第16話 フランソワと現皇王、そして近衛騎士のアレフは幼馴染です。
「フランソワ、いるか?」
テントから顔を出した人がいたわ。他の皆はきょとん、としているわね。
そうよね、私の知り合いだし。
「アレフ! 久しぶりね!」
アレフ・ロックウェル・ド・ロックバード。
アリア皇国の軍務卿、ロックバード伯爵の一人息子よ。正確には養子なの。
今はアリアの皇王(アリアは国王、ではなく『皇王』と呼ぶの)である、ビアンカ皇王の近衛騎士団に所属していたと思うのだけれど…。
「警備の応援に呼ばれてね。あと、ビアンカから様子を見てこい、と」
「ビアンカは来られないの?」
「ちょっと立て込んでいてさ」
「それは残念、今度王都へ行くわ。それなら、一つ土産話にどう?」
リンダを振り返ると、無言で出来立てのレモンソーダを用意してくれたわ。
とても優秀なメイドなの、リンダって。
「どうぞ、つまらない物ですが喉をお潤しになさってください」
「かたじけない、少し喉が渇いていたんだ」
一口含んで、アレフが目を見開いたわ。
「これ、炭酸か!」
「あれ、飲んだことあった?」
「一度だけ、ビアンカの付き添いでさ。でも、高いんだろう?」
「いいえ、格安よ。これがセドリック特別研究会の第一の成果!」
「特別研究会?」
「私設の科学研究会よ。人工炭酸の生成に成功したの」
「そんなことが」
「どう、ビアンカなら興味、持ちそうじゃない?」
「できるな。できるが…」
どうしたものか、とアレフが悩み始めたわ。
そうね、ビアンカなら…『なんで私の分を持ち帰らなかったの!』くらい言うわよね。
「このレモンソーダ、瓶に詰められないかしら?」
「できるとは思うで。空き瓶はまだ余っとるし」
「レモンソーダを作ってから、瓶詰めすればいいわよね」
「あ、あの…」
リンダがおずおずと尋ねたわ。
「ビアンカとは、まさかビアンカ皇王様では…?」
「その通りよ」
んなっ、とかええ!? とか、驚嘆の声。
「ふ、フランソワって皇王様を呼び捨てにするの!?」
エラリーの感覚は非常に常識的だわ。
「あ、あはは…言ってなかったよね。私、ビアンカとは幼馴染で。アレフもね」
「正確には乳母姉弟だけれど」
「物心ついた頃からよく遊んだわ」
「いたずらと言うか」
「そうそう!」
「で、ではなく…レモンソーダを献上するのは恐れ多いと言いますか…。日持ちもありますし」
「へぇ、でしたら瓶の煮沸、ってぇのはどうでやす?」
「煮沸?」
「へぇ。詳しくは分からんのですが、瓶を熱湯で洗うと瘴気が薄れるとか、聞いたことがありやす」
「それなら試してみましょう! でも、早めに飲んでもらったほうがいいわね」
「へぇ。1週間くれえでやすかね」
早速、煮沸。そのままだと熱くて持てないから、ハンスが冷却。水滴を新品の布で丁寧にふき取って、できたてのレモンソーダを漏斗で注ぐ。
「これにコルク栓でいいかしら?」
「せやな。ついでやし、コルクも煮沸しときましょ」
手慣れた様子で密封、3本作ったわ。
「それじゃ、ビアンカによろしく! あと、温めたり瓶を振らないことをお勧めするわ」
「どうなるんだ振ると?」
「シャンパンと一緒。瓶が割れるか、開封の時にビアンカがレモンソーダまみれになるわ、多分」
「…俺はまだ死にたくないな」
「それが賢明よね! あと、アレフ。まだ時間はあるかしら?」
「あと少しなら」
「エラリー、アルフォンス!」
「合点!」
「な、なんだなんだ!?」
もちろんアレフにも参加してもらうわよ。データ収集にね!
結果を見たいところだけれど…。
「そろそろでやんすね」
そうね、いい頃合いね。
「それじゃ、アレフ、ごゆっくり!」
【追記】3月11日改定しました!
※本作は「カクヨム」および「アルファポリス」にも掲載しております。




