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第4章 4-1 魔女裁判

 ツムギは何の説明もされず宿屋から別の大きな建物へと連行された。それから少し時間が経ち騒ぎを聞いたルティとフランがツムギの元に駆けつけた。

 ルティは状況を説明するようにツムギに求めた。


 「一体何をやったのよ、賢人会に呼び出されるなんて」


 ルティに詰め寄られてツムギは返答に困った。容疑は魔女と内通していることらしいが身に覚えがまるでない。

とりあえずありのままを伝えようとツムギが口を開きかけたそのとき、横の扉から女性が、いや女装した男がこちらに近づいてくる。ヴィルヘルムだ。

 また女装をしていることにツムギは言葉を失った、ヴィルヘルムは傍にくるとルティ言い放った。


 「ツムギ君は嫌がる僕を無理やり宿に連れ込んだんだー」


 ヴィルヘルムの発言にツムギは固まった、怒りに震えるルティはツムギの胸倉を掴んだ。


 「アンタ勇者候補として、いや人としての道を踏み外してるんじゃないわよ。恥を知りなさい」


 ルティと対照的にフランは後ずさりして距離をとっている、汚物を見るような視線がツムギに突き刺さる。

 その状況を見てヴィルヘルムは大笑いをしている。


 「いや~、ごめんね、君たちの緊張をほぐしてあげようと思ってさ、決してからかった訳ではないんだよ」


 ヴィルヘルムは笑いを堪えながら弁明をした。


 「初めまして、僕はヴィルヘルム、気軽にヴィルって呼んでよ」


 ヴィルヘルムは軽く自己紹介をした。ルティは騙されたことが頭にきているのだろうか、あからさまにイライラとした態度だ。

 フランは状況の説明をヴィルヘルムにお願いした。


 「簡潔に説明するとだね、ツムギ君は魔女と内通の疑いのある容疑者、その容疑者を魔女裁判にかけようってこと」


 ヴィルヘルムの話を聞きルティとフランの態度が豹変した。ルティはヴィルヘルムに食って掛かった


 「ツムギが魔女と内通してるなんてあるわけないでしょ、それに勇者候補を魔女裁判に掛けるなんて本気なのっ?」


 「僕に言われても困るよ、僕は責任者じゃないし、それに有罪になると決まったわけじゃないんだしさ」


 ヴィルヘルムは思ってもいないことを口にした。

 異世界アヴェルトの住人でないツムギは、ルティとフランが来るまでの間にヴィルヘルムに魔女裁判についての話を聞かされていた。

 魔女裁判とは魔女に味方した疑いのある者を裁判にかける。裁判にかけられれば九分九厘が有罪となる、何故なら魔女に味方した疑いが少しでもある者を野放しにはしておけないからだ。

 今まで魔女裁判にかけられた者は良くて監禁をされるか、悪くすれば死刑の二通りらしい。

 ルティは納得がいかずに更にヴィルヘルムを問い質す。


 「そもそもツムギが魔女と内通してるなんて根も葉もないこと誰が言ったのよ」


 「ツムギ君は未来を予知する力があるって噂が広まっているんだ、魔女の魔の手から逃れたのは未来が見えたからだと。

 だけど未来を予知なんてできるハズがない、危険を回避できたのは魔女と内通しているからだろうって声が高まってるんだよ」


 ルティはヴィルヘルムの言葉を聞いて固まった。他ならぬルティ自身がレオン一行に言い放った言葉が原因であったのだ。

 ルティはツムギの肩を軽く叩き言った。


 「運が悪かったわね、ドンマイ」


 ツムギはもとよりルティを責める気はなかったが、流石にイラッとしてジト目でルティに無言の抗議をした。そのとき、奥の扉が開き一人の老人がこちらに近づいてくる。ツムギがヴィルヘルムに連れ込まれた宿に居た老人であった。

 ヴィルヘルムがツムギに耳打ちした。


 「あの方が賢人会の1人、レクターって爺さんだよ」


 そして魔女裁判が開かれた。


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