第4話 セドリック特別研究室①
あの後、二回ほどやり直したのだけれど、やっぱり黒色で、同じく9999の数値。
正確には測定器の上限が9999なので、実際はもっと、10000以上の魔力…ってことになるのだけれど。セシルお兄様の10倍以上って、なんの冗談なのかしら。というか、余裕で過去最高記録ではないかしら。一応調べてみたいけれど…例えば、アリア皇国一の魔力、と言われているビアンカ皇王の魔力値とか。公表されていないと思うけれど。そもそも1000以上ならもう大魔導士と言って差し支えがないの。ただ、これで一つの仮説ができた訳よ。
「大魔力を糧に、詠唱をカットしているのかしら?」
現時点ではこれが一番近い気がする。近い気がするけれど、確証はない。
という事で。
「シオン君の件なら、教員室でも話題になってましたよ」
セドリック先生に尋ねてみることにした。講義後の時間を捕まえたのだ。次の授業まで十五分しかないから、簡潔にしないと。
「実際、あり得るんですか? 9999って」
考え辛いけれど、と前置きが入って
「そもそも、9999を測定できるようにしている、ということは何らかの意味があるはずよ」
「たしかに」
1000で大魔法使いというなら、測定上限は999でいいはず。となると。
「9999はともかく、7000、8000の数値は予想の範囲内ということですか?」
「そうとも考えられるわ。まぁ、私はフランソワさんのエラーの方が気になるけれどね」
「そうなんですよ。どういう意味なんでしょう?」
「何か特別な力を持っている…現在の測定器では測れない何か、という考えがあるけれど」
「そうでしょうか?」
「そうね、例えば天秤で距離を測るような」
「天秤で距離…」
そりゃ、測れるはずがない。天秤はあくまで重さをはかるものだ。距離を測るのは定規やメジャーと相場が決まっている。
「私も研究対象なのかしら?」
「研究対象?」
「いえ、個人的にシオン…君の魔力に興味があって。昨日の会食堂の事件、聞かれてますか?」
「ああ、アシュレイさんがボヤ事件を起こしたとか」
「その時、シオン君が詠唱無しで火を止めたんです。しかも、水魔法ではなくて…なにか、空間をゆがめたような感じで」
「新系統魔法かしら?」
「かも、知れないです」
「面白そうね。ぜひ研究してみるといいわ。私で良ければ力になるけれど…そうね、独りでは難しいんじゃない?」
「そうですよね…でも、こんなテーマに興味を持ってくれる子がいるかしら?」
首を傾げたところで。
「はいはーい!」
手を挙げる子がいた。魔力測定で30だった子。エラリー(仮)だ。よく見たらブロンズの徽章を付けている。貴族だったらしい。ぽんぽんと跳ねるポニーテールは彼女の快活なイメージにぴったりで、貴族と言うより、街の看板娘、と言ったほうがイメージに合うけれど。
「わたし、興味ありまーす!」
「エラリーさん。そうね、手伝ってあげて」
エラリーで正しかった。(仮)終了。
「あとは…そうね。マルタさん。どうかしら?」
「い、良いんでやんすか…?」
もう一人は鉛色。こちらは特待生らしい。少しそばかすの目立つ、暗めのブラウンで目立たない感じの子だ。名前すら知らなかった。先ほどから興味ありげに耳を傾けていたのだけれど、流石セドリック先生だ。生徒の事をよく見てる。
「マルタさんの数学が活かせると思うわ。どうかしら、フランソワさん。この三人でチームを作ってみたら?」
「やってみます!」
という事で、私三人でセドリック先生直下の研究チームができたんだ。私はこのチームを特設研究室、と呼んでいたけれど…。
その内、苗床と呼ばれるようになって…いつしか、学院に色んなゼミができるようになるのだけど、それはもっとずっと先の話よ。
いよいよ公爵令嬢、本格始動です!
ぜひ次回もお願いします!
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