第7話
今では回復薬も失敗なく作成でき、ドロップ素材で武具の強化もこなす。
鑑定や強化に必要な消費アイテムの資金も、クエストクリアで簡単に上限まで稼げる。課金で倉庫拡張パックを購入し、リアルのお菓子を模した回復アイテムは全部買い揃えてみたが、所持金はほとんど減らなかった。
装備品も初心者用から上級者用まで全て限界数まで買い込み、倉庫に詰め込んでいる。
ゲーム内通貨はどんどん増えていくため、持てない分は切り捨てるくらいならと、フレンド登録していた弟たちに大量のプレゼントを送った。
自分よりレベルが低い弟たちの助けになればと考えたのだが、逆に「メールBOXが姉貴のプレゼント通知ばかりでGMからの通知が埋もれて迷惑だ!」と怒られてしまう始末。
返事に「全私が泣いた!」と送ったら、「勝手に泣いてろ」と冷たく返される始末だった。
……そんな時期もあったのだ。
上級者になると、課金以外にゲーム内通貨の使い道がほとんどないのも仕方ない。
そうして基本はソロ活動を続けながらも、時には厄介なクエストを弟たちと協力してクリアしていった。リアルでも時間が合わずソロで過ごす時間の方が長くなったが、その間に橘花はアバター強化のため、上位竜をバッタバッタと斬り伏せていったのだ。こうして、竜殺しの称号を狙う布石が、いつの間にか着実に積み重ねられていたのだった。
「なんかズルイ! 姉貴ズルイっ!」
「はっはっはー、だからソロじゃないと無理な称号は今回は諦めろっての」
「うぅー……俺の上位竜討伐数、まだ五百ちょいなんだよ」
「つーかさ、ソロ討伐数が条件なんだから、PT組まずにソロで上位竜討伐クエスト受けて、どっちかの依頼中に割り込めばいいんじゃね? そうすりゃソロ扱いだし、一体の敵をみんなで総攻撃できて出現数も増えるし、メリットしかないよ!」
「そ、そうか。姉貴、天才っ! それで行こう!」
「長年やっててそれ思いつかないお前の思考回路も劣化してるぞ。……ドジっ子だな」
「ドジっ子じゃねぇ!」
「よーし、【ミブロ】の皆にも出てもらおう。局長も来てるはずだから話せば協力してくれるさ。上位竜の出現率も上がるだろうしな」
「いや、局長だって忙しいだろうし、俺もみくちゃにされるの嫌だよ」
「はっはっはー、称号欲しいならそれくらい我慢しろ。最近お前がログインしてこないから、みんなお前構いたくて禁断症状出始めてたんだぞ」
「やっぱりぃー!? だから最近【ミブロ】からログインお誘いメールが多いのか!」
「可愛いわんこは構いたくなるんだよなー」
「誰がわんこだ!」
「お前だお前。さーて、打診済みだし、強くてカッコいいお姉さんたちがいっぱい来るぞー」
「いーやー! ちょっと待って、俺また弄られ役かよ!?」
「いいじゃねぇか。周りから見れば豪華な構成だ。レッツ逆ハーレム!」
「やーめーてー、女扱いしかされないんだよ!」
「みんな紳士だから安心しろ」
……紳士の前に「変態」と付くのはまた別の話だが。
その後、ひとりが受けた上位竜討伐クエストに、NPC含む十五人編成のPTが割り込み、まるで姫を守る騎士軍団のように派手で豪華な攻防戦が繰り広げられていったという。




