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黒猫令嬢の気まぐれ  作者: 鈍色満月
目標は現状維持
36/37

やっかいな副産物

久々に更新です。恋愛ものって難しいなと思いながら書いています。

 第二王子の衝撃の告白とサラとエステルの間に改めて交わされた約束。

 人生の春も盛りな乙女達は、今日も今日とて、難しい表情を(片方は無表情だが)浮かべながら向かい合っていた。


「取り敢えず、あの手この手で滞在を引き延ばそうとしてくる王宮側から離れる事には成功したわね」

「本当……。我が家がこんなにも懐かしいと思ったのは生まれて初めてかもしれないわ」


 戯れに屋外に咲き誇る花々にそっと手を差し伸べながらエステルが呟くと、ようやく実家に戻って来られたサラが遠い目になった。

 二時間おきの贈り物攻撃に、あちこちで囁かれる賞賛と嫉妬、好奇心に塗れた噂話の数々。

 間違っても、あの夜会の夜から数日に渡る王宮滞在は、さすがのサラをしても猫を被り続ける事はきつい日々であった。


「これが、あの方との間の噂話だったら、私もきっとこんな気持ちにはなっていなかったんだろうな……と思うとね」


 はああ、と大きな溜め息が桜色の唇から零れる。

 どこかやつれた様子と憂いを宿した春の空の瞳は、ますますサラの雰囲気を儚いものにしていた。


「本当に面倒な事をしてくれたわね、あの王子……」


 無表情ながらも、どこか苛ついた雰囲気のエステルが吐き捨てる。

 どこから漏れ出したのか、第二王子が改めてサラ・フィオーレに求婚したと言う、事実に基づく噂話はあっという間に王宮から貴族の者達の間に広がった。

 そしてそれから始まった追従と嫌がらせの数々。

 次期王妃になる可能性の高い娘に今の内に取り入って、上手い汁を啜ろうと考えている者や、若く純朴な娘を騙して権力を握ろうとする者。

 そう言った者達から送られるご媚を大量に塗りたくった贈り物の数々と、それらに混じってやってくる嫌がらせの品々。

 前者は表向きは丁重に、後者はさっさと元の送り主へと返品していたのだが、それにも限度がある。

 いくら次期国王の正式な婚約者でもなんでもないと言っても、周囲の者はそうは思えないのか、中には既にサラを王太子妃として扱う者すらいる。


 怪我の完治を理由に王宮から密かに退出はしたのだが、もうじきこの邸もサラ・フィオーレ伯爵令嬢へのご機嫌伺いの品々で取り囲まれる日がくるのだろう。

 それが直ぐさま予想出来て、エステルはますます苛立ちを深め、サラは憂鬱そうに溜め息を吐いた。


「それにしても、私が話を受けた時よりも面倒な事態になったものね」

「どーしてなのかしらね、ホント」


 あはは、と乾いた笑声をあげたサラをエステルは睨む。

 サラが居心地悪そうに視線をそらした。


「そんなのあの晩に、あんたが第二王子を庇ったからでしょうが。どこの暗殺者かは知らないけど、随分と事態を引っ掻き回してくれちゃって、まぁ……」

「返す言葉もございません」


 しゅん、とサラが項垂れる。

 あの時は自分達の次代の王になられる方を守らなくてはの一心で思わず王子を庇ってしまったサラ。

 その彼女の行動は美しいだけでなく勇敢な令嬢として世の人々に大きく受け入れられ、それまで貴族とはいえ伯爵令嬢ごときでは到底王家と釣り合わないと眉根を潜めていた人々から賞賛を浴びているのが現状であった。


「おかげであんたの株は色んな人の間で急上昇。更に困難な状況に陥っちゃったじゃない」

「あうぅ……」

「いっそのことあの襲撃で王子が意識不明の重体にでもなれば、自然にこの話も解消されていただろうに……」

「そこ! 物騒なことを言わない!!」


 チッ、と舌打ちしながらの恐ろしい願望に、サラがエステルに向かって人差し指を突き出す。


 ――――彼女達の願いに反して、二人を取り巻く現状は更にやっかいなものになっていたのであった。

その内エステルが王子を夜襲にいきそうで怖い。

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