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第2話 公爵令嬢、侯爵令嬢の誘いを受ける。本当は断りたいわ。

 流石の私でも、夕食まで外で食べるのは限界があるの。

 あいにく育ち盛りだから…なので、やむなく学食に行くのよ。

 王立イスタルシア総合学院には独立した、専門の建物があるわ。


 正式名称、『武皇イスタルシア守護・一統平定至聖食膳大講堂』よ。


 長いわよね? 私もそう思う。

 学院の名前にもなっている、イスタルシアという人物は三百年くらい前の皇王よ。

 皇王、って珍しい称号でしょ。この国、アリア皇国でしか使われない称号よ。

 皇帝と国王を合体させた、独自の称号なのだけれど、このあたりはまた別の機会に説明するわ。


 そのイスタルシア皇王は、当時のアリア内戦を治めて再統一を果たした人で、現在の皇王に連なる直系のご先祖様よ。ちなみにシャルロイド公爵家はイスタルシア皇王の弟様が始祖になっているわ。

 王立イスタルシア総合学院はイスタルシアの死後、彼を記念して作られたの。

 だから、他にも『イスタルシア』の名を冠した建物やら記念碑が王立学院にはあるわ。


 とはいえ、誰も正式名称で呼ばないのよね…。

 私は『会食堂』と略しているけれど、他にも学食、食堂、レストラン、一部の保守的な学院生らが『食膳大講堂』と呼んでいるけれど、少数派ね。


 会食堂はそれはもう立派な造りなの。レンガ造りのモダンな建物よ。何回か改修しているみたい。流行りの言葉でいうと、『ネオクラシック』と言うらしいわ。

 内装も落ち着いた感じよ。派手さはないけれど、凛としている、と言えばいいのかしら。

 やろうと思えば千人規模の舞踏会も開催できる広さがあるわ。学院生だけで数百人はいるから、このくらいの広さが無いと物理的に入らない、という現実的な理由もあるけれど。


 その伝統ある会食堂の中央よりやや下座に、見苦しいものが一つあるわ。

 真っ白なパーテーションよ。上座と下座で、真っ二つに分かれているの。


 会食堂には座席の指定が()()()()()()()()()()けれど、現実はそうじゃないの。

 そ、ご推察の通り。貴族と平民特待生を分けているのよ。

 当然貴族が上座(奥の方)、特待生が下座(入口の方)ね。

 どこにでもいるでしょう? 声ばっかり大きい人。

「卑賎の者と食事ができるものか」

 って、本当に言った人がいるらしいわ。一人だけなら無視したのだろうけど、案外その声が大きかったみたいでね。いつしかパーテーションで身分ごとに分けるようになったのよ。

 そもそも、平民の進学解禁も国を二分しかねないほどの議論になったというわ。

 そこは先代皇王が鶴の一声で押し通したらしいけれど。

 一部の貴族から「暗愚王」と称される所以でもあるわ。


 さ、歴史講釈はこのくらいにして、私も食事にしましょうか。

 だいたい3つくらいメニューがあるの。肉料理、魚料理、アラカルト、みたいにね。

 ちなみにセルフサービスよ。大昔は給仕担当がいたらしいけれど、学院生が増えて現実的じゃなくなった…とは言わず、『自立心を養うため』という事になっているわ。


 私は大抵魚料理にしているの。港町の生まれだもの。好きなのよ、お魚。

 アリアはパンも食べるけれど、お米もよく食べるの。

 お魚にお米って最高の取り合わせだと思わない? 今日も定食にしたわ。箸を一膳。

 ナイフとフォークも仕込まれたけれど、私は両方使えるわ。すごい?


 さて、今日もいつもの端っこの席で…。

 そう、思っていたのだけれど。


 いつもの場所が、別の人に占拠されていたわ。


「あら、これはフランソワ様。御機嫌よう」


 アシュレイ・ランス・ド・プロヴァンス。

 私の同級生よ。プロヴァンス侯爵家の長女で、爵位でいえば私の次にあたるわ。

 当然だけれど、彼女は魔導真理学部。典型的な貴族のレールに乗っている子よ。


「あら、アシュレイさん。お邪魔したわ」


 私、誰も彼も拒絶しているつもりはないの。

 つもりはないけれど、アシュレイとはごめんだわ。どうせよからぬことでも考えているんでしょう?


「お邪魔なんてとんでもないわ。私、フランソワ様をいつも案じておったのですよ」


 ねぇ、と同座の女子生徒二人に同意を促したわ。

 どの世界にもいるのよね、悪役令嬢の周りには『取り巻き』という子がね。


「お陰様で、滞りなく過ごしておりますわ」

「それは何よりですわ、フランソワ様。ぜひ、本日は私めとお過ごしくださいませ」

「お心遣いだけ頂戴いたしますわ」


 早く切り抜けて、食事にしたいの。お腹は空いているのよ、私だって。

 周りを見渡してみたわ。けれど…微妙に空いていないわ。

 いっそアシュレイ以外の子に声を掛けてみるのは…それもしんどいわ。もう少し顔見知り、作っておけばよかったかしら?


「フランソワ様、本日は非常に混みあっておりますの。ささ、ぜひ拙卓にお越しくださいまし」


 学院生の数は変わらないのだけれど…とは口に出さず。

 困ったわね。何度も()()()を断るのは儀礼上、良しとされないの。


 公爵家の長女は礼儀も知らない無作法もの、なんて噂話が立つのも勘弁したいところだわ。

 アシュレイにしたら、どっちに転んでも美味しい訳ね。最悪だわ。


「それでは、お言葉に甘えて、ご相伴させて頂きますわ」


 これも修練の一つ…。

 そう思うことにしたわ。

お読みいただきありがとうございます! 第3話もお読み頂けると嬉しいです!


【追記】26年3月10日

こちらも文面修正させて頂きました! よろしくお願いします。

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