表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/102

第1章 1-6 魔物との対峙

 眠い目を擦りながら宿の食堂で朝食を無理やり口に押し込む。

 

 「突然異世界アヴェルト連れて来られて大変で慣れないのは仕方ないけど、ちゃんと寝ないとダメよ」


 ティナに寝られなかったことを窘められるが、眠れなかった原因は異世界アヴェルトうんぬんではなくティナにあったのだが口には出さなかった。


 「とりあえず今日は聖都の外に出て魔物退治をしましょう」


 いきなりの戦闘と聞いて尻込みをする俺に対してティナは言葉を続ける。


 「心配しなくても聖都の周りの魔物はたいしたことはないし、女神様の武器を持ってるならそこらの子供でもこなせるぐらいよ」


 たいしたことはないと言われてもやはり不安は拭えない、しかし子供でも出来るとまで言われて渋っていては流石にカッコ悪いと思い魔物退治を承諾する。


 聖都から少し離れた所で魔物と遂に対峙する。大きさはウサギくらいだが、異様に長い牙をしていて目が一つしかない。

 ウサギ大の魔物は俺が想像していたよりも俊敏で間合いを詰められる、慌てて剣を振るうが剣は空を切る。

 魔物の牙が俺に突き刺さる。


 「うっ」


 俺はうめき声を上げ倒れた。

 痛みが体を貫く、と思いきや大して痛くない。チクっとした程度でなんともない。

 

 「ふざけてないでちゃんとしなさいよ」


 ルティはイラついた声で俺に怒鳴りつける。


 「ここらの魔物じゃアンタには傷一つ付けられないわよ。

  女神様の加護を施された武器を持ってればあらゆる攻撃は軽減されるんだから」


 (そんな大事な事は先に説明しとけよ)

 

 心の中で毒づくとウサギ大の魔物に視線を戻す、相手の攻撃が自分に効かないと分かり恐怖心が心の奥にと引っ込む。

 魔物がまたこちらに突っ込んで来る、今度は冷静に魔物の動きを見て横に飛んで攻撃をかわす。


 今度はこちらから魔物との距離を詰めて剣を魔物めがけて振るう。

 やはりまだ戦いに慣れていないせいか、剣は魔物を捉えることは出来ずに少しカスッただけだった。


 「くぎゅううぅぅぅー」


 魔物は悲鳴のようなものを上げると黒い灰となって崩れ落ちる。カスッただけで魔物を倒せるとは流石女神の武器だなと感心する。

 魔物を倒して高揚感で自慢げにチラリとルティの方に視線を送る。


 「あんな小物に大分手間取ったわね。まあ初めてだから及第点てところかしらね」


 「始めから魔物の攻撃が効かないと分かってたら手間取ったりしなかったよ」


 ルティの評価にカチンときて反論する。


 「女神様の武器は強力だからここら辺の魔物なら攻撃を食らって問題ないけどね、この先に強い魔物と遭遇した時も同じような心構えで戦えば下手したら命を落とすわよ。だから弱い魔物だろうと攻撃は食らわずに戦うことを心掛けなさい、分かったわね?」


 ルティが顔を近づけて真剣な表情で喋るのでドキッとしてしまい慌てて顔を背けて相槌をうつ。

 ともあれ初めての魔物との戦いを無事終えることが出来た。

 

 「じゃあ次に行くわよ、その要領でちゃっちゃと戦闘になれて頂戴ね」


 (この調子ならば一度に魔物が数十体現れようと何の問題もなさそうだな。)

 と心の中で呟く。


 ルティの忠告は頭の片隅に追いやられていた、余りにも強力な武器を旅の最初から所持したことでゲームの主人公にでもなった気分でいた。

 魔物相手に無双をする自分に酔いしれながら、この調子で魔女を倒せば更に願いまで叶えて貰える、異世界はなんてチョロインだと気分は最高であった。


 異世界についてまだ何も分かっていなかった。そう知るのは、俺が異世界の真実に辿り着くずっと後のことになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