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第7章 7-1 都市伝説?

 ユウトがツムギたちの前から立ち去った後、ツムギはユウトと対峙した際の会話の内容をその場に居なかった皆に話した。

 話の内容を聞いたフラン、ヴィルヘルム、ユナ、ライオスたちはにわかには信じ難い様子であった。ユウトの口から直接聞いたツムギたちですら、何処までが真実で何処からが嘘であるか分からずにいた。

 ただ、ユウトから直接話を聞いたツムギたちはユウトが嘘を言っているようには思えなかった。


 「私は、…その話を聞いた後に、魔女を倒す旅を続けられないよ」


 ユナは悲しそうにうつむいた。ユナのパートナーであるライオスもユナの意見を尊重して2人は旅を一時中断することにした。


 「ツムギは…これからどうするの?」


 ルティは普段の態度からは想像できないようなおずおずとした態度でツムギに尋ねた。


 「俺は旅を続けるよ、先代勇者を止めて魔女を倒すんだ」


 ツムギは口ではそう言ったが本心ではなるべく関わりたくなかった。しかし、そんなことを言えばルティは自分にがっかりするのではないか?

 そんな風に考えるとツムギは思ってもいないことを口にした。

 本当なら女神がした後始末のために自分が不幸になるなどツムギは真っ平御免まっぴらごめんである。しかし、誰かが魔女を倒さなければ元の世界に戻ることも出来ないなど詐欺もいいところではないか。


 「はぁ~」


 にっちもさっちもいかない状況にツムギはついため息が出てしまった。

 救いがあるとするならば、自分以外にも魔女を倒す存在である勇者候補が居てくれることだ。最初に異世界アヴェルトに来たときは自分だけが特別な存在でないことに落胆したが、今となっては他の誰かが何とかしてくれるかもしれないと、ツムギはどこか他人事のように感じていた。


 「ツムギ、異世界アヴェルトのためにありがとう」


 魔女を本当に倒そうと考えていないツムギに取って、ルティのお礼の言葉は罪悪感を覚えたが、ルティに失望をされてないようでツムギはホッとした。

 結局ツムギたちは(ツムギ、ルティ、フラン、ヴィルヘルム)先代勇者であるユウトの話が本当であるか調べながら、魔女を倒す旅を続けることになった。

 ユナとライオスは異世界アヴェルトで最初に訪れた村である聖都へと戻る選択をした、その道中に他の勇者候補に出会ったら先代勇者が話した内容を伝えることにして。


 「魔女の居る城に近づけば更に強力な魔物が増えるから気を付けて、ツムギ」


 ツムギはライオスと握手を交わし、ユナとライオスが聖都へと戻るのを見送った。

 ライオスと旅をしていてツムギが思ったのは、勇者候補やそのパートナーの中で(勿論自分を含めて)1番人間が出来ていると思った。

 イケメンの上に社交的で気遣いまで出来るなど、自分がライオスなら人生イージーモードだったろうな。そんなどうでもいいことを思いつつライオスたちの姿が見えなくなるまで見送った。


 「じゃあこの辺で俺も別行動とするわ」


 そう言うとジャックは後ろ向きで手を振ってその場を後にしようとした。

 ジャックもユウトの話が真実であるか調べるらしい、しかしツムギたちとは違う方向から調べたいとのことでジャックは1人別行動を取ることにした。


 「そういやあ、昔ユウトと旅をしてた時にツムギと同じようなことを言ってたぞ。初めて見るはずなのに見たことがあるようだったり、自分でない誰か違う奴の考えや感情が沸き上がったようなことがあったらしいぞ」


 ジャックは去り際にそう言い残してその場を後にした。

 ジャックの言葉を聞いたツムギは驚きの表情を浮かべて考え込んだ、先代勇者のユウトも自分と同じような状況を経験していた。

 自分以外の他の勇者候補はどうなのであろうか?

 ツムギはユナに聞いたがユナはその様な感覚になったことは無いと言っていた、他の勇者候補のハヤトやレオンはどうなのであろうか?

 勇者候補の1部の人間に同じようなことが起こっているのか?それとも自分とユウトだけなのだろうか?

 もし後者だとしたら自分とユウトの共通点などまるで思い浮かばないとツムギは思った。


 「あの~」


 フランは考え込んでいるツムギの服の裾を詰まんで軽く引っ張り何か言いたそうにしていた。

 ツムギはそれにようやく気付くとフランの方に向き直った。


 「確証の無いことを言うのははばかられるんですが…、都市伝説程度の話を聞くつもりで聞いてくださいね」


 フランはそんな前置きを置くと、ツムギが疑問に抱いていたことに付いて説明を始めた。


 「女神様の武器には使う者の感情や記憶を蓄積することが有るとか、無いとか。そんな噂があるんです。

  でも見たことの無い景色など体験を見たことあるように感じる既視感デジャヴ何て皆あることですし」


フランの説明を聞いたツムギは異世界アヴェルトにそんな噂があるのかと初めて知った。横を見るとルティとヴィルヘルムも初めて聞いたと感心していた。


 「フランは何でも知ってて凄いな」


 「何でもなんて大袈裟ですよ、他の人より少しだけ知ってることが多いだけですよ」


 ツムギはフランの物知りさを褒めると、フランは少し顔を赤くして照れた様子で自分のことを謙遜した。


 「もしもその噂が本当なら剣が武器だった勇者候補は武器の中で、最多で確かツムギを入れて11人ね。その中で魔女を倒して勇者になったが初代勇者様、2代目、5代目、7代目、10代目、そして先代勇者のユウト様の13代目ってところね」


ルティは少し自慢気に語った。

ツムギはフランが言う噂話はあながち本当ではないかと思った。噂が出るなら何かしらの理由があるであろうし、自分と先代勇者の共通点など思い浮かぶのはそれぐらいしかなかった。


 ツムギたちは日が暮れる前に次の村へと着いたので村で宿で取ると、食事を取り風呂に入って疲れを癒した。

 宿はそこそこの大きさであったので、万が一の襲撃などに備えてツムギたちは4人一緒の部屋を取り寝床に着いた。

 異性と同じ部屋で寝るなど異世界アヴェルトに来る前のツムギなら想像も出来ないことであったし、最初は緊張してろくに寝られなかったが今は慣れていた。

 同じ部屋といえどもベッドの距離はそこそこ間が開いているし、嬉しいハプニングなど旅をしていてそうそう起こらないことをツムギはようやく理解した。


 「この先どうしたらいいのかな?」


 ツムギは皆が寝ているのを確認すると自分の剣に語り掛けた。

 剣は当然何も答えはしなかった。ツムギは自分で何をやっているのかと馬鹿らしくなり剣を横に置いて眠りに就いた。


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