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第8章 8-5 遭遇

 ツムギとヴィルヘルムは急いでルティとフランが向かった村へと急いだ。

 ツムギが村へと辿り着くとそこには多くの魔物の姿がツムギの目に飛び込んだ。

 賢人会の1人が取り仕切る村であるからだろうか、この村に駐屯している警護団のメンバーは腕が立つらしく魔物に引けを取ってはいなかった。

 しかし、魔物の数が多く村は少しずつ侵略されつつあった。


 「クソっ」


 ツムギは前の村で見た妙な夢のせいもありルティとフランの身が心配であった、だが目の前で魔物に襲われる人間を無視できるはずもなく、ツムギは自分の目の前に居る魔物と切り結んだ。

 ツムギは魔物の攻撃を2~3度、剣で受けしのぐと魔物の腕のような部分を剣で切り落とした。

 魔物は悲鳴を上げて怯む、ツムギはその怯んだ瞬間を逃さずに魔物の胴体を一閃して薙ぎ払う。魔物の上半身と下半身が離れると、魔物は絶命した。


 「次だ」


 ツムギは次の魔物へと剣を向けようとした、しかしツムギが視線を移した先には既に息絶えた魔物の亡骸が転がっていた。

 先ほどまでツムギの視界には魔物が5人居た、しかしツムギが1人と対峙して倒すまでにヴィルヘルムは4人の魔物を葬っていた。


 「さて、先を急ごうかツムギ君」


 (いや、きっと俺が戦った魔物の方が強かったし)


 ツムギの4倍の数の魔物をあっさりと倒して余裕にしているヴィルヘルムに対して、ツムギは心の中で負け惜しみを呟いた。

 ルティとフランを捜して村を駆け回る、しかし村のそこら中に魔物が居るために捜し回る時間よりも魔物との交戦の時間の方が長かった。

 交戦する魔物の中には手強い魔物も居たが、多くの魔物は2~3度切り結ぶことで勝敗は決した。


 「ルティー、フランー」


 ツムギは大声で呼びかけるが村は混乱し、そこらかしこから騒音がするために声が届いているか微妙であった。


 「ツムギ、ヴィルヘルム」


 横の路地から聞き覚えのある声がツムギの耳に届いた。

 声の方向に振り向くとルティとフランの姿が其処にはあった。

 ツムギは安堵してルティたちの元に駆け寄った、しかし再会を喜ぶ暇もなく、ルティは足を止めずに走り続けた。

 ツムギはルティたちと並走しながら何処に向かっているのかをルティに尋ねた。


 「黒い仮面を付けた奴を見たって人間が居たのよ、この村に先代勇者のユウト様が居るみ

たいなの」


 ルティが足を止めずに探し回っていたのは先代勇者を捜すためであった。

 ツムギは先代勇者と対峙したくはなかった、先代勇者の姿を見るとツムギは何か言いようのない、嫌な感情がこみ上げてくるのだ。

 しかし、その反面何故か自分が先代勇者を止めなくてはいけない、そんな気持ちもツムギは胸に抱いていた。


 「助けてくれー」


 人間が魔物に襲われそうなのを見てツムギは人間を襲おうとしていた魔物を剣で切り裂いた。

 助けた男を見ると村人といった風ではなかった。しっかりとした武装をしているところを見ると、村の警護団の1人であるようだった。


 「助かった。向こうの方に居る黒い仮面を付けた奴と、変な喋りをする魔物の2人が滅茶

苦茶に強くてな、10数人いた仲間が一瞬で肉片にされちまったんだ」


 助けた男はそう言うと余程恐ろしい目にあったのか、一目散に黒い仮面を付けた奴が居ると言った方向と逆の方向にと逃げていった。

 その話を聞いたルティはすぐさま、助けた男が元来た道を目指して駆けた。


 「居ました」


1番初めにその姿を捉えたフランが皆に知らせるために声を上げた。

フランの指差す方向に黒いマントを付けた、全身黒ずくめの男の後ろ姿がツムギの目にも捉えられた。

 恰好や、体型から見て先代勇者であろう。ツムギは剣を自分の前に構えて戦闘態勢を取った。

 黒いマントを付けた人物がこちらに気付いたのだろう、ゆっくりとツムギたちの居る方向に振り返った。


 「先代勇者じゃない?」


 ツムギの目に飛び込んだのは、前に見た先代勇者の恰好に似てはいたが多少の違いが見受けられた。

 一番の違いはその人物が付けている黒い仮面だった。

 目の前の人物が付けている仮面は、先代勇者の奴が付けていた顔全体を覆うような仮面ではなく、顔の上半分を隠すような形の黒い仮面であった。

 ツムギはリーナの話を思い出し、目の前の人物がもう1人の黒い仮面の魔人であることを理解した。


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