第14話
明けましておめでとうございます。(遅!)
前回から今回の投稿にこぎつけるまで時間がかかりました。
ちまちまと書き足していたため長めになりましたが、楽しんでいただければと思います。
※残酷表現注意です。
その日の昼過ぎ頃、長閑だった隠れ里に悲鳴や怒号が響き渡った。
「なんだぁ?手応えがなさすぎだな、ははっ」
大剣を手にした厳つい真紅の甲冑を着たベルゼが畑を耕していた男を斬り伏せ、さらに剣を振り上げた時に倒れた男を庇おうとした女を串刺しにし、その体に足をかけながら剣を引き抜き笑う。
ベルゼはここに来るまで何人も斬り殺していた。
村の入り口で見張りの青年を何度も突き刺し反応がなくなると、今度は村に堂々とした足取りで入り込み、遊んでいた幼子を容赦なく薙ぎ払って近くで見ていた母親と思しき女性が悲鳴を上げたのを「煩い」と首を刎ねた。
つい先ほど女性の悲鳴を聞き、何事かと近くで畑を耕していた者が見に来て、鍬を手にしていたことから敵対者と決めつけて殺したところだ。
抵抗を見せない者ばかりですでに飽き始めていたベルゼは、騒ぎを聞きつけた村人達が集まるのを今か今かと舌なめずりをし待ち構える。
聞いた話では村人なのに剣を持っているという。村人が剣を持ち出してくれば、賊であろうとなかろうと大手を振って遠慮なしに“討伐”できるからだ。
ふと後ろに視線をやれば、いまだ入り口でまごついている新人の姿がちらりと見える。
連れてきた新人はあわよくば賊との戦闘で死んだことにして装備を頂こうと思っていたのだが、思っていたよりレベルが高いようで彼らの装備が手に入らない不満から村人には八つ当たりも含まれていた。
自分は貴族で誰よりも強い装備をしているはずなのに、それを上回る装備をした者が現れれば妬みもするし、貴族の踏み台である平民が強い装備をしているなど許されるはずがないという考えでベルゼは生きてきた。それが当然だった。
今まで逆らった者達は命を落とすか、装備を差し出して命乞いをするかだったのだから。
それなのに、現状はベルゼの考えとは別な方向にある。
他の村人が騒ぎだすまでの行動が遅く、手に入れられない装備や思い通りにならない新人に苛々しながら、今しがた斬り殺した男の頭を蹴飛ばし踏みつける。
「遅い、遅い遅い遅い遅いっ、いつまで俺様を待たせるんだっ!」
次いで折り重なって倒れる女性の腹を蹴り上げた時に、小さく呻いたことからまだ息がある事がわかると立て続けに蹴り続けた。
「お前らはっ!貴族にっ!価値あるものをっ!献上するのがっ!当たり前だろうにっ!逆らいやがってっ!」
今回のこともそうだ、と違う理由から湧きだした怒りに痙攣する女性を蹴る足にさらに力がこもる。
それがなければ森の中を二週間近く彷徨うことにならなかったと、勘違いも甚だしい怒りをぶつけ続け、ぜいぜいと乱れた息で蹴るのを止めた時には、女性はピクリとも動かなくなっていた。
そうして、ようやく村人が集まりだしてきたのを見たベルゼは、大剣を握りなおすと遺体を踏み越えて歩き出す。
「さぁて、今回もアレにたんまり食わせるとするかぁ」
† † † † † †
「村長っ、でかい剣を持った男が村の入り口にっ!そいつにポールとメルサが斬られたっ!」
「何だと!?」
最初の悲鳴を聞いた村の者は一人ではなかった。
遠くから様子を見ていた他の者が見知った同じ村の仲間が斬られるのを見て、ただ事ではないと村長のザザンに知らせに走っていた。
その緊急の報せを聞いたザザンは、ちょうど家に来ていた者達を走らせてすぐさま村の男全員を集め、女性や子供は村の奥に避難させる指示を出した。
村長の家に続々と集まってきた男達の手には、錆びかけた剣が握られていた。
本来は森の中を歩く時に、蔦や藪を切り開く時の物で最低限の切れ味があればいいものだ。
それで心許ないのは誰もが一緒で、剣のほかに食料を解体する時に使うナイフを懐に忍ばせて来た者もいる。
だが、防御面はほぼ紙同然。
大剣を所持した者となれば、この世界では限られている。冒険者だ。
賊などは力自慢でもない限り、そうした重い装備は使わないと元冒険者のザザンは知っている。
村人達を主戦力とすることは死人を増やすことになる。迷っている暇はないとしまっておいた昔の装備を出してきた。
定期的に手入れをしていた事が幸いし、現役で使える美しい緑の鱗が映える革製の鎧だ。
