20 知られざる真実
「ふわぁ~、今日から学校だぁ~」
「……ひーちゃん、その表情じゃ嬉しいのか残念なのか分かんないよ」
「ん~……どちらとも言えないな~」
光で~す。
今日から五年生~! 登校班には六年生が一人しか居ないから、一番後ろで、はーちゃんと一緒にお喋りしてます~。
「ひーちゃん、春休み終わったら残念なの?」
「ん~、勉強めんどくさいから残ね~ん」
「嬉しいのは?」
「暇しな~い!」
春休み中ず~っと寝てたような気がするよ~。……ひょっとして太った~?
「はーちゃんは~? 春休み終わって残念?」
「ぜーんぜん! 皆に会えるじゃん!」
「勉強は~?」
「…………」
返事がな~い。ただの歩く人形みたい。
「……宿題無かったらいいな!」
「小学生で宿題無しなんて聞いた事無いよ~」
いいな~、岳お兄ちゃん。今年から宿題無いんでしょ~?
そんなこんな話してるうちに、学校に着きました~。クラスが張り出されてるところまでテトテトテト。
えぇっと、高山~、高山光ちゃんはどこですか~?
一組の『た』は……。高木、立花、あ、無い。二クラスしかないから、私は二組だね~。あったあった~。
はーちゃんのは~……海中、海中。
「ひーちゃん! ウチ一組だよ! ひーちゃんは?」
「………………にくみぃ~」
うぅ~! はーちゃんと離れちゃったよぉ~! みーちゃんは!? 村田、村田……あ、下の方か~。なんで私、上の方見てたんだろ~。
村田美代、……一組にあった~。
一人ぼっちだぁ~!
…………えぇ~い、春休み中は一回も遊ばなかったけど、佐紀ちゃんは~? ……名字なんだっけ。ま、まち? まつ? まつ……き! 松木佐紀ちゃんだ!
佐紀ちゃんも一組~!? 私、何か悪い事した~!? 昨日私が起きた時、まだ寝てた岳お兄ちゃんに落書きしようかな~って考えはしたけどやってないよ~! お姉ちゃんのおやつこっそり頂戴しようしたけど、おやつがなかったからできてないよ~!? お母さんのお菓子を十何回かつまみ食いしたくらいしかやってないよ~!?
「…………おはよ」
「おはよ、みーちゃん!」
「おはよ~。そしてさよならみーちゃぁ~ん」
「……ひーちゃん、転校するの?」
違うよ~! なんでそうなるの~?
「ひーちゃんだけクラス違うんだよ! 酷くない!?」
「酷い。…………職員室、行こう。抗議、抗議」
はわわわわ~。引きずられる~。
正しくは、はーちゃんとみーちゃんと両手繋いで歩いてるだけ~。
職員室の前に立って、はーちゃんは大きく息を吸い込むと~……扉をバーンと開けて!
「先生! なんでひーちゃんだけクラス違うの!?」
先生たちびっくり。シーンってなって私たちに注目~。そこへみーちゃんが、
「酷い酷い酷い酷い酷い酷い」
呪文みたいにぼそぼそぼそぼそ……。怖いよ~? 不気味だよ~?
「これは平等に決めてるんだ。文句を言うな」
えぇっと、誰だっけ~? 先生の一人がこっちに来た~。
「平等って!? どんな風に決めてるの!」
はーちゃん、引きませ~ん!
……確かに、どんな風に決めてるんだろ~。
「ルーレット」
ん? あれ~? え~? るーれっとって聞こえたよ~? るーれっとって何だっけ~? 人生ゲームでぐるぐる回すアレだよね~?
「……るーれっと? え、ルーレット?」
「そんなので決まるの!? ウチ等のクラス!」
「内緒だぞ」
ウインクして去って行く先生~。
…………ウインク下手糞だったな~。




