第4章 4-4 勇者の定義
ツムギは魔女裁判が開かれたその晩にもう1人の勇者候補であるユナ、そしてそのパートナーであるライオスと軽い情報交換をした。導師タウと巫女セリーヌの居ない今の異世界でユナは今や光魔法を使わせたら3本の指に入るほどであるらしい。勇者候補の中でも重要な存在となっていた。
そんなユナに同じ魔術師としてなのかフランはなついていた。
「凄いですねユナさん、魔法の中で特に難しい強力な光魔法を使えるだなんて」
フランは尊敬の眼差しでユナを称賛した。ユナは照れた様子で口を開いた。
「私が凄いわけじゃないよ、女神様のくれた武器が凄いだけだよー。でも人を苦しめる悪い魔女と魔物を倒す力が私にあるなら困った人のために頑張りたいかな」
ユナの言葉にルティが賛同して声を上げる。
「偉い、それでこそ勇者候補よ。ヴィルヘルムから胸クソ悪い勇者候補の話聞いたけどやっぱり栄誉ある勇者を目指す者はそうじゃないとね」
ルティの言葉にユナのパートナーであるライオスも同意していた。
「異世界で勇者とは悪い魔女を倒した英雄の称号だからね、パートナーである僕が言うのもなんだけどユナのような子がそうなって欲しいと思う自慢のパートナーさ」
ライオスは爽やかな笑顔で言った。ツムギはライオスが好感の持てるイイ奴であることは分かっていたが偶にイラッとする。爽やかなイケメンに対するモテナイ男の僻みであることは重々承知していたがいかんともし難かった。
「アタシのパートナーのツムギだってね、えーと、その、いいとこがあるわよ」
ルティのフォローにならないフォローを聞いてツムギはダメージを受けた、下手なフォローは人を傷つけるのだとツムギはこのとき学んだ。
そんなときルティは何か気付いたのかユナを部屋の隅へと引っ張って他の人に聞けえないように耳打ちした。
「もしかしてユナってパートナーのライオスのことが好きなんじゃないの?」
ルティの発言にユナは慌てふためいていた。
「そんな、えと、私なんかじゃライオスさんと釣り合いが取れませんよ」
ユナは顔を真っ赤にしてルティとキャッキャッと女子トークを繰り広げていた。
部屋の隅で仲良くはしゃぐ2人をライオスは暖かく見守っている。
ツムギはそんな2人を余所にさっきのライオスの言葉を思い出していた。異世界での勇者の定義とは悪い魔女を倒した英雄に贈られる称号、ツムギは引っかかりを覚えた、ツムギ自身どこに引っかかりを感じたか分かりはしなかったが。