軽装備に見えるが、森に棲む大型の地竜を討伐した時に手に入れた素材で職人に作ってもらったもので、売れば一生遊んで暮らせる金になるほどの価値がある物。
それと対で作られた竜の牙から作られた剣も、いまだに切れ味は失われていない一級品だ。その装備からザザンがいかにレベルの高い冒険者だったか窺い知れる。
昔、鉄の侵略者に村が襲われた時に剣など貴金属は奪われたが、竜の牙と鱗でできたこの装備だけは見向きもされず持ち出されなかった。
家のある廃村となった場所で見つけた当時は鉄の侵略者に価値も知らない者共めと憤慨したものだが、おかげで今も手元にあるわけだ。
「ワシがその男の相手をする。もしワシに何かあった場合はお主らが女子供を連れて街へ逃げろ、いいな」
「村長、あんたが元冒険者なのはみんな知ってるが、なにも一人で戦うこたぁないだろう」
「そうだそうだ。俺らだって束になれば大剣を持った奴でも追い返せるはずだっ」
「アンタ一人で抱える問題じゃねぇって。村の危機は全員で立ち向かうべきだ!」
以前なら何か問題があればよそよそしくザザンに押しつける形が多かったが、先にあった病気の件で村人全員が一致団結するようになっていた。
村長のザザンにとって嬉しいことだが、それとこれとは話が別だ。
村人と冒険者の差を例えるなら、街で生活している一般人を戦闘訓練がされている兵士と手合わせをさせるようなもの。
それも相手が殺意を明確に示している状況で、人を殺した経験もない村の者を立ち向かわせるわけにはいかない。
「無駄に死人を出すわけにいくまい」
ザザンのその言葉に数人が項垂れる。
「……こんな時、あの人がいたら」
一人の口から呟かれた言葉に全員が思い浮かべた人物がいた。しかし、いない者に頼ってもしかたがない。
その時、勢いよく扉が開かれ、小さな影が入ってきた。
「遅れてごめんなさいっ」
男達が意気消沈しているところへ息を切らせて飛び込んできたのは、ペーターだった。
「ペーター、お前は女子供を避難させるように言っただろう」
「大丈夫、女子供は避難させたから。それにおれも大人だし、少しでも戦力になればと思って」
後ろにいた若い男が叱るが、ペーターは怯まずに答えた。その手には錆びた剣を握りしめており、黒塗りの短刀はどうしたのかとよく見れば胸元にそれらしい膨らみがあった。
しかし、大半の男達はペーターを子供とみなし女子供の避難をさせる名目で一緒に逃がすつもりだった。それだけペーターは、まだ大人と言えるほど体が育っていないのだ。
ましてや戦闘になる可能性もあるとなれば、ひ弱な存在として悪目立ちする上に一番に狙われる可能性が高い。
「だがなペーター。お前はそのまま女子供の護衛として……」
「遅くなりましたっ!」
「なっ!?」
次いで扉が開き入ってきたのは、弓矢を背負ったペーターの母親だった。
「何をしているんだマーリーッ!」
「冒険者風の男が襲撃してきたって聞いたから準備万端にしてきたのよ!」
「そうではない!お前は他の女子供と共に避難をっ」
「馬鹿言わないで、剣は使えないけど射手としてなら現役よ私!」
「待て待て。お前に何かあった時、ワシはトーマになんと言って詫びればいいのか……」
「詫びなんて結構!これでも元冒険者よ。それに鉄の侵略者が来た時は、トーマに弓を持たせてもらえなかったんだもの。それに戦える人材として出撃するなら今でしょ!」
いきなり始まったザザンと自分の母親の舌戦にポカンとするペーターと、周囲の男達。
ペーターの母親であるマーリーは、ついこの間まで病に臥せっていた人物と思えないほどの気迫があり、「あくまで後方支援よ、それより前には出ない」そう言って聞かなかった。
口論している場合ではないと一刻を争う事態にザザンも容認し、作戦をすぐに練る。
主戦力として戦闘経験者としてザザンが前に出て、後方支援はマーリーに、そして大剣の男を倒した後で取り押さえるのは村人全員でと役割を決めた。
ザザンが使えなくなった場合はマーリーが牽制しつつ、村人達を避難させる作戦だ。
いくら戦闘経験者とはいえ、ブランクは否めない。それも踏まえての作戦。
最初に報せを持ってきた男の案内で全員が村の入り口近くへ来ると、大剣の男は斬り伏せた者を蹴りつけているところだった。
見知った村の者がピクリとも動かなくなっている状況に全員が憤りを露わにする。
もっと奥。入り口近くで倒れ伏している者の姿も見えた。
幼子とその母親らしき者だ。この分では入り口で見張りに立っていた者も同じ運命だろうと推測がつく。
