第2章 2=1 魔人動く
このエピソードは元勇者視点です
~~時間はツムギが聖都を旅立った時間まで遡る~~
先代の勇者であるユウトは魔女の前で片膝を付き頭を垂れる。
魔女はかって自分を滅ぼした者が頭を下げる姿を見て満足気な表情で口を開く。
「新たな勇者候補が召喚をされた、貴様は奴らの首を取ってまいれ。」
ユウトは顔を上げると魔女に異論を唱えた。
「魔女様にとって奴らの存在は危険なのは承知しています、しかし奴らは女神の影響が強い聖都周辺を拠点としている可能性が高いかと」
「分かっておるは、聖都にいる限り手を出せぬことはな。しかしずっと同じ場所にいるわけではなかろう。
いずれ妾の首を狙ってこよう、妾の前に現れるまでに殺せという意味じゃ。」
魔女は自分の意図を理解してないユウトに少しイラつきを見せた。
ユウトは仮面の下でニヤリと笑うと魔女が驚くような提案を持ちかけた。
「聖都を出る頃には勇者候補は力を付けていることでしょう。
ならばその前に聖都を襲撃し聖都の外にいぶり出してはどうでしょうか、上手くいけばそこで殺すことも出来るかもしれません」
魔女はユウトの提案を聞くと呆れていた、元勇者であるのに何を検討ハズレなことを言っているのだと。
「女神との戦いは数百年に及ぶ、貴様がかって異世界に訪れるずっと前からじゃ。その間何度も襲撃したが一度として成功はしていないわ。何故なら女神のテリトリーでは全力を出せん、そして何より女神の番犬である導師タウがいるからじゃ。」
「私に魔物の軍勢をお貸しください、必ずや魔女様のご期待に応えて見せましょう。」
魔女はユウトの異常ともいえる自信に興味を覚えた。
(万が一成功すれば女神側に大打撃を与えられるがどうしたものかのう?)
「よいじゃろう、妾の部下たちを率いることを許そう。
ただし結果が伴わなかった場合は覚悟をしておくことじゃな。」
魔女はニヤリと妖艶に笑うと魔物たちにユウトの指揮下に入るように命令した。
魔物たちは不平不満を漏らしたが魔女の命令に逆らう者はいなかった。
ユウトは魔物たちに号令を下した。
「さあ、聖都を蹂躙しに行くぞ。」




