【※追記】「愛人を作りたい? もちろん構いません。ただし、私にも同じ権利をください」と言ったバカな令嬢は自滅しました
※ミレーユ視点を文末に追記しました。
私の幼馴染の公爵令嬢はなんでも私のものを欲しがる。
転生した世界で私は伯爵令嬢として何不自由なく暮らしていたのに、彼女に出会ってしまった。
「シンシアの持ってるバッグが欲しい!」
「これはメイドのリリィが手作りしてくれた大事なバッグなの、ミレーユはもっと素敵な高いバッグをたくさん持っているでしょう?」
「私はシンシアのバッグがいいの!!」
騒ぎが大きくなるとお父様やお母様が出て来て、「シンシア、ミレーユに譲ってあげなさい」と言われた。
私は伯爵令嬢で、公爵令嬢のミレーユには最終的になんでも譲らされる。
リリィの手作りのバッグは取られて、リリィが作ってくれた髪飾りも、ハンカチも取られてしまう。
リリィはセンスが良くて、素敵な物をたくさん作ってくれるのに、使っている所をミレーユに見られたら取られてしまうから外に付けて行く事が出来ない。
せっかく何不自由のない伯爵令嬢に生まれたのに、また自分の人生を生きられない。
私はお姉様が捨てたバッグを拾って持ち歩く。
「シンシアの持ってるバッグが欲しい!」
またミレーユが言うけど、
「ゴミよこれ?」
どうしても欲しいと言うので譲った。
どうしてそんなに私の持っている物を欲しがるの?
大きくなって学園に通い出したら、ミレーユの欲しがるのは、物だけじゃ済まなくなる。
大親友になったユリアは子爵令嬢だった。
「シンシアの親友が欲しい!」
ミレーユが言えばユリアはミレーユの親友になって、私と話してはいけないと言われる。
友達なら他にもいるけど、こんなに気が合ったのはユリアだけなのに……。
身分の低い男性に「愛しています」と手紙をもらった。
胸が高鳴るのを感じたけど、ミレーユにバレてはいけない。
何度も何度も手紙を貰うけど、そっと胸の奥にしまっておく。
相変わらず、ミレーユは私の持ち物を欲しがって、制服の上着を取られてしまう。
制服なんだから同じものでしょう?
ただ、彼からの手紙が一通、見当たらなくなっていた。
でも、大事にとっていた手紙の山も、いつの間にか手紙が来なくなって、意味がなくなる。
そして、なぜか私は王太子の婚約者になっていた。
「シンシアの婚約者が欲しい!」
ミレーユが言うから、王太子はミレーユの婚約者になった。
「いいの!? ゴミよ」
実はこれは、公爵令嬢のミレーユを王太子の婚約者にさせるための措置だったと知る。
政治的に利用されるほど、ミレーユの欲しがり病は有名だったのだ。
「お前のような女と結婚するなら、俺が愛人を作ることも許してもらわないとな!」
そう私に吐き捨てた王太子にもちゃんと、私が本命の婚約者じゃないと教えてあげたらよかったのに。
でも、王太子は本命の婚約者にも同じ事を言う人だった。
「愛人を作りたい? もちろん構いません。ただし、私にも同じ権利をください」
ミレーユはなんでも欲しがるから、自分も愛人を作ることで王太子の愛人を認めた。
二人は利害関係が一致して、とてもお似合いだった。
そして、二人の結婚式の前日にミレーユの妊娠がわかった。
父親は身分が低い平民の男だった。
かつて私に何度も手紙をくれた彼を、ミレーユは知っていたんだ——。
結婚式は取りやめになり、王太子とミレーユの婚約は破棄された。
ミレーユはお腹の子の父親と結婚させられて、平民になる。
王太子も婚約者と勝手な契約を結んでこの事態を引き起こした責任を取らされて、廃嫡されて、弟が王太子になった。
果たしてミレーユは本当に愛人なんて欲しかったのかしら?
王太子が『愛人を作る権利』を持つならと自分も欲しくなっただけ?
ミレーユの愛人が、かつて私に愛を囁く手紙をくれた人だったから考えてしまうわ。
ミレーユは私から全てを奪ったけど、本当に欲しいものを手に入れることは出来たのかしら?
私はあなたがいなくなって、自分の着たい服を着れて、持ちたいものを持てる様になったわ。
今度こそ、私は私の人生を生きるの!
「きっと彼女は手に入れたと思うわ」
私の大親友に戻ったユリアが言う。
「ミレーユはシンシアの関心を引きたかったのよ」
「そうかしら……それならミレーユは大成功だけど、私は本当にミレーユが嫌いよ、ずっとこれからもね」
「ふふ」
ユリアが笑う。
これは私の執着だって言うの?
「もう! ユリアのことだって、大好きだってずっと思い続けるんだから!!」
私とユリアの話しているテーブルに大きな影がかかる。
「シンシアには、俺のこともそう思って欲しいね」
ユリアの兄で英雄と呼ばれる騎士のジュリアだった。
ユリアとの仲をミレーユに引き裂かれている間に、私とユリアの連絡係をしてくれていた。
いつの間にか、とても大好きになっていた人。
「シンシア、俺に君と結婚する権利をくれないか?」
「もちろん構わないわ。ただし、私にも同じ権利をくださいね」
ジュリアが笑う。
要求するなら、自分が欲しいものじゃなくちゃね!
◆◇◆
「ミレーユ!」
元王太子が私を訪ねて来た。
廃嫡されたとはいえ、まだ王族で貴族の令嬢と結婚出来るくらいの価値が残っている、あなたが平民の私に会いに来るなんてね。
私のお腹をまんまるに膨らませているこの子を自分の子だと言えば、私もあなたも王と王妃になれたのに。
——でも、それは私のなりたいものじゃない。
「シンシアが結婚する」
「え……」
シンシアが……。
「あの女がお前の不幸の元凶だろう」
元王太子が嫌な笑みを浮かべる。
「……そう、シンシアが私の不幸の元凶」
私の持っている物を羨ましがらない。
私を空虚にする女。
自分の人生なんて歩ませてあげない!
「何をやってる……」
平民の夫が帰ってくる。
シンシアに情熱的な手紙を送っていた彼は、実は嫉妬深い。
自分が愛人になっても、妻に愛人が出来る事は許さない。
——。
——あの頃のあなたにシンシアが結婚すると言ったら、こんな表情になったのかしら?
私と元王太子を愛人関係だと誤解して、私に嫉妬と激しい怒りを向ける平民の夫。
——私は、シンシアになれたの……?
本当に欲しかった物が最期に分かるなんて……。
ミレーユと王太子だった男が死んだ。
愛人を欲していた二人が、お互いを愛人にするとは思わなかったわ。
本当に欲しい物を手に入れたのね、ミレーユ。
きっと、これは悲しい事じゃない。
やっと、あなたが私への執着を手放せたんだから。
私も、あなたを忘れて、自分の人生を生きるわね。
さようなら、ミレーユ——。
もう、私はあなたを思い出さない。




