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第4章 4-6 恐怖

 魔女裁判にかけられてから4日が経った。目的地の近くまで来たツムギたちは夜が訪れたので野宿をしていた、今はツムギが見張りの番で1人起きていた。

 明日になれば自分は魔物の群れの中に1人取り残されるのである、それも今までで会った魔物よりも強力な精鋭揃いらしい。

魔物たちの位置はレクターが斥候を出して把握している(ツムギたちにも魔物の位置の情報は届けられていた)、それでも万が一夜襲を仕掛けてはこないかとツムギは辺りをビクビクしながら見渡す。


 「なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ」


 ツムギは1人で自分の境遇を嘆いた。

 今なら起きているのは自分だけだ、逃げ出してしまえばいいではないか。自分の中の弱い心が囁く。

 しかし自分が逃げ出したら一緒に旅をしてきたルティとフランはどうなるのか?ならばルティとフランと一緒に逃げれば、そんなこと監視役のヴィルヘルムが許すはずがない。

頭を下げればどうだ、みっともなく命乞いすればヴィルヘルムなら情けをかけてくれるかも?ツムギは想像をした、ルティの前でみっともなく命乞いする姿を。


 「ダメだ、それだけは絶対に」


 ツムギは小さく声を出して抗った。ちっぽけなプライドを必死に奮い立たせる。しかし恐怖で足が馬の居る方に向かう、馬で逃げれば誰も追ってこれないはずだ、唾をゴクリと飲む。

 ヴィルヘルムは薄っすらと目を開ける。


 (ツムギ君が馬に乗ったらかわいそうだけど馬を殺さないとな)


 ヴィルヘルムは心の中でそう言いツムギに気付かれないようにいつでも動けるを準備する。ツムギはヴィルヘルムが起きていることに気付かず馬の居る方向にまた一歩踏み出した。その時後ろから物音が聞こえてツムギはバッと振り返る。


 「うーん、少し寝すぎたかしら」


 ルティが起きて伸びをする。ルティはツムギに気付き声をかける。


 「ツムギどうかしたの?」


 「ちょっとトイレに行きたくて」


 ツムギは慌てて嘘をついた。


 「だったら声かけなさいよね、見張りがいないとマズいでしょ起こして構わないから。」


 「ごめん」


 「別にいいわよ、そろそろ交代の時間でしょ」


 ルティは気付いていないがツムギは嘘をついたことに謝罪した。


 「明日はいよいよ作戦の決行ね、怖くて眠れなかったら手を握っててあげようか?」


 ルティはイタズラっぽく笑って言ったが声は子供をあやすように優しかった。


 「全然平気だよ、なんたって勇者候補だからね」


 ツムギはそう言うと走って木陰に行き用を済ました、そして走って戻ってくると急いで毛布を被って寝たふりをした。

 ツムギは自分の足の震えがルティにバレないようにと走って誤魔化し毛布で震えている自分を隠した。

すると毛布の上から頭ところに手が置かれた。その手は温かくツムギの恐怖は薄らぎ眠りへと落ちていった。



その晩ツムギは夢を見た、夢の中の自分はまた黒い仮面を付けていた。


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