 御者の男は慌てて馬を止めた、馬車が止まるとルティとフランもすぐに馬車から降り、ツムギの後を追い掛けて行った。


 「ちゃっちゃと片付けてくるからちょっと待っててね」


 ヴィルヘルムは御者の男にそう言い残すと、前の3人とは打って変わってゆっくりと馬車から降りて後を追い掛けた。


 ツムギは火の手の上がった村に着くと一直線に何処かへと向かった。ツムギ自身初めて訪れた村のハズであるのに、足は行く先を知るかのように一直線に目的の場所へとツムギを運ぶ。

ツムギはある家で足を止めた、何の変哲もない家である。


 「キャァー」


 ツムギが足を止めた家の近くで女性の叫び声が辺りに響いた。ツムギは急いで悲鳴が聞こえた場所へと走ると其処には黒髪の少女が魔物に襲われそうになっていた。

 ツムギは駆けながら剣を抜き魔物の胴を剣で切り裂くと、魔物は一瞬にして絶命した。ツムギは黒髪の少女に視線を移すと怪我などはしていないようでホッと胸を撫で下ろした。


 「大丈夫か、プリシラ」


 ツムギは今しがた助けた少女にそう言うと、へたり込んでいる少女に手を差し出した。

 しかし助けられた少女は怪訝けげんな表情を浮かべた。


 「助けて頂きありがとうございます。えっと、何処かでお会いしたことがありましたっ

け?」


 助けられた少女はツムギが自分の名前を知っていたことに驚きツムギに尋ねた。

 少女の疑問にツムギも頭を悩ませた、ツムギはもう一度目の前の少女をじっくりと観察した。

黒髪で髪の長さは肩くらいのショートカットだ、少し地味であるが素材は悪くなく、少し着飾るだけで美少女の部類に入るであろう。そして胸もそこそこの大きさである。

 ツムギはやはり初対面であることを再認識した、しかし何故か名前が頭に浮かんだ、いや自分の心の中で誰かが叫んだような気がツムギはした。


 (魔物に襲われそうになっている時に彼女の顔が視界に入ったんだよな、それでプリシラ

を守れ、そんな声が心の中で聞こえた気がしたんだ。

そもそもこの村に来たこと自体が目の前の少女を助ける為に、自分の中の誰かが仕向け

たような気がしてならない)


 ツムギは思ったことを口には出さなかった、口に出して説明したところで理解して貰えるとは到底思えなかったので。

 ツムギはどう説明をしようか頭を抱えた、しかし他の場所から聞こえた悲鳴に我に返った。村にはまだ魔物が居て人間を襲っていることにこの時ようやく気が付いた。

 ツムギは今しがた助けた少女、プリシラを安全な場所へと避難させると他の魔物の討伐に動いた。

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