表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/102

第6章 6=9 女神と魔女に復讐を

このエピソードは元勇者視点です。

 ユウトは魔女の命令を終えて魔女の居る城へと帰路した。

 ユウトは魔女に拝謁はいえつするために魔女が座る玉座へと向かった、しかし魔女が何時もふんぞり返っているハズの玉座に魔女の姿はなかった。


 「ようやく戻ってきたか」


 魔女は玉座の背の後ろから隠していた姿を現した。

 何故わざわざ身を隠していたのかユウトには分からなかったが、ユウトは魔女の姿を見ると硬直した。


 「どうした? わらわの顔に何か付いているかえ?」


 魔女はそう言うとニヤリと笑った。

 魔女の姿は普段の見慣れた素肌を大きく露出させた格好の童女ではなかった、その姿はかつてユウトのパートナーであったクルミの姿であった。

 ユウトは黒い仮面の下で唇を強く噛んだ。


 「何の御冗談ですか、その姿は」


 「貴様がわらわの命令で人を殺して苦しんでいた様なのでな、貴様の労いのつもりでこの姿になってやったんだが、気に入らなかったかの?」


 ユウトは自分が愛していた女性の姿と声で喋る魔女を見て抑えようのない殺意を必死に隠して平静を装った。


 「貴様はこの女と夜伽をすることは無かったのであろう? 大切にしていた女が他の男に奪われてさぞ悔しかろう?

  何ならわらわがこの姿で貴様の夜伽の相手をしてやってもよいのじゃぞ?」


 クルミの姿をした魔女の細い指がユウトの首筋を這うように触れた。魔女はニヤリといやらしい笑みを浮かべる。

 ユウトは我慢の限界とばかりにバッと、剣の柄に手を伸ばした。


 (やめろ)


 黒い仮面の中の勇者たちの静止の声がユウトの脳に響いた、ユウトは我に返り剣の柄から手を放した。


 「剣に手を伸ばしてどうしたのじゃ? 抜くのなら別の剣じゃろうに」


 魔女は下品な下ネタを口にすると、クククと笑った。

 ユウトは魔女がクルミの姿と声で喋ることにこれ以上は我慢の限界であった。


 「魔女様、その姿で居ると魔女様といえど我を忘れて切りかかってしまいます。どうか何時もの姿でお願いします。


 「かつて貴様が愛した女じゃろう?」


 「昔の話です。記憶を失っていたなどと言う勇者候補の妄言を信じるつもりはありません。

  私を裏切った憎い対象でしかないです」


 魔女は目を細めてユウトをジッと観察した。ユウトの態度や言葉が本心であるか確かめるように。


 「それならばよいのじゃ、しかしわらわわらわじゃ。どの様な姿であれ忠誠の証を示さねばな」


 そう言うと魔女は足をユウトの前に差し出した、ユウトは黒い仮面を外してその差し出された足に口づけした。


 「ふむ、毎度同じでは飽きてしまうな。今回は足でも舐めてもらうかな?」


 そう言って魔女は足の指をユウトの口に近づけた、ユウトは舌を出すと魔女の足に舌を這わせようとした。

 しかし魔女は自らの足をスッと引き戻した。


 「冗談じゃ、わらわも悪魔ではない、魔女ではあるがな」


 魔女はクククと自分の冗談に笑いながら自らが鎮座する玉座へと歩いた。玉座に座る前に一回くるりと回ると、魔女はいつもの童女の姿に戻っていた。

 魔女は自らの姿をどの様な女性にも変えることが出来るのである、普段は童女の姿で居るが、17~18歳の女の子の年齢にもなれれば、色香の漂う熟女の姿とも変えられた。

 魔女本来の姿は醜い怪物である、その本来の姿を知る者は魔女自身と、魔女を生み出した女神だけであったが。


 「わらわは少し安心したわ、貴様の力の元となる憎悪が消えてないようでな。

  わらわのためにこれからも尽力せよ、そうすれば願いを叶えてやろうぞ」


 ユウトは魔女に一礼をするとその場を後にした。

 ユウトは魔女に疑いを持たれているかといぶかったが、先ほどの魔女の上機嫌を見ると杞憂だったようでホッと胸を撫で下ろした。

 魔女がユウトを信用することは無いが、疑いの目で見られていなければユウトに取っては十分であった。


 「願いを叶えてやるだと? そんな力など無い化物が、せいぜい束の間の夢を見ていろ。女神の前に貴様を殺してやる、貴様がクルミにした償いを必ずこの手で」


 ユウトは魔女の城から離れ、魔女の監視がないのを確認すると魔女に対して毒づいた。

 女神と違い魔女は願いを叶える力などは持ち合わせてはいなかった、ユウトはそのことを元勇者たちからの情報で既に知っていた。


 (よくぞ耐えた、我らが同胞)


 黒い仮面の中の歴代の勇者たちは安堵のため息をつくとユウトの忍耐力を褒めた。

 女神の加護の無い現在のユウトのり所は、魔女の加護に拠る憎しみを呪いと変える弱体化の力のみであった。

 しかし魔女の加護に拠る力で魔女本人と戦ったところで結果は火を見るよりも明らかである、魔女に致命傷を負わせるために必要な機会をユウトは虎視眈々と狙った。自分のキバを魔女に突き立てる復讐のチャンスを。


 「絶対に許しはしない、女神も、クルミを殺した『あの女』、魔女も。

  そのために100万人を殺すことになったとしても」


 ユウトは未来を予知する初代勇者の瞳の力の回復を待ち、自分の取るべき行動を決めることにした。

 しかしユウトは魔女が既に次の行動に動いていることを知らなかった。



 ~~~ユウトが魔女の城より出た同時刻~~~



 魔女はユウトが立ち去った後も愉快そうにしていた。


 「腹に一物あるようじゃがユウトの奴はどう動くかの?」


 魔女は独り言なのか?はたまた自分の横に居る男に喋りかけているのか?魔女は楽しそうに笑っていた。

 魔女は自分の横に立っている男に命令を下した、魔物を引き連れて村を蹂躙せよと、魔女の命令を受けて男は魔物を引き連れて城を出た。


 「なかなか強力な駒が手に入ったわ、流石は先代勇者の仲間パーティーだった1人と言ったところか。奴の顔を見たユウトの驚く顔が目に浮かぶようじゃ。


 魔女の命令で魔物を引き連れた男はユウトのかつての仲間だった、そしてその男もユウトの黒い仮面に似た仮面を付けていた。

 ユウトの黒い仮面は顔全体を隠す物であったが、今しがた城を出た男が付けていた仮面は顔の上半分を隠すような黒い仮面である程度の違いしか見受けられなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