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第4章 4=14 この腐った異世界(アヴェルト)に断罪を

このエピソードは元勇者視点です。

 ウァサゴはユウトより自分の方が有利であると考えていた。

 ウァサゴ自身は魔物の中でも戦闘力が高い方ではなかった、仮にユウトが女神の加護を受けていた勇者候補であった頃ならば万が一にも勝機はなかったであろう、しかし今のユウトは魔女様の力を借りた状態である。ならば魔物である自分にその力が発揮されることはない、そう考えウァサゴはユウトに襲いかかった。

 しかしウァサゴの考えとは逆の結果となった。ウァサゴはユウトの呪いの力により急激に体が重くなり簡単にユウトの剣に切り裂かれた。


 「馬鹿が、俺の呪いの力は異世界アヴェルトの全ての者が対象だ」


 ユウトはウァサゴの考えを見抜いていたように吐き捨てるように言った。

 ウァサゴは最後の力を振り絞り言葉をひねり出した。


 「何故だ、キサマも我ら魔物同様に女神を憎んでいるはずではなかったのか?」


 「勿論だ、女神は罪を犯した。その罪は異世界アヴェルトを破滅へと導くことになるはずだった。しかし女神は自らが犯した罪を他人に押し付けることで難を逃れたんだ。勇者という生贄に全てを押し付けることによってな」


 ウァサゴも女神が犯した罪を知っていた、ウァサゴだけでなく魔物全てが女神の罪を知っている。その罪ゆえに魔物は女神を憎んでいるのだから。

 ユウトはウァサゴの舌に移植された初代勇者の目を剣で突き刺した、ウァサゴはそれを最後に事切れた。


 「安心しろ、お前ら魔物が憎む女神には俺が罰を与えよう。女神が大切にしている異世界アヴェルトをグチャグチャに壊して絶望させてから女神は殺してやる。そして女神以上に憎いもう1人にも、必ず復讐の刃を突き立てよう」


 ウァサゴは息絶え誰もいなくなった洞窟でユウトは1人喋り続けた。いや、ユウトは1人ではなかった。黒い仮面がユウトに語りかける。


(13代目勇者よ、いや13人目の復讐者よ。我々勇者たちの怒りを、憎しみをその手で果たせ)


 黒い仮面から幾つもの声がユウトの頭に響いた。

 ユウトが付けている黒い仮面には意思があった。かつて全ての勇者がユウトの付けている黒い仮面を付け魔女の配下となっていた。そしてただ1人を除いて黒い仮面へと勇者たちは自分たちの人格を植え込んだ、自分たちの果たせなかった復讐にを見届けるために。


 「さあ行こう、この腐った異世界アヴェルトを断罪しに」


 ユウトはそう言うとかつての勇者たちの人格を植え込んだ黒い仮面と共に洞窟を後にした。

 ユウトはウァサゴの死が魔物たちに伝わるように手筈を整えた。ウァサゴの死で魔物たちに動揺が広がり勇者候補2人を打ち漏らすはずである、初代勇者の目で未来を予知したので間違いはないであろうユウトは思った。

 2人の勇者候補がここで命を落とせば自分の計画に狂いが生じる。ユウトは最悪自分が復讐を失敗したときのために勇者候補が1人は生きていなければならなかった、14人目の復讐者となってもらうために。

 今までの黒い仮面を付けた魔人たち(元勇者たち)がそうしてきたように。

 できれば自分と同じ境遇になる者がこれ以上出ないことをユウトは祈った。


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