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第6章 6-3 2人の生贄

 ツムギたちがベルンの村に着いて5~6時間程して日が昇り始めた。

 まだツムギは宿屋のベット寝ていた、そんなツムギは体をゆさゆさと左右に揺らわれて目を覚ます。

 まだまぶたが重く眠い目を擦らせ何事かとツムギはベットから起き上がった。

 体を揺さぶったのはルティなのであろう、ツムギの目の前にはルティがいた、その後ろにはフランやジャック、ユナやライオスもいる。

 その更に後ろに見たことのない男女がいた、いや女性の方には見覚えがある。暗かったので怪しいが確か昨日の晩に村の入口で出会ったエリカといった女性ではなかったか。


 「ようやく起きたわね、エリカたちが先代勇者のユウト様について話に来てくれたわよ」


 ルティはそう言うとベットに腰掛けた、他の皆も各々と空いてる椅子やベットに腰掛ける。少し手狭だがどうやらこの部屋で話を始めるらしい。

 ツムギは眠気を覚ますために少し席を外して顔を洗いに部屋を出た、ツムギが部屋へと戻ってきた時には既に話が始まっていたので自分の元居たベットにそそくさと戻った。


 「それでユウト様は何処に行ったのよ?」


 「さあな、その後の足取りまで俺が知るわけないだろ」


 ルティが勇者候補の1人であるハヤトに問いかけるとハヤトはぶっきらぼうに答えた。

 ハヤトは先代勇者のユウトとの戦闘では傷を負うことはなかったが、仲間の何人かは魔物との戦闘で命を落としたため体制を立て直すためにベルンの村にとどまっていたらしい。とどまっていた別の理由に、ベルンの村の住人たちは魔物がまた攻めてこないかと心配で勇者候補の滞在を懇願こんがんされたこともあったが。


 「話がそれだけなら俺たちはもう行くぞ」


 「えっ、もう行くの?」


 会って数分でハヤトはさっさと部屋を出て行こうしたのでツムギは驚きの声を上げた。

 勇者候補にはレオンといい目の前のハヤトといい協調性の無い奴が多いのではないかとツムギは思った。


 「他の勇者候補と馴れ合うつもりはないんでな、魔女を倒して願いを叶える権利を他の奴に譲る気はない」


 ハヤトは冷たく言い放った。

 そんな様子を見てエリカはルティにひそひそと耳打ちをした。


 「ハヤトって昔ユウト様が異世界アヴェルトに召喚された時に一緒に召喚されてたの?」


ルティはエリカに聞いた情報に驚き声を上げる、それを聞いたハヤトはエリカを睨みつけた。

 エリカはハヤトの無言の抗議を無視して他の皆にもハヤトに付いて説明を始めた。

 ハヤトが異世界アヴェルトに召喚されたのは今回が2度目であった、最初に召喚されたのは今から13年前でハヤトは当時まだ5歳であった。

それから女神と魔女の戦いは3年間に及んだが、先代勇者のユウトが魔女を倒すことで戦いは10年前に幕を閉じた。

 そして時間は流れてハヤトは再び異世界アヴェルトに召喚されたのである。


 「通りで最初から魔法が使えたり女神様から与えられる武器を知ってたわけね」


 ルティは納得したように頷いた。

 ツムギはハヤトが異世界アヴェルトに来たのが2度目ということにも驚いたが、ハヤトが自分よりも年上であることの方が驚いた。ツムギは自分と同じか年下かと思っていた。


 「ルティには悪いけど魔女を倒して勇者になるのはハヤト君っすよ。

  ハヤト君は女神様の願いでエリカのお姉ちゃんを生き返らせるの、だから邪魔はさせないっすよ絶対に」


 「当たり前だ、10年前に俺を庇って死んだんだからな。

  今の俺は無力だった昔とは違う、絶対に魔女は俺が倒す」


 エリカはルティにそう言うと、ハヤトも自分を叱咤しったするように怒鳴った。

 2人は部屋を後にしようとしたがハヤトがふと足を止めて振り返った。


 「先代勇者には気を付けろよ、昔と同じお人好しだと思ってたら殺されるぞ。

  今のアイツ昔とは別人だ、それに相手を弱体化させる力があったからな、正直魔女よりも厄介な存在かも知れん」


 ハヤトはそう言い残すと今度こそ本当にツムギたちの居る部屋を後にした。

 ハヤトは部屋を出てから先代勇者のユウトが自分に言ったことを思い出していた。


 (生贄は2人選ばれる)


 まるで魔女を倒した勇者が生贄のような口振りで先代勇者のユウトは喋っていた。

 仮に勇者になった者が生贄の1人だとすると、もう1人の生贄とは誰を指しているのであろうか?

 ハヤトは頭を振って疑念を消した、魔女の下僕となったような奴の言うことなど信用してどうするのか。自分庇って死んだエリカの姉を生き返らせることだけを考えようと、ハヤトは思い直してベルンの村を後にした。


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