第3章 3-5 4人目
聞き覚えのある声に振り返ってみれば、そこには勇者候補の一人のレオンがいた。ツムギとしてはあまり再会をしたい人物ではなかった、その上面白くないことにレオンの周りにいる仲間らしき人数を数えてみるとレオンを含めて8人、そして少し離れた所に未だにフランに罵声を浴びせているセシリも多分レオンの仲間だろう、そう考えると全部で9人もいることになる。
フランが仲間になってようやく3人になった自分と比べると、その原因はコミュ力の差か、はたまた見た目なのであろうか、ふと遠くを見て現実逃避するツムギであった。
「久しぶりだな、随分と寂しい人数じゃねえかよ。」
レオンの馬鹿にしたような笑みが腹立たしくツムギが反論しようとしたがそれよりも早くルティが言い返す。
「お生憎様、こっちは少数精鋭なのよ。」
「ハハハッ、そりゃすげえな、こっちはあと6人ほど宿に待機させていてな、人数が多いのもウザったくてしょうがねえがな。」
レオンの話では仲間はレオン自体を含めると15人もいて、人数をかけて魔物を弱らせて最後にとどめをレオンが刺しているらしい、そうして今までで倒した魔物の数は百を超えているらしい。ツムギ自身が倒した魔物の数はレオンの半分にも満たない、勇者候補の武器は倒した魔物の数で武器のレベルが上がる(強くなる)ので、武器の性能では倍以上の差があり、仲間の数ではそれ以上の開きがあることになる。
フランとの約束がなければ魔女など誰が倒そうともどうでもいいのだが、約束をした以上は何とか自分が魔女を倒したいのだが、現実的にはレオンと自分の差の開きを考えるとツムギは頭が痛くなった。
「ソイツが勇者になるのはどだい無理そうだな、なんなら女2人なら俺の仲間にしてやってもいいがどうする?」
レオンはツムギの前で堂々とヘッドハンティングをしてきた。ツムギは頭にきたがそれよりも2人がレオンの方に行ってしまわないかと心配でチラリと2人を見る。
「ツムギさんは私の為に女神様の願いを使おうとしてくれているのに、裏切るような真似は出来ません。」
フランの言葉に涙が出そうになる。
「確かにツムギじゃ頼りないわね。」
ルティの発言で先ほどのフランのセリフとは別の意味での涙が出そうになったツムギであったが、ルティの言葉はまだ続いた。
「それでも一度パートナーになった相手を裏切る真似はしないわ、それにアンタよりはツムギの方が大分マシよ。なんだかんだ言っても最後には何かやってくれそうな気にさせる奴だしね。」
2人の答えにレオンは笑った。
「馬鹿の周りには馬鹿が集まるもんなんだな、勇者候補の4人の中で一番可能性が低いのは間違いなくソイツなのに付いて行くなんてな。」
ツムギは自分が悪く言われればムカつくが、仲間2人のことを馬鹿にされたことはムカつくでは済まされない明確な怒りで頭に血が上った。互いの武器の性能や、人数差などお構いなしに剣に手を伸ばすと剣の柄を強く握り、鞘から剣を引き抜こうとした。
「ごっめーん、そういえば4人目のこと伝えるの忘れてたっ。」
ツムギが剣を抜くよりも先にルティがそういうと、てへっ、といって軽く自分の頭をこずいて見せた。普段ルティがやらない仕草見てツムギの怒りは何処かに消えてしまった。
冷静になると勇者候補に4人目がいるという事実に驚きが込み上げてくる。しかしそれよりもルティが先ほど見せた茶目っ気のある可愛いポーズを思い出すと、ツムギはまた頭に血が上ってくるのを感じた。




