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ただいま迷走中!?  作者: 呪理阿
三月 春休みからもう迷走
8/102

8 新高校生二人組み

「あれ、なっくんだ。また不法侵入したの?」

「人聞きの悪い。『おじゃまします』は言ったからな」

「へー。『おじゃまします』を言って、どっから入ってきたのさ?」

「ベランダ」

 やっぱ不法侵入じゃん。

 忍です。

 岳の姉にして、…………あ、続きが思いつかない。えぇと、この春から高校生になるけどまだ十四歳。四日後に十五歳! わぁ、三月って今日抜いてあと三日?

 まぁ、それはともかく。

 実はあたし等の家、高山家は五年くらい前に中国地方から引越してきました。引越すまではそこで生まれ育ったから、幼馴染もいっぱい居たわけです。その中に、お隣さんだった兄妹とその家族が居ます。

 それが今、不法侵入してリビングに居たなっくん家、海中一家ね。

 で、その海中一家、何故か今もお隣さんなのです。去年、わざわざ隣に引越してきたの。転勤になって引越し先探すのが、偶然家うちの隣が引越した頃だったんだって。偶然それを見つけて……偶然ってすげー。

「で、なっくん、何してんの?」

「眠くて眠くて……」

 眠いからって何で家のソファーに体沈めてんのさ。

 ……なっくんが気持ち良さそうに見えてきた。あたしも座るー。

 ソファーに座る時、肘掛のある一番端っこがいい。隅っこがいい。なんと言うか、安心する。

「好きだなぁ、隅っこ」

「なっくんもこっち来てくっ付いてよー。狭いの好きなの」

「できるか」

 いいじゃん。幼馴染だし。こないだも、鍵忘れて家に入れない上にあきちゃんとふゆくん……なっくんのお母さんとお父さんね。は夜中にならないと帰ってこないからーってことで泊まってったんだし。

「……で、なっくん、なんでうちに居んの?」

「母さんが今、はる叱ってんだーって言ったら分かるよな」

「よっく分かった」

 春はなっくんの妹。ニックネームははーちゃんね。名前は春でも誕生日は秋。でも春夏秋冬をそろえたいがために春になったんだって。秋ちゃんはすでに居るしね。

「はーちゃん、何したの?」

「知らね。とりあえず、室温が急に下がったから逃げてきた」

 ……秋ちゃん、怒ると怖いけどさ。室温下げられるってすごくない?

「あ、そうそう。忍、春休みの宿題ってやったか?」

 高校からの春休みの宿題。英語、数学、国語の薄いワーク一冊ずつ。

「やってるよー。毎日それぞれ二ページずつ、コツコツと」

「忍が!? コツコツ!?」

 これくらいで驚くな! そして『似合わねぇー』とか言いながら笑うな!

 ……このなっくんが笑ってるの、途中で止めるとすごく怒るんだよねぇ……。機嫌が悪くなるだけならともかく、暴力に物言わせて屍にしようとしてくるからね? 引越す前なら80%くらいの確立で返り討ちにできたけど、今じゃ絶対無理だ。体格の差その他諸々で。

 ……あれ?

「ねぇなっくん、女の子に笑いさえぎられたらどうするの?」

「流石に殴りゃしねぇけどな。こめかみグリグリで屍に……できるモンなのか?」

 あたしに聞くな!

 そっか、こめかみグリグリされるのか……。笑ってる途中に聞かなくて良かった。

「それよりさ、宿題貸してくんねぇか? 終わったらでいいからさ」

 ……答えの本、失くしたのね。さすが、中学三年生の一年間で鉛筆一箱と消しゴム十個を失くしただけあるわ。

「ぜったい嫌。あたしのも失くされるもん」

「ぐっ……」

 前科があるからね。言い返せないでしょ。

「大体ね、なっくん!」

「ん?」

 ビシーッと指差そうとしたら、それができるだけの幅があたしとなっくんの間にはありませんでした。……いいや、この手。下ろす。

「あたしとなっくん、学校違うでしょ!」

「…………あぁっ!?」

 本気で忘れてたの!?

 あたしは徒歩十分ちょっとで着く、近所の北水ヶ丘きたみずがおか高校、略して北水きたみず。なっくんは下のほうにある水ヶ丘高校でしょ。こっちは略して水高みずこう

 下のほう、って言うのは、あたし等の住んでるここが山に乗っかる感じで、高めの所にあるから。ふもとの方は下でしょ。下ったところなんだから。

 水高だと帰りに坂を上んなきゃいけないけど、北水だと大した坂は無いんだよね。だからあたしはこっちを受けた。

「うぁー……。『同級生のお隣さん=学校同じ』の方程式がー!」

 いや、なっくん。なっくんが考えてたのは『同級生のお隣さん=宿題の回答を持っている』だと思うよ。

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