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第4話② セドリック特別研究室②

「実際に話すのは初めまして、だよね?」


 まずは放課後、初回ミーティングの時間を取ったのだけれど、エラリーが言う通り、二カ月ほど同じ教室で過ごした割にはちゃんと会話をするのは初めてだ。私は挨拶程度で避けていたし、自然哲理学部は必然的に特待生と下級貴族の割合が高い訳で、わざわざ国の準トップの公爵家に話しかけてくる人はいなかったわけ。


「そうね」

「へ、へぇ…」


 マルタはずっと無言だ。そういう私も何を話したらいいのか分からないのだけれど。と言っても、ローランお兄様よりは平民には慣れていると思う。たまーに、セシルお兄様に連れられてシャルロイド港の街に繰り出していたから。セシルお兄様なら身分もお構いなしにペラペラ話せるのだろうけれど。


「あー、でも、ちゃんと敬語使わなきゃだよね…。フランソワ様、ご指示頂いてもよろしいでしょうか?」

「普通に話していいわ。同級生でしょ?」

「いいの? じゃあそれで!」 

 反応が早いわ。


「とりあえず自己紹介しよっか。私はエラリー・ド・シャトーブリアン。シャトーブリアン家の長女だよ! まぁ、フランソワはご存じの通り、成金男爵だけど!」

 からからと笑い飛ばすから、本人は気にしていないか、むしろ誇りに思っているらしい。


「うちもお世話になっているわ」

 アリア王家がアリア島の支配者とすれば、シャルロイド公爵家は「海の管理者」、つまり入出国管理と関税管理が主な職務となる。当然船出には大きなお金がかかる、つまり金融業者が(いい悪いの意見はともかくとして)必要な存在なのだけれど。


「…シャトーブリアン家とは思わなかったわ」

「あれ、意外?」

「意外と世間は狭いわね、という意味」


 海運業者でシャトーブリアンの名を知らない者はモグリ、と言ってもいい。色んな商売に手を出しているけれど、祖業は保険と金融だ。外洋航海技術が確立した百五十年前から色んな船に投資してきたベンチャーキャピタルよ。それから、外国通貨との両替商、貴族や大富豪の資産管理や預金管理と手を広げて、名実ともにアリアを代表する金融機関となっているわ。ローランお兄様は「必要悪」と断言していたわね。一方でセシルお兄様は「面白い商売だよな」と割と前向きな感じ。私は今まであんまり考えたことが無かったわ。政治経済は得意じゃないの。


「それじゃ、私も。フランソワ・ド・シャルロイドよ。公爵家の恥さらし、と言えばいいかしら」

 一応自虐の…ネタのつもりだったのだけれど。


「ちょっとそれ…ツッコミに困るけど」

「えっと…ごめんなさい?」

 私、もしかしてコミュニケーション下手?


「ともかく、最後はマルタだね」

「は、はひっ!」

 良かった。私より喋りが下手そうだ。


「た、ただのマルタでして…その…お貴族様とお話するなんてぇのは、あたしゃ生まれて初めてのことでして…」


 今にも声が消え入りそうだ。ちなみに一般的に姓(氏)があるのは貴族だけだ。ただのマルタ、というのは家名を持たない、文字通り「ただのマルタ」ということ。


「特待生だよね? すごいじゃん!」

「す、すごかねぇです…た、ただ実家が薬屋でして…調合やら計算やら、小手先のことだけは叩き込まれたもんでさぁ。ちょいと受けてみたら、運よく引っかかっちまっただけで…」

「一応補足しておくけど、マルタは数学の成績トップだよ」

「そうなの?」

「い、いえ、たまたまでごぜぇやす…」

「凄いじゃない、マルタ。どうぞ気にしないで、普通に話して大丈夫よ」

「へ、へぇ…」

「まぁま、フランソワ。いきなり公爵家とタメ語で話せ、ってのはなかなか難しいって!」

 あなたが言う?

「そ、そうね…まずはよろしくね、マルタ」

「は、はいっ! よろしゅうお願いしやす!」


 という事で、自己紹介おわり。沈黙。お茶、お替り貰えるかしら? メイドはいないけど。


「まずは方針じゃないの?」

 エラリーが参加してくれて良かった。私とマルタの二人だったら多分このあたりで解散してる。


「そうね…ひとまず、疑問を並べてみようかしら」

 ノートを用意して、箇条書きにしていく。


「根本は、シオンの無詠唱魔法がきっかけなのだけれど」


 ・無詠唱での魔法は可能か? 実例はないのか?

 ・魔力9999は正しい数値なのか?

 ・シオンの魔法は新系統魔法なのか?

 ・そもそも新系統魔法について

 ・身体動作のみでの魔法発動事案

 思いつくままに書いたから、順番は適当だ。


「まずは書庫院で文献を当たりたいのだけれど…。過去の魔力測定の記録とか、残っていないかしら?」

「あー、つまり、過去に7000とか8000とかの数値があるかどうか、ってこと?」

「そうよ」

「っても、書庫院の蔵書数って破格じゃない。一万とか二万でしょ?」

「大丈夫よ、私本を読むのは早いし、一カ月もあれば要点は」

「無理だって~。わたしはそんなに早くない!」

「あ、あのぅ、お二人さん…」

 マルタが手を挙げた。


「はい、マルタ君!」

 司会はエラリーに任せた方が良さそうだ。


「そもそも、魔力9999なんてぇのは、この世に存在できねぇもんと思ってやす。へぇ」

「存在できない?」


 なにそれ、興味ある。

セドリック特別研究室、始動しました!

魔力9999が存在できない理由とは? 数学者マルタの理論が光ります。


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※本作は「カクヨム」および「アルファポリス」にも掲載しております。

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