第5章 5=11 強敵
このエピソードは元勇者視点です
ユウトは魔物たちと共に村へと襲撃をした。
村を守る警護の者たちが魔物を侵入を防ごうと立ちふさがった、しかし魔女が選んだ精鋭の魔物たちの前に虚しくその命を散らした。
何かの破裂音のような音が響くと一匹の魔物のが膝から崩れ落ちた。
ユウトは破裂音がした方向へと視線を移した。
「俺が居る村を攻め込むとはいい度胸だな」
ユウトの前に銃を構えた男が立ちふさがった。
ユウトと比べると身長は一回りも二回りも小さい、身長は150~160㎝程度であろうか。
「何者だお前は」
ユウトは自分の前に立ちふさがった男に尋ねた。
「そりゃこっちのセリフだがな、ちなみに俺は真宮寺隼人、勇者候補って奴だ」
ユウトの前に立ちふさがった男こそが魔女の言っていたターゲットであった。
それを聞いた魔物の一匹がハヤトへと襲いかかった、しかしハヤトは慌てた様子はなく魔物に自分が持つ銃を突き付ける。
「風と火よ、我が銃弾に加護を与えよ、バーストブレット」
ハヤトが銃に複数の魔法を練り込み襲いかかる魔物に発砲をした。
魔物に銃弾が当たると魔物は胸に小さな穴が開き、魔物は炎に包まれ魔物が死ぬまで炎は永遠と燃え続けた。
魔女がユウトに与えた精鋭の魔物が一匹簡単に殺された。
「チッ、厄介だな」
ユウトは舌打ちをした。
女神の与えた武器に複数の魔法を練り込み威力を大幅に上げている、新しい勇者候補が異世界に来て半年は経つがここまで女神の武器を使いこなしているとはユウトの予想を大きく上回っていた。
「流石は魔女が最も警戒している存在ということか」
ユウトは素直に関心をしていた。
ユウトが勇者候補であったとき、自分を含めて周りでここまで女神の武器を半年で、いや一年経った時点ですらここまで使いこなしていた勇者候補は居なかった。
「背は低いがポテンシャルは歴代の勇者候補の中でもダントツかもな」
「誰がチビだ、ハチの巣にしてやるぜ」
身長のことを気にしているのかユウトの言葉にハヤトは怒りを表していた。
「戦いの最中は冷静にだよハヤト君、それに私は身長低いのなんか気にしないから」
ハヤトの後ろから女性がハヤトに声をかけた。
女性の身長はユウトと同じか少し高いくらいだ、180㎝ちょいといった位はあろう。
「誰がお前の感想を聞いた、駆け付けるのが遅いぞエリカ」
身長の高い女性はエリカというらしい、ハヤトはエリカに叱責をした。
エリカの後から多くの武装した人間がハヤトの下へと駆け付けて来ていた、どうやら皆ハヤトの仲間のようである。
「チッ、ぞろぞろと現れてきやがって」
ユウトは自分の想像以上にハヤトが手強いので魔物たちを使い複数で囲んで早めに始末したかった、しかし相手の増援が来た以上魔物たちを増援に来た連中とぶつけて、自分が1人で戦わなければならない。
ユウトはそう判断をすると魔物たちに命令をした。
「お前ら魔物は増援に駆け付けた連中を殺せ、勇者候補は俺が殺す」
魔物たちはユウトの命令に従うのは癪であったが、ハヤトがアッサリと魔物を殺したのを見て素直にユウトの指示通りに動いた。
「1対1で俺に勝つつもりか?黒い仮面さんよ」
「1対1じゃないよ、ハヤト君。パートナーとしてエリカも指を咥えて見ているわけにはいかないからね。」
勇者候補とそのパートナーを同時に相手にしなければならないか、ユウトは仕方がないと剣を抜き構えた。
ハヤトは銃を撃とうと構えたが急に体が重く感じた、ユウトは呪いの力で相手を弱体化させると距離を一気に詰める。しかしエリカが割って入りユウトの動きが止まる。
エリカはすぐにその場を離脱すると銃弾がユウトを目掛けて発射された。
銃弾は黒い仮面に当たりユウトは傷を負うことはなかった、すぐに物陰に体を隠してユウトは銃撃に備えた。
「妙な技を使うじゃねえか黒い仮面さんよ、最初の威勢はどうした?
隠れてないで出て来いよ」
ハヤトは挑発をするがユウトは物陰に隠れたままである。
ユウトは相手の武器が銃であることがネックとなっていた、ユウトの弱体化の呪いは無機物へは使うことが出来なかった。
相手を弱体化させて銃の引き金を引く前に終わらせたいが、相手のパートナーがユウトの動きを一瞬足止めしてその隙に引き金を引かれてしまう。
「厄介な2人組だ」
ユウトは考えていた、相手が導師タウと同じくらいに憎めれば引き金を引く力すら残さずに弱体化も出来るのにと、そう思ったがユウトが導師タウと同じかそれ以上に憎むことが出来る相手は異世界で2人しか居なかった。
奴らに復讐をするために此処で足踏みなどしている暇などないのである。
ユウトは黒い仮面に語りかけた。
「力を貸して貰うぞ、元勇者たち」
(勿論だとも、我らが同胞よ)
黒い仮面から憎しみが溢れ出しユウトへと流れていく。
ユウトは物陰から飛び出し真っ直ぐとハヤトへと駆け出した。




