第2章 2-5 異世界(アヴェルト)の歴史
前の村を旅立って半日近くが経った。野営の準備も整え後は寝るだけである。
ちなみに野宿の時はツムギとルティは交代で眠り片方が見張りをすることにしている。
「話の続きは明日にして寝ようか」
ツムギはぐったりとした顔でルティに提案する。
「そうね、次の村まであと2~3日はかかりそうだから明日またゆっくり話すわ。」
ルティはまだ喋り足りなさそうにしている。
魔法の説明を受けた後、女神の巫女であるセリーヌという人の話を永遠としていた。
正確にはセリーヌという女性は先代勇者の仲間らしく、セリーヌではなく先代勇者のユウトについての話が9割ほどであったが。
「ふぁ~、まだ眠いや」
ツムギは眠たそうにあくびをして眠い目をこすり起き上がる。やはり交代で見張りをしながらでは睡眠が足りなかった。
(早く次の村に着かないかな)
女神の巫女よりも宿で寝ることを楽しみに次の村を目指す。
「じゃあ昨日の続きで異世界の歴史について教えてあげるわね。なんといっても10年前に異世界を救い私の命も助けてくれた先代勇者様についてね」
ルティは早く話たくてたまらない様子だ。そもそも昨日の内容は先代勇者がルティを魔物から救った同じ話を何回もリピートしていただけだった。異世界の歴史など微塵もなかったではないかとツムギは目で訴えかける。しかしルティはまるで意に返さず話始める。
「10年前の異世界を救って下さった先代勇者様は13代目の勇者様で、名前は霧裏勇人様」
このままではまた同じ話を繰り返されると思いツムギは質問をすることにした。
「女神の巫女のセリーヌって人は先代勇者の仲間だったんだよね、他には何人くらい仲間がいたの?」
「先代勇者様のパーティーは勇者様を入れて全員で6人よ」
ツムギの質問にルティは簡潔に答えると、また先代勇者のカッコイイ所について説明をしようとしたのでツムギは次の質問を慌てて投げかける。
「女神の巫女のセリーヌさん以外の仲間には会いに行かないの?」
「セリーヌ様以外の他のお方は消息不明なのよ、一人は10年前の戦いで命を落としているから、元の世界に戻った先代勇者様を除いて残り4人の内所在が分かるのがセリーヌ様のみってこと。他の3人の方も凄い力の持ち主だからぜひ力を貸してもらいたいんだけどね」
ルティの説明を受けている時にツムギは不思議な感覚が脳裏をよぎった。それは聖都が危険であると感じた時の感覚に似ていた、それは別れ道に訪れた時であった。
片方の道は女神の巫女、セリーヌがいる村に続く道。しかしツムギはもう一つの道に行くべき気がしたからである。ツムギはルティに提案した。
「こっちの道はどこに続いているの?こっちの道になにかある気がするんだ」
「そっちの道には少し歩けば村があるけど、小さな村で何もないわよ。寄り道してる暇はないわよ」
ルティはツムギの提案をはねのけて女神の巫女のセリーヌがいる村へと続く道を進んでいった。しかし、ルティとツムギが選ばなかった道の先にある小さな村に、かっての先代勇者のパーティーの一人がいたことに、ルティとツムギは知るよしもなかった。




