27 即興劇
七時限授業ってあんまり六時限のと変わんないね。
忍です。
演劇部の部活体験に来ています。
北水演劇部は三年生三人に二年生一人。かなり少ない。しかも見学はあたし入れて二人。
ちなみに、あたしがここに居るのは演劇に興味があったからとかいう理由ではなくて、高校で友達になった子……彩夏ちゃんって言うんだけど、その子に連れられて。
入る気は今のところありません。中学でも帰宅部だったし。
初めに発声練習見せてもらって、これからエチュード……即興劇の練習を見せてもらうとこ。これからやるのは場所エチュードだって。場所の設定だけ作っておくんだって。
「うぅ……ん。何かやってほしいのある?」
三年生が彩夏ちゃんに振る。彩夏ちゃんはあたしの方を見て振る。だからあたしはその隣の……あぁ、居ないんだった。
「今のノリいいねー」
なんか褒められた。どーも。
「無いです」
「無いです」
「じゃあ無難に……無難に……」
無難って意外と思いつかないよね。
「鞄の中で行こう」
『何処が無難!?』
「はーいはーい、もうこれで行くよー。はい、集中!」
あたし等と一緒に座ってる先輩以外の三人が考え始める。どんな役にするかー、とかかな?
一人、ぽっちゃりした先輩……A先輩って事にしとこう。が、蹲って『の』の字書き始めた。
「誰か見つけてー。誰か見つけてー」
そしたら今度は、唯一の二年生の先輩……B先輩って事ね。も蹲って、
「肩がこったよー。肩がこったよー」
二人の目が合う。
「こんにちは」
「こんにちは」
で、また『誰か見つけてー』と『肩がこったよー』に戻る。どうなるのかは最後の人……C先輩? にかかってるよー、コレ。
黙って見てたら、C先輩が転がって来た。
『わぁっ!?』
「こんにちはー」
『こ、こんにちは……』
「筆箱が開いて転がって来ちゃった。鉛筆だよー」
……鉛筆……。
「あぁ! あなたもですか!?」
A先輩が反応。
「君も?」
「私、消しゴムです! 一ミリ角の」
小っちゃ!?
「どーりで見つからない筈だ。君は?」
むっくり起き上がりながら、C先輩がB先輩に聞く……って、鉛筆折れた!?
「折り畳み傘ですぅー……」
「穴だらけ……」
そんな折り畳み傘鞄には入れないよ……。この鞄の持ち主、きっとめんどくさがり屋なんだろうなー。
A先輩がB先輩のスカートをつまみながら言ったとたん、C先輩がA先輩にチクッ!
「痛っ! 何するんですか! 穴が! 穴がぁあああ!」
「来ないで下さぁーい! これ以上穴を増やさないでぇ!」
B先輩が言ってるのも無視して、C先輩はどんどん近づいて……穴を開けるのかと思いきや、
「ブチッ! えい!」
「いてっ!」
A先輩が、自分の身を粉もとい屑にしての反抗! 消しゴムの体をちぎって鉛筆に投げつける!
こんどはB先輩……、折り畳み傘がばさっと開いて反抗! 鞄の中じゃ無かったっけ!?
「終了!」
あ、終わり? 一緒に居た三年生の先輩、D先輩でいいや……が、言って終わり。
D先輩がC先輩に向かって、
「鉛筆、折れた!」
「いや、ずっと寝たままってやりにくかったから……」
「立ってさ、頭が上につっかえて痛っ! とかさ、消しゴムみたいに一センチしか残ってないようなちっこーいのとかさ」
残り一センチってかなり凄いよ。使えないよ。
「えぇー、どうしよ。一年生もやるか!」
へ?
「よし、やろやろ」
えぇ、あたしも!?
「場所はぁ……公園ね。はい、集中!」
A先輩に言われた。えぇと、えぇとー。公園? 公園と言ったら遊び、遊びと言ったらボール、ボール遊び? えっとー。
「うわぁー、久しぶりだな。どうしよ」
あ、普段はやってないの?
少ししたら、D先輩がなぜかよったよったしながら登場。お爺さんみたいな声で、
「は、腹が減った……死ぬ……」
バタッ。倒れた。
……あれ!? 公園でしょ!? のどかぁなイメージがある公園で、人が死にかけてるよ!?
「腹が減った……」
復活した。でもなんかゾンビみたい……。よし、行こう。
「大丈夫ですか!? お爺さん!」
「何処を見てお爺さんて言われたんだろ!?」
声です。
「あ、あぁ、だい……いや、腹が減った……君は?」
「その辺でボール遊びしてたんです」
「腹が減った……何か、食べ物を……っ!」
すごい求められた。
「じゃあ、これどうぞ」
はい。手渡し。もちろん小道具は無いからパントマイム。
「おぉ……! コレは?」
「ボールです」
「ボール!? え、ボール食べろって!?」
「人間、腹が減ってればなんでも食えます!」
「いやいやいや、コレは無理だよ!? だってボールだよ!? 食べるもんじゃないよ!?」
段ボール食べて生きてた時期がある人だって居るんだから。そういう問題じゃない?
「あ……どうぞ、これ、食べてください」
彩夏ちゃんの登場。何かを手渡し。
「これは……?」
「お弁当です。彼にと作って来たんですけど、アイツ……来なくて」
重っ!? たかがお弁当のくせして重っ!?
「えぇええ。た、食べちゃっていいのかな。いやでも、えぇ、食べていいのかな」
「食べちゃうのぉ!?」
引いてみた。
「いや食べるとは言ってないからね!」
「いいんです。食べてください。アイツのことは……もう……」
余計食べにくくしてるよ、彩夏ちゃん。
「食べちゃうのぉ!?」
「いやいや食べてないからね! いやでもホントどうしよう。腹が減ってるけど、あぁあああ」
D先輩、究極の選択?
あたしは彩夏ちゃんの肩を持って。で、二人してじりじりと……。
「なんで引くの!? なんでそっちの肩持つの!?」
「僕は弱い者の味方です!」
「私はぁ!? お腹空かせてるよ!? 死にそうだよ!? っつーか一回死んだよ!?」
ぁ。そうだったっけ。
「えぇ、えぇと……」
ちょっとずつ近づいて、背中をポン。
「ホテルの残飯って、結構美味しいらしいよ」
漫画で読んだ。本当かどうかは不明。
「残飯食えってか!? そんなカラスが食べるような……いやでも、腹が減った、いやぁでも、……コンビニの残飯喰らうか? カラスが食ってるみたいにその辺の残飯漁るか? レストランとか? いっそ一般家庭の残飯を……。『お恵みをー』とか言って。えぇええー……」
何故に残飯にこだわる、D先輩もといお腹を空かせて公園で倒れた人。
もっかい引く。彩夏ちゃんの陰に隠れる。
「いいんです! そのお弁当食べてください! そしてアイツに、タクヤに……」
彩夏ちゃんがD先輩の元に行っちゃったから、一人でもっかい引く。
「何させようとしてるの!? 毒盛れとか!?」
「タクヤの奴。タクヤの奴……。私ずっと待ってたんです。だから……」
「終了!」
えぇえええ。『だから……』の続き何!?
そこは気になるけど、結構楽しかったなコレ。




