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プロローグ

絵本の物語は大抵ハッピーエンドで終わる。

ハッピーエンドに続きがあるとしたら、それは不幸へと続く物語かもしれない。


 異世界に呼ばれた男は、異世界を脅かしていた魔女を倒し世界を救った。

 魔女を倒した男は勇者の称号を与えられ、異世界の神である女神によって、願いを一つ叶えられるのだ。

 勇者の男は言った


 「魔女のせいで傷ついたこの世界を癒してほしい」


 荒れ果てた世界は元に戻り、傷ついた人々の怪我も一瞬にして回復をした。死んだ人間だけは生き返ることはなかったが。

 人々は勇者を称え、勇者が元の世界に帰るのを涙を流し惜しんだ。

 異世界に呼ばれた者は、魔女を倒すために呼ばれ魔女が死んだら元の世界に強制的に戻されるのだ。


 勇者は、ともに三年間の長い旅をした少女に言った。

 

「二度と会えないかも知れない、でも、君のことを一生愛し続けるよ。

 きっと奇跡が起きてまた会えると信じて」


 少女は涙を堪え、優しく微笑み目を閉じた。

 二人は唇を重ね、最後の別れを惜しんだ。

そして物語の幕は閉じる。

 


~10年後~


 

 路地裏で酔っ払い、まともに歩くことさえ出来ていない男がいた。

 髪はボサボサで髭は伸び、服も汚れていて見るからに汚いなりをしていて、見る影もないが、その男は異世界を救った勇者の10年後の姿だった。


 「もしも願いが一つ叶うなら、彼女に会いたいな」


 ポツリと呟き、元の世界に戻ってからのことを思い出していた。

勇者だった男は異世界を救い戻ってきたが、異世界で過ごした3年間の時間は、元居た世界でも同じように3年間の月日が過ぎていた。

 その間に、勇者だった男の家族は一家離散していた、自分が行方不明になったことが原因で。

 勇者だった男が異世界に呼ばれたのは、高校生の時であったが高校も3年間の行方不明の間に退学になっていた。

 

 「あの時、異世界なんかどうでもいいと、たった一つの願いを自分の欲望の為に願っていたら違ったのかな」


 勇者だった男がポツリと呟く。

 その瞬間に何かが語りかけてきた。

 

 「汝が望むなら、異世界の扉を開けよう。わらわも共に行くことになるがな」


 その声の主が魔女であることは分かった。

 それでも願わずにはいられなかった。


 「魔女でも悪魔でも構わない、俺を異世界へ、彼女のもとにもう一度連れて行ってくれるなら」


 その瞬間に勇者だった男は黒い何かに全身覆われた。しばらくすると、そこにあったはずの勇者だった男の姿は消えていた。


初めて小説を書かせて頂きました。暇つぶしにでも読んで頂けたら幸いです。

中二病設定が大好きで、ハッピーエンドの勇者のその後を書いた(微妙な)ダークファンタジーです。


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