14 嵐の夕方
「きゃっほ~」
「きゃっほー」
「…………きゃほー」
一番小さいのを真中にして、三人の新五年生の女の子がリビングのデカい窓の前に並んでる。
一番小さいのは光。光より大きい右隣の子がはーちゃんこと春。光とはーちゃんの間くらいの身長の子は、二人の友達でみーちゃんこと村田美代。
三人合わせて妹トリオ!
光は家の末っ子だし、はーちゃんはなっくんの妹だろ。美代も兄ちゃんが居るから。姉ちゃん達の同級生で。……なんで俺と同い年の兄弟は一人も居ねぇんだよ、ホント。五歳離れとかあんまり居ねぇだろうが。
岳だ。
妹トリオは多分、外の嵐見てるんだな。っつーかなんで嵐なのに来てんだ。特に美代。
「きゃっほー!」
「きゃっほ~」
「……きゃほー」
「なんできゃっほーなんだよ。なんでわざわざ二回言ったんだよ」
嵐のせいか。嵐が楽しいのか。
「嵐ってテンション上がるじゃーん!」
はーちゃんの意見に納得。……俺も『きゃっほー』言いたくなってきた。
「嵐が来たらきゃっほ~なんだよ~! ね~」
光の意見は意味が分からん。誰に同意を求めてんだ。
この調子なら美代も言うか?
「ひーちゃんとはーちゃんが言ってたから……のった」
内気っぽい喋り方する癖にノリいいなお前!
「早い話がね~、嵐が来たからきゃっほ~なんだよ~!」
それはもう分かった! はーちゃんのが一番『早い話』だったからな?
「お兄ちゃんも見てみなよ~。凄いよ~! 白い風~!」
お前等退いたら俺も見えるんだけど。まぁいいや。行こう。ゲーム中断、スリープモード。会話しながらよく進められたな俺。
で、白い風?
……あぁ、たしかに。大量に振ってる雨が風に流されて、アスファルトに白い波が出来てる。空中のは白い風にも見えるか。
「どうやって帰んだよ」
五時半には家出なきゃ駄目なんだろ? 後数分しかねぇけど、おさまりそうにねぇぞ。
「隣だもん、ちゃちゃっと走る!」
「いや、はーちゃんの事言ってんじゃねぇけど」
「ひーちゃぁーん」
泣いたフリすんな!
「で、美代、どうやって帰んだ?」
「……歩いて、帰る」
「いや、そう言う事じゃ無くてだな……。濡れるだろ? 傘とか飛ばされそうだし」
「カッパも着てきた……だから大丈夫」
そっか。
『きゃっ!?』
ん? 雷も鳴ってる。結構デカい落したな、今。……光にはーちゃんがひしと抱き着いてるのはまぁ、はーちゃんが雷苦手なの知ってたからいいとしてだ。
「雷嫌ぁあああ! 怖ぁい!」
どこが大丈夫だ!? 滅茶苦茶パ二くってんじゃねぇか! 体当たりみたいに抱き着いて来るからこけるかと思った……。
「大丈夫だよ~。光ってから音するまで時間かかったも~ん。遠いとこなんだよ~」
一秒も無かったぜー。とは、不安をあおるだけだから言わないでおいてやろう。
「ひーちゃん、光ってすぐ鳴ったよ!? すぐそばまで来てるよっ!」
……言わなくても分かったか。
「美代、帰りたくないよぉ……。外行きたくない……」
じゃあなんで来たんだよ!
「美代ー、村田……えっと、兄上が迎えに来てくれるってさ」
姉ちゃん、なんで美代の兄ちゃん家の電話番号知ってんだよ。……あ、クラス同じだったから、連絡網か。
「兄上が?」
「うん。だから来たら一緒に帰りね」
「分かった」
おぉ、落ち着いた。すげぇな兄上。なんで兄上って呼んでんのかは知らねぇけど。
「来ながら携帯で話してたから、聞き取りにくいのなんの。兄上にさ、携帯使うときは環境考えろって言っといてね」
「うん」
頷くまでが早ぇなおい。即か。
「姉ちゃん、その人、来るんだから直で言えばいいじゃねぇか」
「言うよ? でも妹からの方がなんか説得力ありそう」
さよけ。
「だからさー、はーちゃん。なっくんに『物失くすのやめろ』って言っといてね」
「うん。お兄ちゃん、物失くすのやめてよ」
本人姉ちゃんの後ろに居るし!
「俺がわざと物失くしてるみてぇだな」
『違うの?』
「違うわっ!」
思わず疑いたくなるほど失くすからだ。
「よし、じゃあはーちゃん。なっくんに『いちいち笑うのやめろ』って言っといて」
「うん。お兄ちゃん、いちいち笑うのやめてよね」
「……なぁ。なんか、忍が俺と話すの避けてるみたいになってるからやめてくんねぇ?」
そう言ったら、『じゃあ笑うのやめろよ』って返って……
「じゃあ笑うのやめてよ」
来た。ほらな。
「笑う所には福来る、だろ。俺は福を呼んでるんだ」
いや、笑われた人の嫌な気分及び軽い恨みを呼んでると思う。
ピーンポーン
「岳、出てくれる?」
姉ちゃん行けよ! 姉ちゃんの方が近ぇじゃん! 文句言いつつ行くけどな! する事なかったし。美代はとっくにはがれてるし。
「はい、たッ……」
危なっ。インターフォンだから、電話のくせで『高山です』って言いそうになった!
『村田です』
「あーい」
向こうがスルーしてくれる人で良かった。名前何だっけ。岬くんだったかな。
「どーぞー。中入っちゃっていいですよ」
「……うわ、高山兄に似た顔で敬語使われるとすげぇ違和感が。ちょ、ちょっと待ってな」
顔そむけても分かってんぞ! 笑ってんだろお前! あ、お前って言っちまった。
「じゃあ敬語やめる」
「高山兄か」
「いや、弟だ」
「あ、そうか」
「そうだ」
なんだ、このやり取り。
「上がっていいぜ、岬くん」
「……名前を覚えてくれていたことにちょっと感動。高山兄の顔でくん付け……」
呼び捨てしたろかコラ。年上への呼び捨ては抵抗あるんだけど。
「怖っ。睨むな!」
「上がっていいですよ、村田さん?」
「氷の微笑み止めろ! 流石チビ高山兄だなおい!」
高山弟で良くね?
「あぁー、まさか卒業した後でこんな思いするとは……。足濡れてるから上がるのは遠慮するよ。美代ぉ!」
「わぁ、兄上。なんで来たの?」
しれっと言うなよ。お前雷怖がってたくせに。わざわざ雨の中来た村田の立場は?
『さん』『くん』は何処やった、だ? 年上への呼び捨ては抵抗あるとか言ってなかったか、だ? なんかコイツ気に食わねぇから、気持ち呼び捨てで。




