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ただいま迷走中!?  作者: 呪理阿
四月 入学したらさあ迷走
18/102

18 畑にて

「……誰だー、今日寒いって言ったの!」

「朝は寒かっただろ、忍?」

「しーちゃん、今は? 今暑いもん」

 動いてるせいでもなくてか。

 岳だ。

 なっくん家の怖い母さん、秋ちゃんに連れられて、ボランティアで畑を耕してる。毎年五年生がトマトとかキュウリとかの野菜植えるんだ。その準備。今年は光もやるんだっけか。

 人手不足だから-って、海中兄妹はもちろん、俺と姉ちゃん、光に、他のボランティアの人んトコの子達、小学校も違って、全く関係ねぇのに姉ちゃんの友達も一人巻き込まれてる。まぁ、姉ちゃんの友達のしーちゃんことしのちゃんは、高校が農業する科になったらしいから、こういうの好きらしいけど。

 ちなみに、俺も修也、翔、奈那子さんの三人巻き込んだ。こいつ等は好きでもなく嫌いでもなく、ある意味遊びの一環として? やってるけどな。

「落ちてる土を盛り上げるの、肥料の上からでいいからね。耕すのは耕運機がやってくれるから」

『はーい』

 …………あ、ミミズ。スコップやくわに気ぃ付けろよー。千切れんぞ。

「しーちゃん、ミミズ居た」

 ん? 姉ちゃん達んトコにもか。

「土ん中に戻しとけば」

「いや、千切れてる」

 ……あっちはすでに千切れた後。おーいミミズー、ホント気ぃ付けろよ。

「……土ん中に戻しとけってば。肥料肥料」

 南無阿弥陀仏。

「あ、しーちゃん」

「今度は何!」

「ゴキ」

「潰しとけ!」

 ゴキブリには容赦ねぇのな!

「あーい。おーいゴキ、こっちこーい」

 姉ちゃんも従うのかよ!

「あ、アレの前に置いといたらいい肥料になるかな?」

 スコップに入れたゴキを耕運機の前に。

「おい岳、サボってんじゃねぇーぞっ」

「なっくんもな!」

 俺に土かけんじゃねぇよ! 肥料の上にかけろ!

 やられたらやり返せ。兄ちゃんと、ここに引っ越す前は近所に住んでた幼馴染、皐月さつき姉の言葉!

「あ、やったなコラ」

「夏!」

「はぁい」

 ……流石秋ちゃん。なっくんがあっさり戻ってった。

「夏の弱点はお母さんか」

 ふむふむって。しーちゃん、何頷いてんだよ。

「何に悪用するつもりだ!」

「悪用って決めつけんな笑い上戸!」

 イラついたからってスコップ振り上げんな!

「危ねぇなぁ、おい。当たったらどうするんだよ」

「当てないよ」

 と言うか、なっくんなら避けれるなり受けるなり出来るんじゃね。

「岳、テニスボール拾ったー」

 ん? 翔がすげぇ汚れた黄緑色のテニスボール持ってきた。

「何処で拾ったんだよ?」

「あっち」

「せめて指差すくらいしろよ! 分かるか!」

「畑の奥」

 ふーん……。あれ、なんで修也と奈那子さんも来てるんだ? 作業どこ行ったよ。

「埋めとけ」

「えぇええ!? 畑に!?」

「それ埋めたところの上に植えた植物にな、テニスボールの形した実が生るんだよ」

「へぇっ!」「すっごぉい!」

 おい翔、奈那子さん、反応が明らか間違ってんぞ!

「ンなわけねぇだろ!」

 修也が叩いた。……こいつが居て良かったー。いや、今なら本気で思えるわ。

「悪かったな、翔、奈那子さん、お前等がそこまで馬鹿だとは……」

『冗談だよ!』

 怒鳴られた。

「ほんとかぁ?」

「なんだよその疑わしげな目! 岳の冗談に乗っかったんじゃないか!」

「そうだよ! テニスボールの上に植えたからって、なんでテニスボールの実が生るのっ!」

 そうかよ。それならよかった。

「岳、何その残念そうな顔」

「思ったよりは賢いんだなって」

「岳くんの中であたし達はどれだけ馬鹿なの!?」

 冗談だ。

「でも、テニスボールの実があったらどんな味なんだろうなー」

 翔がなんか考え始めたから、さっさと終わらせるべく教えてやろう。

「すげぇ旨いぜ」

 もちろん俺も知らねぇけどさ。

「ほんと? どんな味だろ」

「トマトとキュウリとカボチャを合わせたような味だ」

 ……一瞬の沈黙。

『不味そー』

 俺も思ったよ。俺も言ったよ!

「好きなモン合わせたからって旨ぇモンにはなんないだろ」

 修也、その馬鹿にしたような目やめろ。適当に言ったらこうなったんだよ!

「俺、別にキュウリもカボチャも好きじゃねぇんだけど」

 トマトは好きだけどな。

 えぇ……っとな。

「きっとなぁ、触感はキュウリで、中の汁の味はトマトで、果肉部分の味はカボチャだ」

「結局美味しそうじゃないんだけどー」

 るっせーな、奈那子さん。

「カボチャは生で食わねぇもんな。天ぷらにすれば……」

「あ、それならおいしそう」

 食感はキュウリだけどな。加熱したらぐにってなるか? ひょっとして。

 ……何で俺は『テニスボールの実はどんな味がするか』について考察してるんだ。

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