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黒猫令嬢の気まぐれ  作者: 鈍色満月
目標は現状維持
32/37

改めて対面

随分間を空けてしまってすみませんでした。黒猫令嬢、更新です。

「――――では、改めまして。前回、前々回と邪魔が入ってしまいましたが、こうして貴女と話せて嬉しい限りですよ」

「そ、そうですか。勿体無い御言葉でございます、殿下」


 前々回は、突然の襲撃。前回は無作法による退散……と、つくづく会話を続ける事の出来なかった第二王子・ダニエルと伯爵令嬢であるサラは、数多くある王宮の中庭の四阿で向かい合って座っていた。


「貴女と二人きりで、と言う訳にはいかなかった自分を許して下さい、フィオーレ嬢。前々回の事がどうにも引き摺られている様でして」

「いいえ、あのような事があったのですもの。お気になさらず」


 こじんまりとした四阿を囲む様にして物々しい近衛兵がおり、向かい合う二人の後ろには若い侍女と侍従とが無言で控えていた。


 表面上はにこやかに話し合っている二人の姿は、彼らの見目麗しさから一幅の絵画を思わせる。

 王子の髪は中庭へと差し込む陽光を浴びて鮮やかな銀光を帯び、サラの月光を紡いだ様な金髪はますます艶やかに色めている。

 しかしながら、王子の方は兎も角、向かい合って座っているサラと後ろの侍女の雰囲気はにこやかとは言い難い。

 かといってその緊張を表に出す事はなく、見事な微笑みを浮かべている王子と対比して比べてようやく彼女達が纏っている空気が張りつめているのが判る程度ではあるが。


 ――……そんな同席者達の空気を理解しているのかいないのか。

 王族特有のアルカイック・スマイルを浮かべたままの第二王子は、ゆっくりと口を開いた。


「まずは貴女にお礼を、フィオーレ嬢。貴女の勇気ある行動で、私の命は救われたと言っても過言ではないでしょう」

「そのような事をおっしゃらないで下さいませ、殿下。王子殿下の臣の一人として、当然の事をしたまでですわ」


 凛、とした空気を漂わせて言い切ったサラの姿を、王子の背後に控える侍従が感嘆の眼差しで見つめている。

 令嬢の当然と言わんばかりの言葉に感銘を受けたのはその侍従だけでなく、周りで警戒の姿勢を取っている近衛兵の者達も同様らしい。先程までの何処か好奇の光を帯びた視線が一変して、この金の髪の令嬢を見る視線が一気に和らいだ物に変わった。


「……あの晩までの私でしたら、素直に喜べたのでしょうね。自分が治める事になるこの王国に、貴女の様な女性が住んでいるという事実に」

「…………殿下?」


 意味深な言葉に、ほんの一瞬だけサラの淑女としての顔が引き攣る。

 後ろに控える地味な顔立ちの侍女が僅かに身じろいだ。


「フィオーレ嬢、いえ、サラ」

「は? サ、サラ……ですか」


 いきなり親し気になった王子に、サラはその春の空の瞳を大きく見開いた。

 そんな姿に不満を覚える事なく、王子は寧ろ愉し気な表情を浮かべたまま言葉を紡ぐ。


「貴女を侮辱するつもりはありませんが、正直に言わせていただきます。実は私が最初にあの舞踏会の夜に貴女に求婚したのは、ひとえに母上や王太后様から持ち込まれる縁談を撥ね除ける事が目的でした」

「…………っ」


 事前に知らされていた事とはいえ、改めて本人の口から告げられた事実にサラが口を閉ざす。

 背後に控える侍女が、射抜く様な視線で王子を睨んだ。


「国内外に名高い『金の妖精姫』と謳われている貴女相手であれば口煩い母や祖母が口を挟む事もないだろうと思っての行動でしたが……今にして思えば自分の事情に何の関係もない貴女を巻き込んだ事になりますね。まずはその事に関して謝罪を申し上げなければなりません」

「殿下……」


 真摯な光を浮かべた灰色の双眸がそっと伏せられる。銀の睫毛が儚い輝きを帯び、王子の顔を憂愁で彩った。

 そうして素直に頭を下げた王子の姿にサラは何かを言おうとして、そのまま口を閉ざした――否、閉ざすしかなかった。


「それからそんなことをしでかした自分が言うには厚かましい願いかもしれません、いえ、そうに決まっているでしょう。――ですが」


 伏せられた瞳が正面を見据えて、強い輝きを帯びる。

 見る者を思わず圧倒させる程の煌めきに、魅せられた様にサラの動きが止まる。


「ですが、この前の夜会の貴女の行動に私は自分の考えがいかに軽卒であったと確信しました。そしてこうも確信しました、貴女を置いて、他に私の妻となって欲しい女性はいないと」

「お、お待ちください!」

「いえ、待ちません」


 笑顔を浮かべながらも王族として、支配する者特有の空気を纏った王子がにこりと笑って、サラの意見を拒絶する。

 息を飲んだサラの姿を好ましそうに見つめながらも、第二王子にして次期国王となるダニエル王子ははっきりと断言してのけた。


「――――我が王国の『金の妖精姫』、いえ、サラ。どうか私の妻になってはいただけませんか?」


 言われた内容は一緒であるのに、最初の求婚プロポーズの言葉とは違っていた。

 二度目の言葉には、拒絶を許さない断固とした強い意思が込められていた。

やっとここまで来た……!

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