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ただいま迷走中!?  作者: 呪理阿
四月 入学したらさあ迷走
15/102

15 てすとベンキョウ?

「なぁ、お前等どこまで真面目なんだ? 普通勉強するか?」

 いや、しないね!

 自分で言ってすぐに自分で答える。意見を強める効果があるとかなんとかどっかに書いてあったような気がするけどどこだっただろう。

「普通勉強するだろ」

「しないけど、やっとくべきかなーとは思うよ。で、友達がやるなら俺もーって参加するよ」

「す、するよ!」

 はい、修也はあくまで真面目。翔は真面目に片足突っ込みかけた不真面目。奈那子さんは勉強しねぇ派だけど、修也にわざわざ合わせて真面目ぶってるな。

 岳だ!

 明日は中学校で新入生テスト。国語と算数。

 修也の呼びかけで勉強してる。俺以外の三人が。

 ……なんで家なんだよ。

 聞いてみたら、広い、なんか落ち着く、分かんなかったら俺か修也に聞くけど、もし俺も分かんなかったときに姉ちゃんに聞けるから、って帰って来た。

 家より奈那子さん家の方がでけぇじゃん、つったら、落ち着かないって帰って来た。なんでだ。

「岳ー、謙譲語と尊敬語と丁寧語ってどう違うの?」

「え? んーっとな……丁寧語は単に言い方を丁寧にしたモンで、尊敬語は相手がしてる事を……なんつーの、尊敬する言い方? にしたモンで、謙譲語は自分とか、自分側の人がやってる事をへりくだって言う言い方、だ」

 説明しようとするとムズいなコレ。『よく分かんない』って言われたら返しようがねぇんだけど。

「へぇー」

 初めて知ったような素振りすんなよ! 先生ちゃんと教えてたぞ!?

「ね、ねえ、修也。『へりくだった』って何?」

 奈那子さんは説明中で分からんこと増やしてるし!

「…………卑屈っぽい態度になる事?」

「違くね? 卑屈ってったら、なんかいじけてる感じじゃん」

 べつにムッとした感じになんなくていいだろが。否定されたからって。

「へりくだるっつったら、謙遜とかの方に近いんじゃねぇの」

「け、けんそん……? あ、分かるよ! 分かってるからね! 『可愛いね』って言われて『そんな事無いよ』って返すのが謙遜だよね!?」

 ん。そう言うの聞くと毎回思うけどな、『そんな事無いよ』って言ったら、『可愛いね』って言ってくれた人の価値観否定することになってんじゃねぇのか。素直に『ありがとう』って言っとけよ。ま、あくまで俺の意見だけど。

「岳ー、『建物のホシュウ工事をする』の『ホシュウ』ってどんな漢字だったっけ……」

 翔は敬語から漢字に変えたのか?

「居残ってやる補習の補と、修也の修だろ」

「なんで俺の名前使うんだ!?」

「近くにあったから」

「あったって言うな!」

「居た!」

「…………」

 言い返せなくなったな。勝った!

「補が分かんない!」

三浦みうらって居たろ。アイツの浦のさんずいを、ネに一本付け足したのに変えるんだよ」

「ミウラ? えーっと、ミウラのウラのさんずいを……? うーん?」

 うん? なに困ってんだ? ちょっと見せろ。

「なんでこの『裏』なんだよ!」

「え、違うの?」

 なに真剣驚いてんだよ!

「こうだろ!」

 ワークの隅に書いてやる。

「あぁーっ! そっかぁ!」

 指鳴らすほどのこっちゃねぇだろうが!

「……岳は勉強しねぇのか?」

「いやだから、たいていの奴はやってねぇってば」

 多分。

「ここに四人居るだろ。四人中三人やってるぜ。ここでの『たいてい』は勉強する派だ」

 ……ぐ。えぇと、えぇとだな。

「兄ちゃんと姉ちゃんは勉強しなかった!」

 はず!

「だから三対三だ!」

「なんで純さんと忍さんが参戦するんだよ!」

「屁理屈こねてるからだ!」

「自信満々に言うなよ!」

「屁理屈こねてるからに決まってんだろ!」

「開き直れって言ってんじゃねぇんだよ!」

「じゃあどうしろと!」

「知るか!」

「無責任だな!」

「どっちがだよ!」

「どっちもだ!」

 叫んでたら疲れた。椅子に座りなおして休憩。

「この、マイペース……」

 マイペース? うん、いい言葉だ。

「絶対岳よりいい点取るからな」

「……点数、教えてもらえねぇらしいぜ?」

「え?」

「いやだから、点数は教えてもらえねぇんだってば。母さんが、姉ちゃん達の時はそうだったって言ってた。三年くらいじゃ変わってねぇだろ」

 だから俺よりいい点とっても分かんねぇんだよ。残念だったなー。

「満点のは『すごいね』って先生の方から母さんに言ってたみてぇだけどな」

「あぁ、純さん満点だったのか……」

 すげぇ納得の表情してるけどな。

「満点は姉ちゃんだよ。算数で。兄ちゃんじゃねぇ」

『えぇ!?』

 全員そろって驚くか!? お前等兄ちゃん姉ちゃんの何知ってんだ!?

「そもそも小学校卒業の時じゃ、姉ちゃんの方が頭良かったし」

『うぇええええ!?』

 すげぇ驚き方だな。写真撮っとこ。カメラカメラ……。

「なんで撮ってんだ!」

「お前等がすげぇ顔してたからだ」

 ついでに言うと、撮ってはねぇからな。撮ろうとしただけで。

「え、でも、純くんの方が頭良さそう……」

 奈那子さん、人の話はちゃんと聞け。小学校卒業の時っつったじゃん。今は違うんだよ!

「兄ちゃんはな……」

 小学校五、六年生の期間を全部死神になるための学校行くのに費やしたらしいから小学校の勉強はしてなかったから……姉ちゃんの方が頭良くなったって感じなんだけど、流石にこれは言いにくいよな。

 だからこの部分をカットして、

「姉ちゃんに越されてる事にイラッときたから、ちゃっちゃと勉強してちゃっちゃと追い抜いたんだよ」

「純さんすげぇ……」

 ……修也、兄ちゃんはひょっとしてお前の憧れか。

「だろ。まぁ要するにだ。俺は別に勉強しなくても、今お前等に教えてる事が勉強になってるから、お前等よりいい点取れんぞってこったな!」

 言っとくけど、ナルシストじゃねぇからな。

「……翔や奈那子ならともかく、俺よりいい点はそうそう取らせねぇよ」

 修也に対する挑発だからな。

『ともかくされた!?』

 だってお前等二人、はっきり言って馬鹿じゃん。

「修也、どっちがいい点取ったかなんて、どうやって分かるんだよ」

「国語も算数も満点取れば即分かるだろ」

「満点の数が多い方勝ち? いいよ。やってやんよ」

 二教科だけどな。

 ……あ、でも問題点が。

「担任になった先生が、満点でも言わねぇ人だったらどうすんだよ」

「こっちから聞きに行きゃいいだろ」

 結局点数で争えるじゃねぇか。

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