奥歯を噛みしめるザザン。他の村人達も「ひでぇ」「くそがっ!」と悪態をつき、錆びついた剣を握る手に力がこもる。
集まったザザン達を見た大剣を持った男が、足元に転がる人を虫でも踏みつけるようにして向かってくるのがわかった。
村人達が緊迫しながら待ち構える中、数十メートル手前で立ち止まった男はザザンの装備を値踏みするように見て顔を顰めた。
「ああ?なんだぁ、この頃は厄日なのか。俺様が持つべき装備をなんで小汚い奴が着てんだよ」
見下した態度を隠そうともしない男に、内心でザザンは最低評価をつけた。本来なら冒険者の端くれとしても名乗ってほしくない輩だ。
確かにこの世界でも冒険者同士の妬みなどはあるが、装備は実力があればあるほどそれに見合た物を着るのが普通。
ギルドの難しい要求に応えるためには、それなりの準備や装備が必要になるのだ。実力があるからこその攻撃力・防御力の優れた装備を整えられる。
それなのに勘違いも甚だしい一部の者は、何でも良い品を装備すれば一級という考えを持つ馬鹿が多い。もちろん、誰かに寄生してランクをあげるという実力を伴わない者もいるが。
昔、ザザン達が冒険者だった頃にもそういった輩はいた。
「何をしに来た……と聞くまでもないな。何の目的で村の者に手をかけた」
「おいおい、口の利き方がなってないな。まぁいい。その装備を俺様に寄越してさっさと自分の入る墓穴を掘れ、最後に土くらいはかけてやる」
「話にならんな。言葉も通じん獣か」
ザザンの言葉に握っていた大剣を担ぎなおした男は、「くくっ」と笑うと狂気じみた笑みを浮かべて斬りつけてきた。
瞬時に竜の牙でできた剣を抜き放ち受け流すザザン。
この間、一秒ほど。
何が起きたか理解する間もない村の男達は、ただただいきなり始まった戦闘にどよめき見守ることしかできないでいた。
大剣を振り回す男の腕力にも圧倒されながら、いつもは静かで暴力沙汰などとは無縁に見えるザザンが容易く相手の攻撃を捌き、斬り込んでいく姿に息を飲む。
村の男達は自分には決して敵わない力の差を見せつけられて、最初にザザンが言った言葉をいま正しく理解し始めた。――――無駄に死人を出す、という意味を。
「さっさと死ねジジイがっ!」
苛つきを隠そうともせず、大剣を振り回している男――――ベルゼは吠えた。
装備は良いが見た目はくたびれたオッサンと見くびってかかってみれば、思いもよらない強敵であったことに焦っていた。
平民は貴族に平伏すためにいる。それはすなわちベルゼに頭を垂れ、王のように扱う対応をするべき存在のはずだ。
なのにどうだ、近頃は反発する輩が増えてきている。
新人然り、目の前の村人然りだ。
虫けらのように扱われて当然の存在が、ベルゼを苛立たせる。
ヒュンッ。
思考の海に落ちかけていた時、耳の側で風を切る音が聞こえたと思うと同時に、痛みがベルゼの肩に走った。
驚きの方が大きく、自分の肩を見ると鎧の隙間から一本の矢が突き立っている。
視線を矢が飛んできたと思われるその先にやると、黒髪の女が弓矢を構えているのが見え、凛とした強い眼差しがベルゼを射抜いていた。
(女ごときが俺様に傷を負わせただと!?)
怒りに目の前が赤く染まりかけた時、がくりと体が崩れ落ちる。
ザザンが隙を突き、体重を支える軸足を払いのけて追撃に頭に一撃食らわせ昏倒させた。
倒れたベルゼが動かなくなったことで、村人達にワッと歓声が起こった。
「すげー強いな村長!」
「さすが元特A級って聞いただけはある!」
「元村長が婿入り認めるわけだぜ!」
「おいおい、まだ気を抜かんでくれ。こいつは気絶してるだけだ。さっさと縛り上げて街の役人に引き渡すぞ」
今までにない熱気に包まれた村の男達のキラキラした視線に苦笑しながらザザンは指示を出す。
数人で気絶したベルゼを縛りはじめる中、弓矢を背負いなおして歩み寄ってきたマーリーが「特A級の腕は衰えてないわね」と笑う。
特A級とは以前あったギルド組織が作ったクラスで、今現在のクラスに当てはめるならばS級と呼ばれる者のクラスだ。
そんなのは昔取った杵柄だ、とザザンは苦笑した。現に体の衰えはあって昔のように体が動かないと痛感している。
そんな大人達の輪から取り残されたように、ぽつんと外にいたのはペーターだ。
村長のザザンや母親の知らない一面を見たということもあるが、強い者との差をまざまざと見せられた衝撃も大きい。
