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第8章 8-12 手紙

 ツムギのもとへ手紙が送られてきた。

 差出人は先代勇者であるユウトからだ、手紙の内容は簡潔であった。


 「貴殿のパートナーは預かった、返して欲しくば指定の場所まで来られたし」


 ツムギは手元へと届いた手紙を声に出して読み上げた。


 「やっぱりこうなるのか」


 ヴィルヘルムはため息交じりで嘆いた。

 事の始まりは二日前のルティへのもとへ届いた手紙である。


 ~現在から2日前~

ルティのもとへと一通の手紙が届いた。其処には先代勇者からルティへの懇願がつづられていた。


 「魔女に命を狙われている。女神側へと加担するので今までの自分が犯した罪を不問とし、

自分を受け入れて欲しい。

誰にも言わずに1人で自分が居る場所へと来て欲しい」


 ルティのもとに届いた手紙は先代勇者が寝返るので仲間にしてくれとの内容だった。

 前回勝手に1人で行動した反省からかルティはツムギたちにも手紙の内容を伝えた。

 その手紙を読んだルティは先代勇者がいる場所へと行こうした、しかし他の皆がルティを止めた。


 「どう考えても怪しいでしょ? てか罠だよね、あからさまに」


 ヴィルヘルムは思ったことを率直に口にした。


 「そうかも知れないわね。でも、もしも本当に助けを必要としてるなら私は力になりたい、

昔に救って貰った恩を少しでも返せるなら、たとえ殺されることになってでも」


 「いやいや、君が勝手に殺されようとも僕には関係ないんだけど、面倒なのは人質に取ら

れたりすることなんだよね。

  僕としては君を狙うメリットが敵さんに有るとは考え難いんだよね、そうなると手紙の通り女神側への亡命が希望か、君を人質に勇者候補を、つまりツムギ君をおびき寄せる餌にでもしようとしてるのか」


 「万が一に私が人質に取られるようなことになったら見捨てて貰って構わないわ」


 ルティの言葉を聞いてヴィルヘルムが説得を試みたが、ルティはどうあっても先代勇者

のもとに行こうとした。

 ルティの意固地さにヴィルヘルムはため息を吐きながら首を横に振った。


 「流石に僕も知り合いが人質にされて見捨てるほど鬼じゃないよ。まあ自分の命が危険に

なりそうなら無理はしないけどね。

でも後ろの2人は多分無茶でも助けに行こうとするだろうね。」


 ヴィルヘルムはそう言うとツムギとフランを指差した。


 「ゴメン、勝手なこと言ってるって分かってる。けど、もし本当に助けを求めてるのに動

かなかったら私は一生後悔すると思う。

でも、私のせいで2人が危険に目に遭っても私は後悔する。だから私に何かあっても自

業自得だと見捨てて」


 「あれっ、僕が頭数に入ってないけど僕も少しは力になるつもりなんだけど」


 ルティの言葉を聞いたツムギはルティが折れることはないと悟った。(ヴィルヘルムの発言はその場に居た全員が聞き流したが)


 「先代勇者と落ち合うのはこの近くの村なんだよね?それなら俺たちもその村まで一緒

に行くよ」


 「駄目よ、ツムギたちも一緒だったらユウト様が姿を現さないかもしれないじゃない」


 「落ち合う村はそこそこの大きさなんだろ? それなら落ち合う場所の近くに行かない

なら分かるわけないよ。

落ち合う予定の村にまで付いて行けないなら、ルティに何かあった時は命懸けでも俺

とフランは助けに行くよ」


 「私もルティさんに何かあれば命懸けになろうと助けに行きますよ」


 結局ツムギとフランに押し切られる形でルティは仕方なく、村の指定された落ち合う場所からかなりの距離を取ることで他の人間の動向を承諾した。

 しかしツムギは離れて様子を見ていたことを後悔した、村の酒場で落ち合っていた先代勇者とルティはその場から忽然こつぜんと姿を消したのである。

 そしてルティが姿を消した2日後にツムギのもとに手紙が届くのであった。


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