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苦手な方はご注意ください。

短編ごった煮

死神と笑み

作者: 白樺 小人


 それは、わらった



 戦場に立つ

 むせ返るほどの鉄と錆の臭い

 空を見上げ男は思った


 ああ、まだ生きているのか


 死んだと思うような場面は幾度もあった

 だがまだ死んでいない

 視線を下に落とすと手に持った剣は血に濡れている

 そこいらに散らばる体は、ピクリとも動かない

 当然だ

 男が自らの手で命を刈り取ったのだから

 皮肉な事に、空は大地と同じく深紅に染め上げられている


 また一人、生き残ったのか


 一人、哂った

 自らの境遇を嘲るが如く

 視線を周囲に巡らせるが、そこには共に進んでいたはずの仲間達の姿も無い

 戦場を駆け巡るたびに、彼はただ一人生き残る

 それゆえにつけられた字は


 ――死神


 敵も味方もなく、共に進む者達を死へと導くもの

 等しく命を刈り取る無情な存在

 何故、と問う言葉の空しさを知ったのはいつだっただろうか

 どうして、と問いかける前に投げかけられるのは罵倒の声


 何故お前だけか


 何故あなただけが


 貴様のせいで、お前のせいで


 あなたがいたから、お前があいつらを



 ――殺したんだ



 乞われるままに戦場に立っただけだった

 最初の記憶もまた戦場だ

 気付けば手に剣持ち、同じように深紅に染まる空を見上げていた

 幾度となく立ち続けた戦場で

 幾度となく一人帰った

 帰るたびに増えていったのは


 恐怖ゆえに去るもの


 罵るもの


 そして憎悪するもの


 命を狙われた事もあった

 だが逆に命を刈り取られるに終わった

 男は一人、わらった




 時を経て

 時代は平和を取り戻す

 一人の王が立ち

 国を平定したのがきっかけ

 これ以後大きな戦は起こる事はなく

 人々は心安らかに過ごせる日々を思い笑った




 男は一人

 人々の笑いあう声を聞いた瞬間


 もう、自由なのだ


 そう思い、青い空を見上げた

 深紅に染まった手と空を見る必要も無い

 戦場に立つ必要も無い

 手に持つ剣を無情に振り下ろし、命を刈り取る必要も無い

 血と錆の臭いに囲まれただ一人立ち尽くす必要も無い

 人々が笑いあう声を背に、男は一人立ち去った


 人々は気付かなかった

 あれほどまでに憎んでいた、恨んでいた、憎悪した相手が去った事を

 罵った相手が何も言わず立ち去った事を

 何も言わず、何も残すことなく静かに去った事を

 人々はそれほどまでに喜んでいた

 長い戦いが終わった事を


 長く暗い時代が終わった事を







 人知れぬ深い森の奥


 男は一人


 静かに瞼を閉じた






 心安らかな笑みを浮かべ


 瞼を閉じた



男の生死は、想像の自由にお任せで。


実質この文を書きあげたのは30分足らず。

衝動のままに書き上げたため、深く考えないままタイトルつけてます。

別に何かいいタイトルあればお願いします。

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