第3章 3-6 謎の勇者候補
ルティは今まで伝え忘れていた4人目の勇者候補についてツムギに説明をした。4人目の名前は真宮寺隼人といい、その4人目のハヤトは他の勇者候補と明らかに違っていた。
ハヤトは異世界に3番目に召喚された、するとすぐに魔法を使って見せ、女神に自分の武器は銃であるからすぐに寄越すように伝えて武器を手に入れると導師タウと少しばかり話をして旅立っていった。
レオンは1人だけ先に旅立ったハヤトに対して導師タウへと文句を言ったが、結局ツムギが召喚されるまで待たされた。ハヤトという勇者候補のみが特別扱いを受けたことがレオンは気に入らなかったらしい。
ツムギは自分が召喚された際のレオンの悪態について今更ながら合点がいった。
「ハヤトの奴は魔物を殺しまくって一直線で魔女の下を目指しているらしいし、もう一人の勇者候補のユナだったかは先代勇者のパーティーの一人を仲間にしたらしいぜ。つまり一番魔女を倒す可能性が低いのはお前ってことだ。」
レオンは小馬鹿にしたようにツムギに言った。ツムギ自身としては順調に進んでいると思っていた、しかし、他の勇者候補からは置いてけぼりを食らっていると知り少なからずショックを受けた。
「先代勇者様のパーティーの一人を仲間にしたって本当?誰を仲間にしたのよ?」
先代勇者の話となるとルティは黙っていられないとばかりにレオンに問い質した。ツムギは旅の途中でルティから聞いた先代勇者のパーティーの話を記憶の糸を辿って思い出す。確か1人は先代勇者のパートナーで、クルミという女性で10年前から行方知れず、もう1人はジャックといって大男で無類の強さを誇る、そしてもう1人はクロードといいかつては魔女側に加担した魔人だったが、改心して先代勇者の仲間になったと聞かされた。ルティから話を聞かされていたのでツムギも自然と興味が湧いた。
「ジャックとかいう大男だって話だがな。」
「ジャックって、あのジャック・ラカンでしょ。お頭は人並み以下の以下だけど、素手での戦いなら異世界最強の異名を持つ。」
ルティは興奮して説明を始めた。ルティにとって先代勇者は別格として、それだけでなく先代勇者御一行が憧れの対象のようだ。ルティの熱弁にレオンがウンザリしたのか割り込みツムギに喋りかけてきた。
「まあお前を除いて多少は頑張ってる様だが、所詮俺様には及ばないぜ。まあ俺様のパートナーが多少使える奴だったからこれだけの腕の立つ仲間を揃えられたのも一つあるがな。」
そういうとレオンは自分の横のパートナーをチラリと見た。
「レオン様の人徳ですよ。まあ名家の生まれである私の力が多少なりともお役に立てたのであれば嬉しい限りですが。他の勇者候補のパートナーならいざ知らず、偶々選ばれた貴女では無理でしょうがね、ルティ。」
レオンのパートナーであるギーシュは見下すようにルティに言う、ギーシュは更に言葉を続けた。
「ルティがパートナーとは不運ですね、ツムギさん。いや、それともツムギさんの勇者候補の器がその程度ということかもしれませんがね。」
「そーよね、フランなんか仲間にしているし勇者候補の程度が知れるわよね。」
「ヒドイよセシリちゃん。」
ギーシュだけでなくセシリまでが悪口に参加をしてきて、フランは小さな声で抗議の声を上げた。ツムギも悪口を言い返そうと言葉を探したが、残念なことにツムギは頭も口も回る方ではなかった。するとやはりルティがいの一番に反撃を開始した。
「言わせておけばいい気になって、ツムギは間抜けに見えるかもしれないけど残念なことに凄い力を持ってるのよ。」
間抜けに見えると言ったルティの言葉にツムギは抗議しようと思ったが、ツムギ自身が全く思い当たらない凄い力というのが気になったので黙って続きを聞くことにした。
「初代勇者様と同じ力を持ってるのよ。」
周りの人間は、バカな、有り得ない、まさかなど否定的にどよめいた。しかしその中で1番驚いていたのは他ならぬツムギ本人であった。