斬り込まれて即座に対応し冷静に攻撃をかわして一撃を叩き込んだザザン、二人の大人が目にもとまらぬ速さで斬り合う中で迷いなく敵に矢を放つことのできる腕前の母親マーリー。
自分がいかにちっぽけな世界で頑張っていると言っていたのか、この騒ぎで戦力になりたいなどとどれだけ世間知らずな発言をしたのか恥ずかしくて俯いている。
もちろん、ザザンや母親のマーリー、周囲の男達が頼るほどの実力を備えているなどとは思っていないし、力になりたいという気持ちから申し出たことだったが、何の役にも立てなかったと子供じみた理由から羞恥心がわく。
そんな時、ぎゅっと胸元にしまっている行光を握り締める。
「すぐ師匠みたいになれるわけじゃない」そういってペーターは恥ずかしがることじゃないと自分に言い聞かせて深呼吸し、気持ちを静める。
さて、と気持ちを切り替えて村の女子供にもう安全だと知らせに行こうと振り返った時、妹の律がちょこんと近くの家の陰から顔を出していたのが見えた。
「なっ、バカ律!みんなと一緒に隠れてろって言っただろ」
「だって、めいが来てないんだもん。りつ、めいを探しに来たの」
「……っ!」
怒られながらもペーターの側に来た律の言葉に、周囲の男達が一瞬にして沈黙する。
村の子供達は少ない。隣近所といわず村全体が知り合いなのだ。だとすれば、犠牲になった子供はどこの子供かはわかる。
「じゃ、入り口で一緒に斬られているのはメリッサか」と一人がこぼすと、側にいた男が息を飲んで駆け出す。斬られた女性と子供の夫だった。しばらくして「うわああああ!」と悲痛な叫びが村の入り口に響いた。
「おにいちゃん、おじさんどうしたの?」
子供なりに異常を感じ取り、不安気にペーターの服の裾を掴む律。
事実を伝えることはできないと、兄としてペーターは律を連れて村の奥に戻る選択肢以外持っていなかった。
「母ちゃん、おれ律を連れてくよ」
「そうしてちょうだい」
ペーターに手を引かれた律が振り返りながら村の奥へと歩き出し、被害はあったものの、その場にいる全員が少しばかり気を抜いた刹那。
「ちょーっといいか?」
不意に聞こえた若い青年の声。
全員が聞いたことのない声に反応して視線や顔を自然とやる。いつの間にいたのか、ザザンの側に漆黒の黒甲冑を着た男が立っていた。
「とりあえず、装備がいいし、お前が賊の頭目ってことでOK?」
「ワシが、この村の村長ではあるが……」
いきなりのことに思わずザザンも動けず答えるだけの反応だが、黒甲冑の男は宝を見つけた子供のような無邪気な笑顔を兜の間から見せた。
殺気もなにもない。
ただ見つかってよかったという、疲れが滲んだ笑み。
だからザザンも反応ができなかった。
知り合いの肩に手を置く気軽さで、ザザンの左肩から腰にかけて剣が斬り下ろされた。
「――――ザザンッ!」
一瞬にして攻撃体勢に移れたのはマーリーだけだった。
ザザンが反応できないほどの速度で近寄られ攻撃された事実が脳に伝わる前に、息をするように番えた鏃を黒甲冑の男に放つ。
すぐに次の矢を構えた刹那、ザザンの横にいたはずの男は目の前まで迫っていた。
元冒険者の勘から体を反らして相手の軌跡の外へ逃げたが、手にしていた弓矢は粉々になり衝撃がマーリーを襲う。
「ガフッ!」
次いで腹に重い蹴りが炸裂――――防御をとる暇もなくあっけなく地面に転がされた。
マーリーが転がされて数秒だろうか、事態を理解した村の男達が怒りを露わに黒甲冑の男にかかっていく。
だが、錆びた剣で敵う相手ではない。
それでなくとも、さっきの赤い甲冑の男より数段上のレベルだ。
痛みで視界がぼやけ息が詰まったまま、マーリーは村が五年前のようになっていく一部始終を見ることになる。
† † † † † †
「賊っていうから気合入れなおしたのに、なんだこのチョロさ」
不満げに呟いたのは、黒甲冑の男。
白銀に煌めく剣を担いで、肩を竦めている。
不満を露にする男の周りには、無残にも横たわる村人の姿があるだけだ。
全員が一斉に男へかかったが剣の一振りで最初の数人が薙ぎ払われ、次いで男の周り一周を光の線が駆け抜けたと思った時には残りの者が大地に伏しており、一番外側にいた二、三人だけが無傷で震えながら立っている状況となった。
斬られた者達は呻いたり必死に息をしていて辛うじて生きているとわかるが、それも風前の灯火だろう。
歴然とした力の差を目の前に、ペーターも目を見開いたまま状況を見ているしかできないでいた。
