翼を希む
空を見上げると、トビが輪を描いて飛んでいた。ひょろひょろと気の抜けた声。空を舞う鳥は、あんなにも自由に見える。
僕にも翼があったなら。青い秋晴れの空を、高々と風に乗って。自由に、どこまでも自由に……。なんて、そんな幻想に浸る。
でも本当は僕たちはちっとも自由じゃないんだ。どこにでも行ける君には縄張りがあって、腹を満たすために狩りをしている。地べたを這いずり日々を生き延びる人間の僕との違いなんてない。ないはずだ。
それなのになんて君は強く綺麗なんだろう。ただ生きるために生きるだけで、君はこんなにも輝いている。
僕は弱く醜い。怠惰で自分勝手で、時に嘘をつき人を妬む。醜くて醜くて、とても直視出来やしない。
ああ、僕も翼が欲しい。鳥になって綺麗に生きたい。でも綺麗で残酷な野生じゃ僕はきっと生きられない。……でも、それでもいいや。弱い人間の僕の行く先はきっと空の上じゃないから。綺麗なまま生きて翼を持ったまま旅立てるなら、それで。
僕は、僕の行く先を想像する。深い、深い闇。静寂。どこまでも落ちていく。それが安楽なのか、永遠の苦しみなのか分からない。けれどそこへ行くのだけが僕の確かな未来で、それ以外は不確定な未来を僕はなんとか歩んで行かなければならない。
僕は自由が欲しいんじゃない。ただ綺麗に生きてみたいんだ。翼を持つ君みたいに。




