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第8章 8=16 誤算?

このエピソードは元勇者視点です

 崖の下に流れる川から1人の黒い仮面とマントを付けた人間が上がってきた。

 川の先は滝となっている、その滝の少し手前に小さな洞窟があった。

 滝に落ちていれば命はなかったであろう、その黒い仮面を付けた男は川を泳ぐのに体力を使い果たしたのか、足取りはふらふらとし、壁に寄りかかって何とか別の場所に繋がる出口へと向かった。


 体はずぶ濡れだが黒い仮面を付けた男は重い足取りを何とか動かした。

 数分歩くと出口から漏れる日の光が見えた、男は足取りを速めて出口へと向かう。


 「随分と情けない姿ではないか」


 黒い仮面を付けた男の前に童女姿の魔女が現れる、魔女は愉快そうに笑いながら男の方へと向かって来た。


 「わらわを出し抜けると思ったのか? たかが人間が、人間風情がわらわ

本当に殺せるなどと思ったのか」


 魔女は普段浮かべる人を小馬鹿にした笑みは消え、怒りの感情をあらわにした。

 黒い仮面を付けた男は戦闘態勢に入ろうと剣を抜こうとした、しかし黒い仮面を付けた男の普段腰の所にあるはずの場所に剣は無かった。

崖に落ちた時に流されたのであろうか? 黒い仮面を付けた男は本来なら剣があるハズの自分の腰の所に視線を移す。

 自分が丸腰だと気づくと男は魔女に視線を戻した、しかし視線を魔女に戻した時には既に男から数メートル離れていた魔女の男の目の前に立っていた。


 「マヌケが、まあ剣が在った所で無駄であろうな。

  貴様の力は所詮はわらわが与えた力、わらわに通ずるはずもない」


 魔女は男が付けている黒い仮面へと手を伸ばして触れた、魔女が黒い仮面に触れるやいなや、男は糸で操られる操り人形のようにダランと脱力状態となった。


 「どれだけ強力な駒であろうと、勝手に動く駒など不要じゃ。

  大分性能は落ちるがわらわの思い通り動く人形となって貰おうかの。

貴様には女神を殺す重要な役目があるのだからな」


 物言わぬ人形となった黒い仮面を付けた男を見て、魔女は高らかに笑った。

 しかし魔女はユウトについていくつかの疑問が浮かんだ。

 何故自分が奴のパートナーを殺したことを知ったのか? 何故自分が願い事を叶える力が無いことを知ったのか?


 (その上、奴はわらわの監視にも気付いていた節がある。

  短い時間でそれだけのことを全部1人で調べるのは無理があると思うが)


 魔女は多少気にはなったがどうでもいいかと捨て置いた。既にユウトは自分の完全な支配下となったのだからどうでもいいことだと。

 

 「待っておれよ女神、貴様を殺してわらわが神となるのじゃ。

  その時こそわらわは名前を手に入れる、魔女などではない。夜の女神、ニュクス

と名乗ろうではないか」


魔女は1人高らかに声を張り上げた。

そして魔女は女神との最終決戦の準備をするために自分の城へと帰路した。


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