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第5章 5=10 人間ども集まれ!

 ユウトが命を狙う勇者候補の1人であるハヤトはその実力から魔女を倒そうとする者たちが多く集まっていた。

 魔物たちが多くの村を襲い人を殺していたがハヤトはそういう魔物たちの討伐にも力を注いでいた、それ故に多くの異世界アヴェルトの人々の支持も集めていた。

 ハヤトのパーティーは50人近くにまで膨れ上がっているらしく、その中にはモチロン腕が立つ者が多くいた。


 「さて、どうしたものか?」


 ユウトはどう戦うか思案していた。

 万が一にでも不覚を取ることを避けたいユウトは初代勇者の瞳で未来を予知したかったが未来を予知する力は多用することは出来なかった。

 黒い仮面の中に歴代の勇者は意思と人格を植え込んだ、しかし初代勇者のみ自らの未来を見る瞳だけ埋め込み死んでいった。

 初代勇者はその後の勇者たちのために未来を見る瞳を残した、しかし何故自らで復讐を見届けようとしなかったのであろうか?


 「会ったこともない人間のことを考えても分かるハズもないか」


 ユウトは当面の問題であるハヤトと戦うために魔女から魔物を十数体、寄越すように頼んだ。

 ユウトとしては1対1ならば負けることはないと考えていた、人数が居ようとさほど問題ではないと思いつつも保険のためと魔女に説明した。

 しかし本当の理由は魔女側の戦力も削るためであった、勇者候補の1人であるハヤトを殺せば魔女と女神のパワーバランスが崩れる、ユウトは両陣営の戦力差が開くのを避けたかった。


 「ようやく来たか」


 ユウトは魔女が増援に寄越した魔物たちと合流するとハヤトが最近拠点としている村へと襲撃をかけるべきかユウトは悩んだ。

 ハヤトが拠点とする村はそれなりに大きな規模のため、ハヤトの仲間パーティー以外に村を警護する人間とも余計に戦うことになる。

 しかしハヤトが昔の自分のように甘い勇者候補であれば、村の人間を多少なりともユウトが殺せば村の人間を守ろうと村の人間は足枷となるだろう。


 「勇者候補の居る村に襲撃を掛けるぞ」


 ユウトは村から出て野営する時に襲撃するよりも村で休んでいる時に襲撃する方が自分たちの有利になると考え、魔物たちに村への襲撃を命じた。


 「村を襲うってことは人間を沢山殺せるんだな、げへへへ」


 頭の悪そうな一匹の魔物が待ちきれないとばかりに笑いながら喋る。

 他の魔物も早く人間を殺したいとばかりに高揚していた。

 魔物たち全員が女神を憎んでいたが、魔物たちは同様に人間も憎んでいた。


 「好きにしろ、村の人間をどれだけ殺そうとも構わん。

だが与えられた仕事はしっかりとこなせよ」


 ユウトにとっては異世界アヴェルトの人間がどうなろうと関心はなかった。かつては自らが傷付こうとも救っていたハズなのに。

 ユウトはもしパートナーであった彼女が今の自分を見たらどう思うのであろうか、そんな考えが頭をかすめた。

 ユウトは馬鹿だなと自らを憐れんだ、死んだ人間は何も思わないし何も言ってはくれない。

 

 (自分は復讐者なのだ)


 ユウトは心の中で呟いた。

 異世界アヴェルトの人間がどれだけ死のうと構うことはない、何故なら自分は他の世界から呼ばれた人間なのだから。

 自分たち勇者は異世界アヴェルトの平和の為に用意されたスケープゴート、ならば異世界アヴェルトで平穏に暮らす人々も憎しみの対象であるとユウトは考えた。

 ユウトは異世界アヴェルト全てを憎んでいた。


 「魔物ども集まれ!

  遥かいにしえの復讐を人間たちするがいい」


 ユウトは魔物たちにそう言うと魔物たちは村へと襲撃を開始した。


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