続・親友は時の人
くぅぁああ、と伯爵令嬢のあるまじき大口で、エステルは欠伸した。
彼女の垂らされたままの黒髪が、締め切られたカーテンの隙間から差し込んでくる日差しに照らされ、神秘的に煌めく。
エステルが無感情な眼差しでじっとこちらを見つめてきているのを感じたまま、サラは視線を逸らすことなく、その黒い双眸を見つめ返す。
――――ふわり、とその視線が和らいだのをサラは感じた。
「……話、聞いてあげる。だから、取り敢えず洗面台にいって瞼を冷やしてきなさい」
「本当!?」
がばっ、と勢い込んだサラに淡々とした視線を向けたまま、エステルは頷く。
「……うん。それより、昨日から何度か泣いたでしょう? ここ、赤くなってる」
ここ、の所で自身の目元を指すと、サラの頬が羞恥で赤くなる。そのまま慌てながら部屋を飛び出して行ったサラの背を見るともなしに追いかけながら、ソファの真横に置いてある鈴を振る。
――――親友が戻って来た頃には、普段着に着替えていなければならない。
「それにしても、サラめ。また面倒事に巻き込まれて……」
エステルの愚痴が、彼女の他には誰もいない室内に零れる。
やがて鈴に呼ばれたメイド達がやってくるまで、エステルはぼうっと天井を見つめていた。




