7 スーパーでお腹を空かせた友達に合いました
「……あれ、翔」
「あれ? 岳だ。何してんの?」
「…………翔、ここは何処ですか」
スーパーだぞ。
「記憶喪失?」
誰がだ!
岳だ。
近所のスーパーに来たら、そこに翔が居た。
『何してんの?』って、小中学生がスーパー来て買い物以外にすることあるか? 親の買い物に付き添って来て暇する、って事はあるかもしんねぇけどさ。
「岳、頭打ったの? 記憶飛んだ? 俺の事覚えてる?」
最初に『翔』って呼びかけただろうが! 覚えてるわ! ……いやだから、記憶喪失じゃねぇってのに。
「病院行った?」
「しつけぇよ!」
頭をスパン! つまり叩いた。
ムカつくことに、翔の頭は高いところにあるから、正しくは額を叩いたんだけどな!
「痛い」
痛くしてんだよ。でも涙目になるほどの強さじゃねぇだろ。
……コイツ、泣き虫じゃねぇ筈なんだけど。
「こんくらいで泣くなよ。軽くだろ?」
「痛かったよ! かくれんぼしてる押入れの中でうっかり立とうとして思い切り頭ぶつけるより痛かった!」
…………他のたとえは無かったのか?
「とにかく、痛かったんだって!」
「そか。悪かった。元はといえばお前のせいだけどな」
「最後の一言がいらない!」
だってさ、元はといえば翔が記憶小説ネタを引っ張るから、つい『突っ込み』の一撃を加えた訳じゃん。
「で、翔。お前何買いに来たんだ?」
「お母さんにスパゲッティ買って来てって頼まれて。買い忘れたらしいんだ」
「ふーん。でもここの、高くね?」
ちょっと遠いけど、ここより安いところあるのにな。遠いところまで買いに行くのがイヤなのか。
「……今日のお昼ご飯だから早く買って帰らないと……」
「はぁ!? 昼飯まだなのか!?」
もうすぐ三時だぜ!?
「うん……お腹減ったぁー!」
「そらそうだ。でも叫ぶのはやめろよな」
わざわざ口に手まであてがって。ほら、そこのオバちゃんが睨んできた。ほら、そこのお婆ちゃんもじろりって見てきた。
「さっさと買って帰れよ」
「お腹減ったの紛らわすために岳と一緒に帰るよ……」
紛らわせられんのか、そんだけで。
「岳は何買うの?」
「アイス。今日はアイスが安い日だろ」
「……この季節にアイス?」
最近は結構ぽかぽかしてるけどな。
「食いたかったんだよ。悪いか」
「悪くないよ? でも、寒くない? お腹壊さない?」
「俺は寒さには強いの」
暑いのには弱いけどな。
……暑さに強いのと寒さに強いのってどっちが得だ? 暑いのに強い方が得な気がするな。寒いのは着れば何とかなるし。
とりあえずアイスコーナーに移動。
んー、と。どれ買うかな。
とりあえず、割引されてても高いのは無しだな。今日は自分の小遣いだし。母さんが買ってくれるときなら全部の中から選ぶけどなぁ……。
…………よし、大きくて大した数が入ってないのよりも、小さくて沢山入ってる方を買おう。
何種類かのフルーツの味のアイスバー。これでいいや。
「……冬に食べるんならアイスクリームじゃない?」
「沢山入ってるのにするって決めたんだよ」
「なんで?」
「なんとなく!」
「えぇー」
なんだよ。家じゃ『なんとなく』で、大体の行動は納得してもらえるぜ?
「んじゃー、気分的に得した感が味わえるから」
「『んじゃー』ってなんだよ」
翔が文句つけるから付け足したんだよ。
「翔、スパゲッティは?」
「さっき、岳に会う前に取ってきた」
あ、ほんとだ。手に持ってた。
「じゃあレジ行くか」
「おー」
…………なんで『おー』?