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第3章 3-8 ギーシュの思惑

 レオンに武器を突き付けられたツムギは焦った、万が一にでも戦闘になれば数が違いすぎる。かといって1対1でも今まで倒してきた魔物の数は倍以上の開きがあるので武器の性能差でいっても勝てる見込みは薄い。

それでも仲間を巻き込んでルティとフランが傷付く姿は見たくない、ツムギは決心をしてタイマンを申し出ようとした。

 その時ルティが前に一歩出る。


 「仲間の数が多いからって強気に出てるなら後悔することになるわよ。ツムギを殺したりしたらたとえ差し違えようともアンタを殺すわ。勇者候補のパートナーを舐めんじゃないわよ」


 ルティはそういうと剣を抜いた。フランも一歩前に出ると杖を構える、フランは武者震いかはたまた怖いのか体が少し震えている、多分後者であろう。

 女の子が自分を守ろうと前に出ているのに自分は何をウジウジ考えているのだろうか、ツムギは自分を恥じると絶対に2人を守ろうと決意して前に出る。

 するとツムギは立ちくらみがして目の前が暗くなった、その時に一瞬別の景色を見た。黒い仮面を付けた男が両膝を地面に付けて、手で仮面を付けた顔を覆っている。その男は神に、いや仲間に赦しを乞うているのだろう、何故だかそんな気がした。


 「どうした、ブルッちまったのか?」


 レオンの声でツムギは我に返った。一瞬意識が飛んでいたのだろうか、レオンの方を見るとレオンの仲間たちもいつの間にか武器を手に取り身構えている。2人を守る立場なのに何をやっているんだと自分に毒づく


 「あまり体調がよろしくないようですね」


 レオンのパートナーのギーシュはそう言うとニヤリと笑った。


 「それでは双方武器を納めましょうか、勇者候補同士の戦いなど喜ぶのは魔女側だけですからね」


 「何言ってんだギーシュ、この俺様を勇者にするんじゃなかったのか?」


 意外なことにギーシュが場を収めようとした、しかしパートナーのレオンは不満を口にしてギーシュを睨めつける。


 「ご安心を、レオン様を勇者にするために私ができる最大限のことをするつもりです。だからこそ武器を収めてください。邪魔だという理由でツムギ様を手に掛けた場合異世界アヴェルトの人心は離れていきます、それは得策ではありません。それに…」


 ギーシュはその先を口には出さなかった。

ギーシュはレオンを説得すると、レオンは武器を収める。ツムギはレオンが素直にギーシュの言葉に従ったことに驚きを禁じ得なかったが、とにかく場が収まったことにツムギは安堵した。

ツムギたちがその場を離れるとレオンはギーシュに問い詰めた。


「未来を予知するなんて力がある奴を何で見逃した?」


ギーシュは鼻で笑うとレオンの質問に答えた。


「彼は初代勇者様の力なんて持っていないから安心してください、そして見逃した理由は彼がレオン様の役に立つからです。彼にはデコイとなって役に立ってもらわないとね」


ギーシュはあくどく笑うと最後に一言付け加えた。


「本当にレオン様が勇者になる邪魔となるなら彼は私が殺します。私は勇者のパートナーにならなくてはいけないのですから」


 レオンは一瞬たじろいだ、自分のパートナーが持つ狂気を改めて自覚した。


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