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第5章 5-7 夢の記憶?

 ツムギはまた夢の中にいた。

 夢の中でもツムギは走っていた、何処へ向かっているのだろうか?

 しかし見覚えのある景色である、先ほど現実で自分が走っていた道である。

 しかしその先には何もなかったハズだ。いや、其処には家が建っていた。

 ツムギはその家を窓から覗こうとしていた。


(覗いたらダメだ)


 心の中で必死に止めようとしたが夢の中の自分は止まらず窓を覗き込んだ。

 すると家の中の人間の手足が、そして首が突然ちぎれて飛んだ。噴水のように血が噴き出して家の中は血塗れで人間の手足が転がるおぞましい光景となった。

 何が起こったか理解できなかった、しかし夢の中の自分は頭を抱えて座り込んでいる。

 すると何処からか声が聞こえた。


 (憎いか? 全ての元凶は女神にある。 復讐の刃を女神に突き立てるのじゃ。

  立ち上がるのだ復讐者よ、わらわが力を貸そうぞ)


 「うわあぁぁぁー」


 ツムギは叫び声を上げてベットから上半身をバッと起こした。


 「突然ビックリするじゃないのよ」


 ルティはそう言うと驚いて椅子から転び落ちたので椅子に座り直した。

 ツムギの叫び声を聞いてヴィルヘルムが部屋に飛んで入って来た。


 「大丈夫かツムギ君? ルティちゃんに襲われたのかい?」


 ヴィルヘルムの言葉を聞きルティはヴィルヘルムの胸ぐらを掴み首を絞めた。


 「な、ん、で、女の私が襲うのよ」


 「じょ、冗談だよ、本気で苦しいから手を放して、お願い」


 ヴィルヘルムはタップをするとルティは怒りながらも手を放した。


 「でもツムギ君はルティちゃんに感謝しないと駄目だよ~、僕とフランちゃんも看病したけど一番熱心に看病してたのはルティちゃんなんだから」


 「し、仕方なくよ、私は勇者候補のパートナーなんだから」


 ルティは少し顔を赤くして言い訳をした。

 ツムギが気を失った少し後にツムギに追いついた3人はツムギが倒れているのを発見した、ヴィルヘルムがツムギを負ぶって一番近い村であるルーアンに戻ってきたのである。

 そして倒れてから丸1日近くしてようやくツムギが目を覚ましたのである。

ツムギは見覚えのある部屋だと思ったが自分たちのことを昨日 (1日気を失っていたので正確には一昨日であるが)泊めてくれた家なので見覚えのあるのは当然であった。


 「起きたばかりで悪いんだけどツムギ君にお客さんが来ててね、僕は呼びに来たところなんだよ」


 ツムギは誰なのかまるで見当が付かなかったが、突然の来訪者のことよりも先ほど自分が見ていた夢の中で語りかけてきた声の方が気になっていた。

 自分に女神を殺すように語りかけていた声の主は誰なのであろうか?

 甘い猫なで声で女性であることぐらいしかツムギには分からなかった。

 そして夢の中の自分は酷く後悔をしていた、自分は何をやってしまったのであろうか?ツムギは知りたいような知りたくないような微妙な心境であった。


 「おーい、ツムギ君起きてるかい~」


 反応のないツムギにヴィルヘルムはツムギの前で手をヒラヒラとして見せた。


 「あっ、ゴメン、それでお客さんて?」


 ツムギは考え事を中断して頭を切り替えた。

 そして扉から女の子がツムギが寝ている部屋に入ってきた。


 「お久しぶりです」


 そこに現れたのはツムギと同じ勇者候補の1人であるユナであった。

 ユナの後ろからパートナーであるライオスも部屋に入ってくる。

 ライオスの後ろからさらに大柄の肌の浅黒い男も入ってきた、その大柄の男は少し前にツムギを魔物の軍団から救ったジャックであった。

 ツムギはジャックの姿を見て驚いた、ジャックの左腕の肘から先が無くなっていたのである。


 「ジャックさん、その腕?」


 聞いてはマズいことかも知れなかったがツムギはポロっと口から疑問がこぼれた。

 ツムギはジャックの強さをその目で見たことがあるので信じられなかった、屈強な魔物を紙切れのように吹き飛ばす姿は怪物であった。

 その男の腕が失われたなど、どんな化物と戦ったのか? 事故ならばどんな大事故が起こったのかツムギには想像が出来なかった。


 「この俺様の腕を切った男のことでこの村に来たんだよ、そしたら他にも色々と調べてる連中がいたから情報交換がしたくてな」


 ツムギはジャックの言っていることが分からなかった、自分が気を失っている間に一体何があったのだろうか。


 「結論から言うと俺様の腕を切り落としたのは魔女の下僕の黒い仮面の魔人だ。

  そしてソイツは俺の昔の仲間で先代勇者のユウトって野郎だ」


 ジャックそれだけツムギに伝えた。

 何があったのか詳しい話をツムギはその場に立ち会わせたユナとライオスに聞くことになった。


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