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第5章 5=12 勇者の役割

このエピソードは元勇者視点です

 ハヤトは黒い仮面を付けた奴が飛び出すのを見て銃を発砲しようとした。

 しかし銃の重みで腕を支えていられなかった、ハヤトの異変を感じてパートナーのエリカが割って入ろうしたが足が重くてまともに歩くことも出来なかった。

 ハヤトは何も出来ずに黒い仮面に組み伏せられて剣を突き付けたれた。


 「終わりだな、勇者候補」


 ユウトはハヤトに剣を突き付けた剣を振り下ろそうとした。


 「辞めて、殺すならエリカを殺しなさいよ」


 ハヤトを助けようとパートナーのエリカが命乞いをした。

 ユウトはその声を聞き剣を振り下ろすのを躊躇した。


 「勇者候補を救うために自らの命を犠牲にするのか、美しい愛情だな」


 ユウトは剣を突き付けたままエリカに視線を移した。


 「ハヤト君はエリカのお姉ちゃんを生き返らせるために女神様の願い事を使うの、だからハヤト君をこんな所で死なせるわけにはいかないの」


 パートナーの姉を助けるために願い事を使うつもりか、ユウトはかつての自分のように目の前の勇者候補もおめでたい奴だなと見下した。


 「俺のせいで死んだ、だから絶対に生き返らせるんだ。

  俺はもう守られているだけの存在じゃないんだ」


 ハヤトは必死にユウトを押しのけて銃の引き金を引こうとするが、弱体化させらたハヤトは馬乗りにされている状態を覆す力などない、しかし必死にもがいていた。

 ユウトは2人の話を聞いていて理解出来なかった、エリカは異世界アヴェルトの人間でその姉も勿論異世界アヴェルトの人間であろう。

 ならば他の世界から来たハヤトが原因で死ぬことなど有り得ないハズだ。

 ユウトは2人の話を聞き、ハヤトの持つ女神の武器である銃を見て思い出した。


 「お前はかつて俺と一緒に異世界アヴェルトに召喚されたガキか?」


 ユウトは話の合点がようやく理解出来た。

 ユウトが勇者候補として召喚された時に勇者候補は全部で5人居た、その中の1人の武器が銃であった。

 そしてその銃を与えられた勇者候補は若干5歳という若さで異世界アヴェルトへと呼ばれてしまった。

 何故半年足らずで女神から与えられた武器をここまで使いこなしているか疑問であったが、その謎も解けた。

 ハヤトは異世界アヴェルトに召喚されたのは2度目だったのだ。


 「お前は俺を知っているのか?何者だ?」


 ハヤトは馬乗りにされているユウトへと疑問を投げかけた。

 ユウトは黒い仮面を外すとこう言った。


 「今まで同じ人間が勇者候補として2度呼ばれるなどなかったから分からなかったぞ、

  大きくなったな、身長はもう少し大きくなると良かったがな」


 黒い仮面を外した男はムカつく皮肉を言って笑っている、ハヤトは幼い記憶を辿り答えに辿り着いた。

 

 「お前ユウトか?

  何で魔女を倒したお前が魔女に仕えてるんだ」


 ハヤトはかつて自分が知っていたユウトと、黒い仮面を付けている今のユウトは余りにも違っていた。


 「お前も魔女を倒して勇者になれば知ることになるさ、勇者とは異世界アヴェルトを救った英雄などではなく、勇者とは無知で馬鹿な愚か者だとな」


ユウトに何があったのかハヤトには分からなかった、それでもハヤトは何があろうと昔自分を庇って死んだエリカの姉を助ける、その決意が変わることはなかった。


 「俺は魔女を倒す、そして生き返らせるんだ絶対に」


 ハヤトの決意を聞いたユウトは黒い仮面を付け直すと剣を鞘へと納めた。


 「どういうつもりだ?」


 ハヤトは絶対的に優位であるユウトが剣を収めて戦いの場から引こうと理由が分からなかった。


 「14代目勇者になるとしたらお前だろうなハヤト、馬鹿で愚かな勇者にな。

だから見逃してやるのさ、そして後に知るだろう、生贄は2人選ばれるとな。

  今此処で死んでいればどんなに良かったかと」


 ユウトはそう言い残すとその場から立ち去った。

 ユウトは魔女に現時点で監視されていないことに胸を撫で下ろした、魔物たちが居るので魔女も監視を緩めたのだろう。

 ユウトは未だに交戦している魔物たちの場所へと足を運ぶ。

 魔物の数は最初の半分ほどに減っていた、そして人間の方も死体が転がっている。


 「さて、最後の仕上げをするか」


 ユウトはそう言って自分が連れて来た魔物を殺して回った。

 魔物たちはユウトの突然の行動に面を食らったがユウトは自分たちの命を狙っているのは明らかである、魔物たちはユウトに襲いかかった。

 ユウトは呪いの力で魔物たちを弱体化させると次々と殺していき、大した苦戦もなく魔物たちを全員殺し尽くした。


 「これで魔女に今回の戦いを知られることはないだろう」


 ユウトは自分が勇者候補を見逃したのを魔物たちは目撃してはいないであろうと思いつつ念の為に魔物を殺した、万が一にでも魔女に伝わることを避けるために。

 これで今回の戦いを魔女に伝えることが出来るのは自分だけである、魔女には自分の都合の良いように報告すればいいであろう。

 ユウトはこの村にこれ以上留まる理由がないので村から出ようとした、しかしハヤトの仲間パーティーの1人がユウトに切りかかった。

 魔物を殺してはくれたが黒い仮面の魔人は異世界アヴェルトの人間は誰でも知っている、女神に仇なす魔女の配下である。

 ユウトは切りかかって来た男を一刀のもとに切り伏せた。


 「魔物であろうと人であろうと邪魔する奴は殺すぞ」


 他の人間は仲間が目の前で殺されたが体が動かなかった、黒い仮面の魔人が村から出ていくのを黙って見送るしかなかった。


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