「こんな弱い賊にやられるって、A級ってどんだけ弱いんだよ。おい、オッサン」
縛られて転がっているベルゼに呆れた視線を投げながら、黒甲冑の男はその頭を蹴って起こした。
口の端から涎をこぼしながら覚醒したベルゼは、寝ぼけ眼といった視線で周囲を見回し状況を自分優位と把握すると、黒甲冑の男に「さっさと縄を切れ」と命じてきた。
黒甲冑の男からは「はあ?」と舐め切った声と表情で見下されているにも関わらず、「手柄を立たせてやったんだ」「俺様が囮になってやったんだぞ」と強者であろうといつもの横柄な態度でベルゼが喚いている。
と、そこに追いついてきた聖騎士と射手と魔法使いが状況を見て愕然とする。
「あ、ああ……やっちゃった」
「この馬鹿!状況考えずに飛び込んでなんてことしてんだよ!」
「ちょっと!いくらなんでも殺し過ぎだって!」
「お前らだってさっさと依頼達成したいだろう。手間省いたんだよ、俺は!」
仲間割れとも思えなくはない口論が始まる。
ふと、そのうちの一人。
聖騎士の視線がペーターに向いた。
恐怖と共にペーターは逃げたい気持ちが込み上げたが、側にいる律が震えながらしがみ付いてきたことで踏みとどまる。
倒れ伏した村人達を捨てて逃げることはできたが、みんなを守ると刀を手にする覚悟を決めた誓いを自分から破ることはしたくなかった。
「律、みんなのところに戻って街へ逃げるように伝えて」
「にいちゃんと、かあちゃんは……?」
「あとで行くから」
視線は目の前の惨劇を起こした者達から離さず、後ろ手でしがみ付く律をできるだけ優しく逃げるように促す。
そうでも言わないと律は行かないだろう。この場にいたら殺されてしまうのは確実だとペーターは判断した。返事は聞こえなかったが、躊躇いながら後方へ離れていく足音に内心で安堵する。
その時、意を決した聖騎士の甲冑の男が声をかけてきた。
「あ、あのさ、俺達は」
「人殺しがっ、お前ら鉄の侵略者の手先かっ!」
五年前の惨劇に似た状況にペーターは思わず、お守り代わりにと懐に入れておいた短刀の柄を握りしめて叫んでいた。
あの時もトーマの角を差し出したのに奴隷にされるのは嫌だと抵抗した村人数人が同じように殺された。武装は違うが、突然の殺戮劇は同じだ。
「違うっていうか、鉄の侵略者って知らないし。あのさ、ごめんちょっと手違いなんだ」
戸惑ったように弁解を始めた聖騎士の男に、何が手違いなものかとペーターの心に怒りが湧く。
助けに現れたならまだしも、赤い甲冑の男と同じことをしてきたのだ。ペーターだけでなく村の誰もが納得いかないし、ごめんで済まされる話ではない。
そんな心情を慮ることもできないのか、聖騎士に次いで射手と魔法使いも口を開く。
「本当に悪いと思ってる。そこにいるA級が特攻したあと、ロイヤード……ああ、この黒い装備の奴な、が話も聞かずに突撃してった」
「とりあえず、回復薬と蘇生薬を配って弁償ってことで。僕は魔法職だけど攻撃寄りに育てちゃってて、回復呪文はパーティー用のしか使えないし、パーティー以外でも個別に使えるヒールよりアイテムを使う方が全員回復させるのは早いしさ」
「蘇生、薬?なに言ってんだ、あんたら……」
どこか天気の話をするような気軽さで弁償すると言ってくる目の前のパーティーに、ペーターは困惑する。
これだけの状態と状況であるにも関わらず、誰も焦る素振りすら見せないのが不気味でしょうがない。
借りていた道具を壊してしまって直すから許してくれという雰囲気だ。
人をモノとしか見ていない。
それがわかった瞬間、ペーターにとって目の前の人物達の方が危険な存在に映った。
「弁償なんて馬鹿なこと言ってんじゃねーぞ!」
怒りを滲ませた声に動ける者全員の視線が注がれた。ベルゼだ。
一緒に来た新人達も厄介なことになるとわかっていたから、散々喚いても誰も助けないでいたのに自分で縄を切って抜け出したらしい。
「こいつらは賊なんだよ。さっさと殲滅して帰るぞ新人共!」
「ちょっとベルゼさん、横暴ですよ」
「そうだって。ここは『元奴隷の隠れ里』、さっきソータの鑑定で人間は『村人』って出たんだよ。アンタの言う賊じゃないって言ってんだ」
「おかしいと思ったんだよね。こんな閑静な村が賊の住処ってのがさ」
「ええっ!ちょっと、俺が突撃する前になんで言ってくれねーの!?」
仲間達の言葉に慌てる黒甲冑ことロイヤード。
そんな彼に仲間達は辛辣だった。
