第1話
やってしまった感満載。何番煎じの話だろうか……。
MMOの知識なんてほとんどないですが、書きたいままに書いていこうと思います。
息抜き程度なので温かい目で見てやってください。
※読みやすいように改稿しています。(2025/810)
夜が明けかけた草原に、対峙するふたつの影があった。
ひとつは巨大な竜を従えた騎士。
上位竜の背にまたがり、重厚なフルプレートに身を包んだその姿は、まさに“竜騎士”の名に相応しい。
警戒の唸りをあげる竜の首筋を撫でて宥めながら、彼は片手に長槍を携え、口元にかすかな笑みを浮かべていた。
対するは、血に濡れた衣服を纏う一人の青年。
片刃の武器を構え、体は傷だらけで今にも倒れそうだったが、目だけは獣のように鋭く、まっすぐに竜騎士を見据えていた。
やがて、沈黙が一拍――その均衡を破る。
竜がコウッと息を吸い込むと同時に、青年が地面を砕いて駆け出した。
次の瞬間、竜の喉元へと滑り込んだ刃が、深々と肉を抉る。
血が弧を描いて舞い、竜の悲鳴が空気を震わせた。
「グォォオオオオオオオッ!」
断末魔の咆哮とともに、竜は轟音を立てて大地に倒れる。
竜騎士はその下敷きにならぬよう俊敏に身を翻し、すかさず呪文を唱え始めた。
「――させるかぁぁああああああっ!!」
それを見逃す青年ではなかった。
踏み込み、武器を振り下ろし、返して薙ぎ、さらに突く。
刃の軌道は目にも留まらぬ速さで、ひと息に十八連撃。
五、六、七――竜騎士の槍が応じるも、受けきれぬ。
地面には次々とひびが走り、足元が割れていく。
そして――
「これで、ラストォォオオオオッ!」
十八撃目。
遂にその一閃が鎧を貫き、竜騎士の腹を突き抜けた。
ぐるりと刃を返し、斬り上げた。
「ぐぁああああああっ!」
竜騎士は膝から崩れ落ち、重々しく地に伏す。
その体から、淡く光る小さな魂の球体――“魂魄”が浮かび上がり、空へと舞い昇った。
やがて、彼の姿はまるで幻だったかのように消えた。
息を切らす青年は、地に膝をつき、武器を杖代わりにようやく立つ。
目を巡らせて気づく――いつの間にか、竜の巨体すら姿を消していた。
草は焼け、地面は抉れ、あたり一帯はまるで戦場の跡だった。
その惨状に、青年は思わず自嘲する。
「……酷ぇな」
そのときだった。
まるで戦いの終わりを見届けていたかのように、朝日が顔を出す。
青年の影が長く伸び、黒く大地に縫い止められた。
静寂の中、不意に歌声が聞こえてきた。
それは、どこか懐かしく、けれど意味のわからない異国の言葉。
穏やかに、優しく、大地に注ぎ込まれる。
顔を上げると、朝日の光とは異なる柔らかな光が、真上から彼に降り注いでいた。
その中心に、ひとりの存在が立っていた。
長い銀髪に、中性的な美貌。緑の瞳が空を見上げている。
灰色の肌に、額にはまっすぐ伸びた一本の黒い角。こめかみからは左右対称にねじれた角が天へと向かう――鬼人族。
白地に薔薇と牡丹を描いた着物に、紫黒へと染まる袴。
振袖袴という異国の装いも、彼の妖艶な美貌にはよく似合っていた。
その右手には、一振りの刀。
侍と呼ばれる者たちが手にしたという、禍々しくも気品ある鈍色の刃。
焦土の上、天から降る祝福のような光に包まれたその姿は、まるで絵画のように神々しかった。
青年は、空いた手を見つめ、ぎゅっと拳を握った。
刹那。
「ぃよっしゃあああああああ! 竜騎士単独撃破クエスト達成クリアだーっ!!」
……叫んだ。
一転して、彼は飛び跳ね、小躍りを始める。
「ヤッタ、ヤッタ! デ~キタ、デキタァッ!」
さっきまでの荘厳な雰囲気が台無しだ。
草原に響くその声が、誰もいない空へ吸い込まれていった。




