第3章 3=12 魔人VS魔人
このエピソードは元勇者視点です。
ユウトとクロードの剣と剣がぶつかる。互いの剣がぶつかる度に小さな火花を散らしている、それはまるで花びらの花が散っていくようであった。
ユウトはクロードの斬撃をなんとか防いではいるが劣勢に立たされていた。
「どうした?元勇者様の腕前はそんなもんかよっ。」
クロードがそう言うとユウトはチッ、と軽く舌打ちをした。
ユウトには自分が押されている理由は明白だった。かつて勇者候補であったときは女神の加護により身体的能力を含め、自分の様々な力は何倍にもなっていた。今の自分にその力はない。
しかし、自分は別の力を手に入れた。それは魔女から与えられた力、相手の能力を下げるいわば相手を弱体化させる力だ。そのために必要なのは弱体化させる相手を、強く憎悪する必要があった。
クロード相手に手をこまねいていると黒い仮面がユウトの脳内に語りかけてきた。
(必要ならば我々が手を貸すぞ、13代目勇者)
ユウトは自分が付けている黒い仮面に脳内で返事をした。
(黙って見てろ、これは俺がすべきことだ)
「何故殺す気で来ないんだ、クロード。」
「悪いがお前を殺す気はねえよユウト、ボコボコにしてセリーヌの前に連れて行って謝罪させないといけねえからな。」
ユウトは苛立った。クロードは初めから自分を殺す気がなかったからだ。
何もせずにその身を晒したセリーヌといい何故そんな甘えたことを言うのだこいつらわ。仲間を手にかけた俺を殺す気で切りかかってこい、汚く罵れ、そうすれば俺ももっと強く憎めるはずなのに。
「クロード、俺と共に来い、お前の家族は女神を崇拝する過激派に殺された、それなのにお前の家族を殺した奴らは女神のためにしたことだからと無罪放免だ。女神が憎いだろ、女神側の人間が許せないだろ、だから魔人になったんだろ。」
ユウトはクロードに懇願した。クロードが魔女の下にくればもう仲間を手にかけなくて済む。
しかし、クロードは首を横に振った。
「家族を殺した奴らは憎いに決まってる、救ってくれなかった女神も怨んださ、でもな、もう気持ちにケリは着けた。勇者候補のくせに女神と対立しようとしてまで俺に手を差し伸べた、甘ちゃんでお人好しのおかげでな。だから今度は俺が手を差し伸べてやるよ。」
憎まなくてはいけない、そう分かっているのにユウトの心から憎しみは薄らいでいった。
「ユウト、お前に何があったんだ、何故魔女に味方してんだ。」
ユウトは黒い仮面を外し、クロードの問いにゆっくりと答えた。
「裏切られたんだ、どうしても許すことはできない裏切りに。」
ユウトは今まで何があったかを語り始めた。




