BINGO GAME
レクレーションの王道、ビンゴゲーム。
ビンゴゲームって、どこにも責任がないから好きだ。
しいて言うなら、ビンゴカードを選ぶときの、自分のくじ運が試されるっていうことくらい。
数を読み上げられると、毎回期待する。私かな。私、呼ばれたかな。
でもだいたい、そうじゃない。一つ足りなかったり、右と左が逆だったりする。
もどかしい。
私のビンゴカードは、いつもなかなかビンゴがそろわない。
リーチ、リーチ…。また、リーチだ。
いつも、いいところまでは行くのに肝心なところでちょっとずれる。
周りの人は、どんどんビンゴになっていく。まるで置いてけぼりにされているような感覚に、焦燥感を覚えずにはいられない。このままずっと、取り残されたままになってしまうのではないか。
景品代に並んでいる可愛い包装が一つずつなくなっていくのを、ビンゴカードに空いた穴から透かして見てみた。
「わ、すごい。三つもリーチあるんだね」
私のビンゴカードをのぞき込んで、君が笑った。
「三つもリーチがあって、そろわないのが逆にすごいよね」
自虐的な私のコメントには触れず、君はビンゴカードをもてあそびながら話し始める。
「知ってるかな、ビンゴカードの番号って、一番左の列は1から15の中から、二列目は16から30、真ん中が31から45、みたいな感じで、一応分けられてはいるんだよ」
「知らなかった」
君の好きなところ。
声がこんなに優しいところ。
博識なところ。
でも、それが全然嫌味に聞こえないくらい、話し方が優しいところ。
「なかなか、そろわないなあ…」
穴だらけのカードを持っている、細くて長い指。
「君の狙いは31だね。俺は、17。どっちがはやくビンゴできるだろう」
それから、とびきり、無邪気な笑顔。
五つそろって、ほら、ビンゴだ。
私は君のことがこんなに好きだ。
「31」
数字が読み上げられて、はっと我に返る。
「私、ビンゴだ」
「負けちゃったな。おめでと」
だけど、でも。
私が勝ちたいのは、どうやらこっちのビンゴではないようだ。
もしも君が、私と同じように、ビンゴカードを持っていたら、私はそれにいくつ穴をあけられるんだろう。
リーチ、リーチ。…また、リーチ。
いつも、いいところまで行くのに、肝心なところででちょっとずれる。
またそうなっちゃうのかな。
私はやっぱり、君を手に入れられないのかな。
なんてね。
五つそろったカードの穴から、君の姿を透かして見てみた。
このまえ久々にビンゴゲームやった。案の定そろわなかった。