「言う前にロイが突撃してったんだろ」と射手の青年。
「そうだよ、兄さんが思い込みでスキル発動して突撃したのが悪い」と魔法使いの少年。
「ロイの問題行動は後で反省会開くよ。とにかく、弁償ってことで事を収めたいんだ」とペーターに再度話しかける聖騎士の男。
好き勝手に話を始める新人達を睨みながらベルゼは、「なら俺様としても弁償という手で痛み分けだ」と言い出す。
痛み分け?何を言っている?とその場の全員が首を傾げた。
「貴族である俺様への暴行をなかったことにするんだ。それなりの賠償を支払うならなかったことにしてやらないでもないがなぁ」
「アンタ馬鹿か。アンタの勘違いでこっちまで迷惑被ってんだけど」
「さっきから……おい舐めるなよ、新人が。俺様が誰だか知らないわけじゃないだろうがよ」
「知らないけど?」
ロイヤードと魔法使いの少年がポカンとした顔で答えた。
言われた本人であるベルゼは呆れたように「これだから新人は」と手で口を覆う。が、その口元が意味深に吊りあがる。
小さく「出番だ」と呟いた刹那、ベルゼから黒い靄のようなものが出たと思うと、それは人の形を成して目の前に降り立った。
白目で焦点が合わない不気味な顔、上半身裸の赤黒い皮膚に浮きだった血管、ボロボロのズボンを履いており、爪は伸びきり弧を描きかけていて手には真っ黒な大鎌という禍々しい姿。
上位から数えた方が早い、黒魔術で召喚される強力な魔人の一体だった。
「はぁっ!?反則だろソレ!!」
ベルゼが使ったのは、魔人召喚の魔石。
他人の生命を捧げることで魔人の召喚が可能となるもので捧げた生命の数とレベルにより、強力な魔人を召喚できるPAO初期のアイテム。
誰かをPKしなければいけないので使い勝手が悪いと不評だった魔石であり、五年前にアップデートで消去されたはずのものだ。
とはいえ、高レベルPCを仕留めれば強力な魔人を従えることができるし、ちまちまNPCを狩って召喚ポイントを貯めればそれなりの強い魔人召喚までできる。
だからといって、ハタからみればベルゼがそんなものを召還できるほどのレベルの者には見えなかった。ロイヤードが叫んだのも無理はないことだ。
ベルゼの「殺れ」という短い命令に魔人は歓喜したように咆哮し、目の前の獲物に襲いかかる。
「ちょっ、不味い!ウェンツ、聖騎士までレベル上げたなら対応できる!?」
「無茶言わないでくれ、ソータ。俺一人でなんとかできるレベルの魔人じゃないよ!」
「仕方ねぇ。俺がヘイト稼いで逃げながら引きつけるから隙をついてロイが大技で攻撃、ソータは味方の補助と回復担当、ウェンツはスキル発動で全員に聖属性の攻撃と防御を付与して、盾役に専念。できたら攻撃に手を回してくれ!」
「上位魔人だ。いくら素早さが俺らの中でダントツって言っても射手は戦士系より防御力低いんだぞ、無理だエレン!」
一瞬にしてパニックになる新人らを横目に大剣を手にしたベルゼは「これを使う羽目になるとはなぁ」と一人ごちながら、のそりと起きあがると先ほどまでウェンツと呼ばれた聖騎士の男が喋っていたペーターに目を向けた。
その視線はペーターの胸元で止まる。
「そこの餓鬼。お前が手に握ってるやつはなんだ?……へぇ、黒塗りの刀か。意外に上等な物を持ってるな、平民の癖によぉ。――――おい、ソレを俺様によこせ」
「……い、いやだ」
「あんだと?俺様も疲れてるのかもしれないなぁ、嫌だと聞こえたんだが?」
「そうだ!嫌だと言ったんだ!」
ベルゼの眼光に竦みそうになりながらも、ペーターは短刀を守るように隠す。
そんな態度が気に食わないと大剣を担ぎ威圧しながらペーターに近づいていくベルゼは、ペーターからすれば壁が迫ってくるように見える。
体が委縮して固まっていると、ニヤニヤしながら担いでいた大剣を地面へ振り下ろし深く抉る。
「こーんな剣でぶった斬ったらお前の体なんて、どうなっちまうか想像つくよなぁ?俺様の言うことを聞いたらいいことがあると思うんだけどよぉ」
「こ、これは、師匠からもらった大切な物なんだ!お前みたいな奴に渡すわけないだろっ!」
震えながらも言い返すペーターの言葉に、表情を失くしてスッと目を細めたベルゼは「そうか」と平坦な声で呟き大剣を担ぎなおす。
ベルゼが今装備している赤竜の鎧は最強と言っても過言ではない防御力を誇り、赤竜以上の上位竜の素材からできた武器でない限り傷がつかないと言われる品だ。
