第5章 5-4 身の内に潜む者
ツムギが異世界で最初に訪れた村である(都である)聖都、そして今目指している魔女の住まう城の丁度中間程度の位置にいた。
本来のルートを変更したツムギたちは大きく南南西の方角へと進路を変えて魔女の住まう城を目指した。
ツムギたちの進むルートにはあまり人が多く住んでいないため旅に必要な物を少し多めに用意したため荷物が多くなった、男はツムギ1人のため(ヴィルヘルムもいるが)荷物の多くをツムギが持たされるハメになった。
ツムギは重い荷物を背負っていたが対した苦にはならなかった。
女神の加護により本来の筋力や体力は何倍にもなっていたからである。
「そう言えば何でこれから進むルートは異世界の人たちから避けられてるの?」
ツムギは疑問に思いフランに質問をぶつけた。
「今から向かう場所は曰く付きの村があるから異世界の人はあまり寄り付きたくないのよ、皆ね」
フランが答える前にルティが自慢気に先に答えた。
フランに聞けば間違いないとツムギは思ったが、ルティが話したそうにしていたのを感じ取りツムギはルティへと続けて質問した。
「曰く付きって、その村で何が起こったの?」
「その村は魔女が生まれた土地だと言われているの。
その村の名前はルーアン。悲劇が生まれる地と言われているのよ」
ツムギはその話を聞いて胸が大きく締め付けられた。
そこに足を踏み入れては絶対にイケナイ、そんな思いが心を満たした。
しかし避けることは許されない、そんな相反する思いがぶつかった。
「ちょっと大丈夫?顔色悪いわよ」
ツムギの様子が少しオカシイことに気付いたルティはツムギに手を伸ばした。
「うわああぁぁー」
ツムギはルティが伸ばした手を大きく払いのけて後ろに派手に転げた。
突然の出来事にフランとヴィルヘルムも驚いた表情でツムギに駆け寄る。
青ざめて豹変したツムギの態度を見たヴィルヘルムは精剣を召喚すると辺りを警戒した。
魔物による精神的な攻撃かとヴィルヘルムは警戒をしたがどうやら思い過ごしのようなので剣を収めた。
「大丈夫ですかツムギさん、体調が悪かったら治癒魔法をかけましょうか?」
「ゴメン、大丈夫だから。
白昼夢っていうのかな?突然気が動転しちゃって」
フランの申し出をツムギはやんわりと断った。
ツムギは自分の中に自分でない何かが居る、自分が今まで危険を予知したのは動物的な勘などではなくその何者かによる警告なのではないかと感じた。
そしてこれから向かうルーアンという村に、悲劇の生まれる地と言われる場所で、自分の中の何者かにとって重要な場所であると感じてツムギはルーアンへと足を速めた。




