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黒猫令嬢の気まぐれ  作者: 鈍色満月
目標は現状維持
23/37

恋敵は最良の味方

短編「策士な王妃様」は黒猫令嬢のスピンオフです。

単体でも楽しめますのが、よろしければ読んでみてください。


 ――――普通、如何なる恋物語にも主人公の恋路を邪魔してくれる相手がいるものだ。


 それは大体、主人公よりも身分が上で大勢の取り巻きを連れていている派手系美人で、俗に言う「悪女」だ。

 手段や方法を問わずに主人公を苛めにかかってくる相手に、読者は主人公負けるな! という気分になって、より一層紙上の登場人物に感情移入をする。


 ――さて、目の前のこの侯爵令嬢はなんと口火を開くのだろう?


 完全に他人事な気分で、表向きは無表情で、内心は胸を高鳴らせながら見守るエステルの前で、勝手に悪女候補にされたリベカ・レーニョ侯爵令嬢は、その桃色の唇を開く。


 サラに向かって伸ばされたレースの付いた扇は、今にも突き刺さらんばかり。

 我の強そうな灰色の双眸が真っ直ぐにサラを射抜く。


「わたくし、貴女にだけは負けませんわ!!」

「――――は?」


 要領を得ない宣戦布告に、サラだけでなく、令嬢の後ろで今にも厭味を紡ごうとしていた取り巻きの少女達も目を点にしている。 


「今まで歯牙にもかけていなかった伯爵令嬢が、殿下の求婚を受けられたと聞いた時は一晩中涙で枕元を濡らしたりもしましたが、わたくし負けません!」

「は、はぁ……」

「幸い、殿下が求婚なさったとしても、貴女の立場はわたくし同様、殿下の婚約者候補の一人!

 要はここから挽回すれば良いのですから!」

「そ、そうですね……」

「なので、わたくしは正々堂々とこの場で貴女に勝負を挑みますわ。殿下をお慕いする者の一人として、また侯爵家の娘として、皆様の前でみっともない真似をさらす訳にはいきませんもの!」


 令嬢の小気味の良い啖呵を離れた所で耳にしていた何人もの少女達がびくり、と震える。

 大方、陰口でも叩こうとしていた何処ぞの令嬢達だろう。


「そう言う訳ですから。――ではね、御機嫌よう!」

「あ、お待ち下さい、リベカ様ぁ!」


 言いたいことを言ってすっきりした表情になったリベカが、軽やかにドレスを揺らしながら、靴音も高らかにその場を去る。

 取り巻きの少女達が去っていく親分を、慌てた顔で追いかけていった。


「……なんだったのかしら、リベカ様」

「いや、実に男前な令嬢ね。私が男だったら惚れそうだわ」


 サラがぽかんとした表情で呟く一方で、エステルは感心した様に何度も頭を上下に振る。

 計算だったのか、天然なのかは分からないが、今の啖呵のおかげで、今更サラ個人に厭味を告げにやってくる人間の数はかなり減っただろう。

 侯爵家という爵位の令嬢の宣言を差し置いてまで、わざわざ厭味を告げに来る程胆力のある者がいるとは思えない。


 ――――そういう意味でも、実に良い仕事をしてくれたものだ。


「敵の味方は敵……と言うのが常道だけど、私達の場合、敵の味方は味方になるわね。これは使える」

「エステル、なんか物凄い悪巧みをしている顔になってるわ」

「それはいけない」


 にやつきそうになる口元を隠す。

 瞬く間に無表情になったエステルがサラの方へと振り向く。


「そう言えば、どうしてあんな面白い令嬢の事を教えてくれなかったの?」

「あの方、傍で見ている分には好感が持てるのだけれども、実際当事者になってみればなんとも言えなくて……」


 言いたい事だけ言われて去られても、正直困る。

 そんな雰囲気を漂わせたサラに、エステルは何度か目を瞬かせた。


「サラ」

「なに? エステル」

「暫く離れても大丈夫?」

「――――ええ」


 始まってそうそう、面白いものを目撃出来た。

 取り敢えず、紙面や又聞きでは分からぬ王子の国内の他の婚約者候補の実情を探りに行かなければ。


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