これを奪う時も冒険者だった祖父から受け継いだものだと新人が強がって渡さなかったため、鎧に覆われていない露出していた顎をまず砕き、押さえつけた上で左足を潰し、ジワジワと右手の指を一つ一つ折り始めたところで新人が降参して差し出してきた。
痛い目を見れば誰もが平伏し差し出す。命乞いをする。
「じゃあ、死ね」
今回もそうなるのが確定した未来だと、数歩前まで迫ったベルゼが躊躇いもなく大剣を振り下ろした。
ペーターは逃げることもできずに、ただその鉄の塊が振り下ろされるのを見ていた時。
――――自衛のために使え。
空耳。
でも、師匠の声が聞こえた気がして、ペーターは握っていた短刀を無意識に鞘から引き抜いた。
そこから我武者羅だった。
戦闘経験など皆無のペーターには、どうすればいいかなど頭で考える暇などない。
ただ教えられた動きのまま体を少し横へずらし、目の前に迫った銀の塊を受け流すことに集中した。
ギャリギャリーッと耳の脇を鉄が擦れながら通り過ぎる嫌な音を聞きながら、渾身の力で重いソレをガキンッと押し返す。
「なっ!?餓鬼がっ、俺様の剣を弾いただとっ!?」
「これは師匠直伝だっ、『居合い斬り』ぃぃいーっ!!」
ペーターが短刀を振り切り、シュッ、と風を斬る音。
しかし、剣先が届かないと見たベルゼは一歩後退し、「届かねーぞ餓鬼がっ」と笑った。
だが。
笑った腹に痛みが走り、ベルゼは自身の体を見て驚愕することになる。
自慢の鎧が、強度を誇る赤竜の鎧が――――右半分、正面から脇腹までパクリと割れていたのだ。
傷を目で知覚すると痛みはさらに増した。
「がぁあああっー!くそがっ、平民風情がっゴミ屑がっ、俺様に手傷を負わせただとぉぉおおおおっ!?」
「くそっもう一発、『居合いぎ――――』ッ!?」
驚愕と怒りの声をあげるベルゼを怯んだと判断したペーターがもう一撃斬り込もうとしたが、目に留まらぬ速さで短刀を握る手がそれよりも大きな手に握り込まれ、一瞬にして体ごと持ち上げられた。
ゴッ!
ペーターは突然きた顔への衝撃にくらりとして鼻に激痛が走り息が止まる。大剣の柄頭でベルゼがペーターの顔面を打ったのだ。
鉄の塊で殴られる痛みに悶え、息苦しさで短刀を手放してしまい地面へ転がる。
「舐めるなよ、餓鬼がっ。簡単に殺してやらねぇぞ。じっくりと嬲り殺してやる!」
腐っても冒険者ギルドに身を置いて戦闘を何度も経験しているベルゼが、子供が刃物を振り回した程度で怯むわけもない。
転がるペーターへ顔を真っ赤にして怒鳴ると、ベルゼは己の手に収まった黒塗りの短刀に目をやる。
赤竜の鎧を貫通し傷つけるほどの一品。それが己の物になる。そう思えば腹の痛みも少しは和らぐ気がした。
後方を見れば魔人相手に未だ悪戦苦闘する新人達がいる。あちらは後回しでいいと判断し、ついでにペーターの懐にまだあるはずの鞘も頂こうと屈んだ。
「だめっ!それは、きっかからのなのー!」
「いでででっ!?」
幼い声と共にベルゼが短刀を持つ手に噛みついてきたのは、さっき逃がしたはずの律だった。
まさか死角から小さな子供が噛みついてくるなどと思ってもいなかったのはベルゼだけでなく、その姿を認めたペーターも驚く。
短刀を持つベルゼの手が律の飛び掛かれる高さにあったこと、そして小さな口では小指と薬指までしか力一杯噛みつけなかった。
ベルゼの方としては噛みつかれた部分が悪く、手袋や小手などのガードもないため、小指と薬指を突然噛まれたことで思わず短刀を放した。
一方の律は噛みつく時にしっかりと短刀の柄を握っていたため、柄が放されれば重力のまま尻もちをついた反動で、コロンと後ろに倒れる。
短刀はベルゼの手からは離れたが、事態は好転したわけではない。
「ケフッ、なん……どぅ……にへろ……りふぅっ……!」
なんで戻ってきた。
どうして逃げなかった。
逃げろ、律。
痛みに悶えて息が吸えず、まともに声が出せないペーターは、地面に転がったまま何もできない。
律は奪われそうになった短刀が自分の手の中にあることに安堵した様子で、ホッとしている。見ていた者からしたら「何をやってるんだ馬鹿!」と、罵声を飛ばしたくなる状況だ。
「律ッ!逃げなさいっ!!」
数十メートル離れたところから、蹴られたダメージでまだ動けないマーリーが叫ぶ。
母親の声にようやく思考が戻った律は今の状況を整理するためか、抜き身の短刀を持ったままオロオロと視線を母親と兄と行き来させる。
