63 朝は余裕を持って家を出ましょう
「ヤバっ! 遅刻一分前じゃん!」
「そだな」
「なんでテメーいっつもそんな能天気なんだよ!」
「涼やかな演出」
「それ言った時点で出来てねぇ!」
あー、ウゼェ、コイツ、ほんっとウゼェ!
岳だ。
断じて、断っじて! タラッドなんて人外じゃねぇ!
「岳、なんで一年が四階なんだろうな」
「知るかっ!」
「先行くぜ」
二階と三階の間の踊り場から三階までを繋ぐ階段の手すりを蹴って壁を越え、隣り合ってる三階と次の踊り場を繋ぐ階段まで跳ぶ。高さ、単純に考えて一階分はあるだろ!? なんでアイツ、あんなに身軽なんだよっ! あっという間に上に行って見えなくなる。くっそぉ……。
三階と四階の間の踊り場から四階へ上る間に、鐘が鳴った。ヤバい、本気でヤバい!
「おー、岳! 今日休むのかと思ったぜ! 疲れまくってんじゃん」
「おはよ、岳」
「良かったわね、間に合って!」
「お早う、岳くん!」
「遅かったやーん、しかもギリギリやし」
……友達と話すのなんて、何年ぶりだろう。
「おは、よ」
座りながら答える。声が震えてるのは疲れたせいだ。
「休み挟むと、変わって見える人居るわよね」
捺希が怪しんでる。そりゃぁ、そうだよな……タラッドが抜けた後じゃ、多少変わってるし。鏡の中に居る奴が言ってた。『顔が大した事なくなった』って。だからなんだって、殴ってやろうかと思った。
「こらそこっ! 席に着け!」
先生来てたのか!? 気付かなかった。怒鳴られた方もびくっとして席に着く。
水中名物、……名物ではねぇな。とりあえずうちの担任、影薄先生。本名何だったっけ……タラッドは覚えてたのに!
「もう皆気付いてるだろうが、転校生が入る」
……そうか、このクラスって、他のクラスより一人少なかった、か?。駄目だ、覚えてねぇ。
「せんせーい、気付かない方がどうかしてると思いまーす」
「黙っとけ!」
誰かが発言して、首をひっこめた。馬鹿。
「と、とにかくだ。転校生が入る。珍しいからって、質問攻めにしないように。前に出て、自己紹介してくれ」
「はい」
タラッドが立ち上がって、そいつの角とか髪の色とかついでに顔立ちとか、気付いた奴は目の色にも驚いてる。
……あ、そか。遅刻ギリギリで来たんだもんな。来てたことに気付かなかった奴はそれなりに居るんだ。
「タラッド‐タドです。タラッドが名前でタドは愛称。姓はありません。えっと、埼玉の蜂舞中学校から来ました」
堂々と大嘘吐きやがった。蜂中って、山口住んでた時の、近所の中学じゃん。埼玉関係ねぇし。
「質問は? 聞きたいことは今のうちに」
先生、今は質問攻めにしていいのか?
「タラッド、好きに指名しなさい」
と、言いながら、先生は机の上にあった座席表を手渡す。
「じゃあ、な……侑川さん」
「角って学校に着けて来てよかったんですか?」
「聞き方が真面目ちゃんだな、アンタ。コレは本物ですから、外せません。…………おいそこ、痛い奴とか言うな。小声のつもりかもしれねぇけど、聞こえてんぞ」
全然聞こえなかったけど、睨まれた後ろの方の席の奴が怯んでたから、言ってたんだろ。……こいつ、のっけから恐怖心抱かせてやんの。
「次は?」
少し顔を引きつらせた先生の声で、またバラバラと手が上がる。……かなり減ったな。
「なに人?」
「さぁ。自分でもよく分かんないです」
そりゃ、な。
そもそもこんなところで鬼だのなんだの言えねぇじゃん。
どう見ても人外だけど。角が。
「次」
「何の部活入ってましたか?」
普通の質問だ……。
「帰宅部」
それは部活じゃねぇ!
「趣味は?」
「え、と、ダーツかな」
「特技は?」
「スルー」
どんな特技だ! 悲しすぎる!
「好きな事は?」
「怒りっぽい奴をからかう事」
最低だなコイツ!
「嫌いな事は?」
「めんどくさい事」
ジャイズン二号か! あの兄にしてこの弟……っ。兄ちゃんはあんな奴じゃない! 三歳の時の記憶だけどさ、残ってるモンは残ってんだよ。
「好きなアニメのキャラクターは!」
マニアックな質問来たな!
「ドラ○もんのス○夫」
『まさかのっ!?』
「の、金」
…………それ、キャラじゃねぇ!