子供を守ろうと「逃げなさいっ!」と悲鳴に近い声で叫び地面を這う母親と、苦し気に鼻を押さえて蹲っている兄を置いて逃げるという考えは、律から抜けていた。
それが命取りだ。
「この餓鬼がぁぁあああっ!」
視界に入れていなかった方から伸びた大きな手が迫り、律の顔に恐怖が走る。
怒り心頭のベルゼにがっしりと頭を掴まれ、視界が完全に遮られた状態の律は短刀を握り締め、震えることしかできなかった。
「いやぁあっ、やめてぇぇえええええっ!!!」
マーリーの金切り声ともいえる悲鳴の中で、冷たい何ががぶつかって腹の中を通っていく衝撃と痛みだけはわかったが、そこからプツリと律の意識は途絶えた。
小さな体を貫通した大剣がズルリと引き抜かれていく光景を、ペーターは目を見開いてみていることしかできなかった。
何に対する怒りなのか悲しみなのか、ぐるぐると渦巻く感情に涙が溢れて止まらない。
「手間ぁかけさせやがって……あ、くそっ」
ベルゼは面倒そうに律の手から今一度奪った短刀を見て、悪態をついた。
律が守ろうとした短刀は、持ち上げた途端にポキリと持ち手の根元から折れて粉々になってしまった。大剣を受け止めた衝撃に負けたのかもしれない。
ベルゼは「売れもしねぇ」と興味を失い、柄だけになった短刀を投げ捨てる。
マーリーは声も出せず、地面の土を抉るように握り締め泣いていた。
短刀もベルゼのことも、どうでもいい。痛みなど忘れてペーターは、地面に転がったままの妹の元へ必死に這いよる。
「りふ、りふりふ、りふっ……!」名前を呼び抱きしめて何度も頭を擦りつけるが、律は体の力が抜けきっていて血が滲んだ服を着ていなければ眠っているように見える。
「ちょっ、まずい!またやってる」
「コラッいい加減にしろよ、オッサン!こっちまでパーティーでのPKカウントされるんだぞっ!」
魔人に苦戦してる者達が煩い。その言葉からも自分達の不利益しか考えてないのはわかる。
「ったく、煩せぇな。ま、意外に手間取ったが、もう目ぼしい物もねぇみたいだし。村の女数人捕まえて遊んでから焼き払うか」
あまりの出来事に考えることを放棄しかけたペーターだったが、ベルゼの気軽な言葉に思考が戻される。
「なんれ、こんな……むはのみんなが、ないしはってんだよっ!」
「ああ?まあ、冥途の土産ってのに聞かせてやるか。お前らは大人しく差し出せばいい物をちょっと値が張る物だからって、取り返そうと高貴な人物を追いかけ回したんだ。その罰だな」
罰、という言葉に何のことか理解できなかった。
次第に何のことを言っているのか、じわじわ浸透してくるとペーターの怒りが再燃する。
あれは村の薬だった。盗られてしまえば生死に関わるほどのものだった。だから追いかけた。それだけだ。
「おれはちに、しねっていふのかよ!」
「そうだ。お前らは生かしてもらっている貴族に対して差し出すんだよ。物も命も、全て!」
勝者の笑みを浮かべながら、ベルゼから振り下ろされる大剣がスローモーションで見える。
鼻を潰されて息ができない。血だらけの妹を抱きしめながら必死にそれでも何かに縋って生きようとするが、信仰する神さえいない。
その中でペーターが唯一、心の中で縋れる存在を叫んでいた。
「……ずげて……、じじょうっ、だずげでっ!」
「ハハハァッ!誰が虫けらを助けにくるんだよぉっ」
鼻が潰れ前歯もいくつか折れた口から涙声のペーターの叫びは、ベルゼにとって己の力が誰よりも強く圧倒的だと感じさせる最高の瞬間だった。
――――そう、最高の瞬間のはずだった。
ガキンッ。
子供の肉を裂きその感触が伝わるはずだった大剣に、それとは違う感触がした。
「あん?」
おかしい、そうした疑問が最初に浮かぶほど、ベルゼには見えていなかった。
ただ銀の光が横切ったくらいにしか視覚に感知していなかった。
後ろで騒いでいた新人達も静かになっている。再度、力を込めても木に剣が食い込んだ時のようにびくともしない。
目の前の餓鬼まで剣先はまだ届いていないのになぜだ、と疑問を声にするよりも先に銀の光が目の端に映った。
視線を下ろすと、ベルゼは一瞬にして体中の筋肉が硬直する。
それもそのはず――――。
「……てめぇ、うちの弟子になにしてやがる?」
表情を憤怒に染めた銀髪の鬼人族が、ベルゼの剣を受け止めていた。
本当は奇襲される話は2話に分けようとしたんですが、んなことしたら次回の投稿がまた半年とか1年後とかになりそうなので、ある程度削りました。